帝人、炭素繊維関連の大型買収で期待される効果と課題
GMとの自動車部材の共同開発に弾み。安定した品質と供給力の強化を
帝人は13日、北米最大の自動車向け複合材料成形メーカーのコンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックス(ミシガン州、CSP)を年内に完全子会社化すると発表した。買収額は8億2500万ドル(約840億円)で、帝人としては過去最大の案件となる。買収には手元資金と新規調達資金を充てる。
CSPは樹脂とガラス繊維を使った複合材料(GFRP)に強みを持ち、自動車の外観部品などを北米を中心とした自動車メーカーに販売している。15年12月期の売上高は6億3400万ドル(約640億円)。
自動車業界では、世界的な環境規制強化を受け、燃費を向上させるため車体の軽量化が進んでいる。帝人は炭素繊維を手がけており、買収を通じて軽くて丈夫な複合材料の販売拡大を狙う。
帝人の鈴木純社長は同日開いた記者会見で「(CSPが販路を持つ)量産車に帝人の炭素繊維が使われていくことが最大のシナジーと考えている」と買収の効果を強調した。
今後、燃費改善を進める自動車メーカーへの製品提案力を強化し、自動車向け複合材料事業の売上高を「20年ごろに9億ドル(約918億円)規模へ拡大させる」と語った。
化学大手各社は自動車部材事業で米欧自動車メーカーへ販売攻勢をかける。三菱ケミカルホールディングス(HD)は米国デトロイトに営業拠点を新設したほか、米系に強い同業と合弁会社を2016年内に立ち上げる。旭化成もドイツ拠点開設を契機に、電子部品や電池材料、合成樹脂などの総合提案を加速する。従来は日系の世界展開に追随してきたが、さらなる成長には非日系向けの事業拡大が不可避だ。
三菱ケミカルHDは新たに米ビッグスリーや電気自動車(EV)ベンチャーのテスラ・モーターズを主要攻略先に定めた。ビッグスリーのお膝元に営業拠点を構えて、グループ内の関連商材を売り込む。特に車の軽量化に資するガラス繊維強化プラスチック(GFRP)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、燃料タンク樹脂などを拡販する。
米コンチネンタル・ストラクチュアル・プラスチックス(ミシガン州)との合弁事業でも、同社の販売網を活用してCFRPなどの採用をビッグスリーへ働きかけるのが主な狙いだ。20年度に自動車部材の売り上げで現状比50%増の4500億円を目指す。
旭化成はドイツはじめ欧州車メーカー向けに、自動運転に不可欠なセンサーなど電子デバイスの営業を強化している。15年に買収した電池用絶縁材(セパレーター)世界大手の米ポリポアの顧客網を活用しつつ、樹脂や合成ゴム、繊維なども売り込む。25年度に自動車関連の売り上げを同3倍の3000億円に引き上げる計画。
三井化学はポリプロピレン樹脂(PPコンパウンド)事業でドイツと中国に研究拠点を相次ぎ開設した。先端部材の採用に積極的な欧州勢との関係を深めて、米国やアジア地域に比べて手薄だった巨大市場を攻める。
米国は景気が堅調であり、欧州は歴史的に日系車メーカーの市場シェアが低い。化学各社にとって、どちらも開拓余地が大きく残る有望領域だ。成長戦略の柱に位置付ける車載関連の成否は非日系向けが握っている。
炭素繊維(CF)で圧倒的な世界シエアを誇る日系炭素繊維メーカーは、事業ポートフォリオをCFだけでなくプリプレグなどの中間材、さらに成形品までに及ぼすことで強化、拡大に力を注いでいます。
中でも炭素繊維メーカーがターゲットにしている一つが自動車材料への本格採用です。一般車だけでなく、注目されている燃料電池車や電気自動車に普及にとっても、車体の軽量化は避けて通れません。その意味でも「軽量」で「高強度」なCFが注目されるのは当然です。
<続きはコメント欄で>
CSPは樹脂とガラス繊維を使った複合材料(GFRP)に強みを持ち、自動車の外観部品などを北米を中心とした自動車メーカーに販売している。15年12月期の売上高は6億3400万ドル(約640億円)。
自動車業界では、世界的な環境規制強化を受け、燃費を向上させるため車体の軽量化が進んでいる。帝人は炭素繊維を手がけており、買収を通じて軽くて丈夫な複合材料の販売拡大を狙う。
帝人の鈴木純社長は同日開いた記者会見で「(CSPが販路を持つ)量産車に帝人の炭素繊維が使われていくことが最大のシナジーと考えている」と買収の効果を強調した。
今後、燃費改善を進める自動車メーカーへの製品提案力を強化し、自動車向け複合材料事業の売上高を「20年ごろに9億ドル(約918億円)規模へ拡大させる」と語った。
日刊工業新聞2016年9月14日
化学各社も車部材で攻める
化学大手各社は自動車部材事業で米欧自動車メーカーへ販売攻勢をかける。三菱ケミカルホールディングス(HD)は米国デトロイトに営業拠点を新設したほか、米系に強い同業と合弁会社を2016年内に立ち上げる。旭化成もドイツ拠点開設を契機に、電子部品や電池材料、合成樹脂などの総合提案を加速する。従来は日系の世界展開に追随してきたが、さらなる成長には非日系向けの事業拡大が不可避だ。
三菱ケミカルHDは新たに米ビッグスリーや電気自動車(EV)ベンチャーのテスラ・モーターズを主要攻略先に定めた。ビッグスリーのお膝元に営業拠点を構えて、グループ内の関連商材を売り込む。特に車の軽量化に資するガラス繊維強化プラスチック(GFRP)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、燃料タンク樹脂などを拡販する。
米コンチネンタル・ストラクチュアル・プラスチックス(ミシガン州)との合弁事業でも、同社の販売網を活用してCFRPなどの採用をビッグスリーへ働きかけるのが主な狙いだ。20年度に自動車部材の売り上げで現状比50%増の4500億円を目指す。
旭化成はドイツはじめ欧州車メーカー向けに、自動運転に不可欠なセンサーなど電子デバイスの営業を強化している。15年に買収した電池用絶縁材(セパレーター)世界大手の米ポリポアの顧客網を活用しつつ、樹脂や合成ゴム、繊維なども売り込む。25年度に自動車関連の売り上げを同3倍の3000億円に引き上げる計画。
三井化学はポリプロピレン樹脂(PPコンパウンド)事業でドイツと中国に研究拠点を相次ぎ開設した。先端部材の採用に積極的な欧州勢との関係を深めて、米国やアジア地域に比べて手薄だった巨大市場を攻める。
米国は景気が堅調であり、欧州は歴史的に日系車メーカーの市場シェアが低い。化学各社にとって、どちらも開拓余地が大きく残る有望領域だ。成長戦略の柱に位置付ける車載関連の成否は非日系向けが握っている。
日刊工業新聞2016年6月1日
ファシリテーター・峯岸研一の見方
炭素繊維(CF)で圧倒的な世界シエアを誇る日系炭素繊維メーカーは、事業ポートフォリオをCFだけでなくプリプレグなどの中間材、さらに成形品までに及ぼすことで強化、拡大に力を注いでいます。
中でも炭素繊維メーカーがターゲットにしている一つが自動車材料への本格採用です。一般車だけでなく、注目されている燃料電池車や電気自動車に普及にとっても、車体の軽量化は避けて通れません。その意味でも「軽量」で「高強度」なCFが注目されるのは当然です。
<続きはコメント欄で>