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110の活火山を抱える日本列島。「資源」としての活用を考える!

地熱資源量世界3位、じわり発電事業始動。「桜島」を観光に生かす薩摩のたくましさ
  神奈川・箱根山で火山性地震が活発化している。日本は110の活火山を抱える火山列島。火山との“共存”が避けられない。一方で、いかに火山を資源として活用するかで、見方もかなり変わってくる。鹿児島・桜島の取り組みや、地熱発電の可能性など探った。

 【地熱発電、徐々に始動】
 秋田県湯沢市で5月下旬、Jパワー、三菱マテリアル、三菱ガス化学の3社が共同開発する地熱発電所の建設工事が始まる。出力は4万2000キロワット、稼働は2019年の予定だ。再生可能エネルギーで発電した電力の固定価格買い取り制度が12年に始まって以来、ようやく地熱発電所の新規開発が動きだす。

 地熱発電は地中のマグマで熱せられた高温の水蒸気のエネルギーでタービンを回して発電。Jパワーなど3社の地熱発電所は出力を単純比較すると太陽光パネル15万枚分の電力を作り出せる。天候に左右されずに同規模の太陽光発電所よりも大量の電力を供給できる。日本で最も古い地熱発電所は40年以上稼働しており、地熱は再生エネの中でも安定した電源だ。
 
 <資源量世界3位>
 火山大国の日本は世界3位の地熱資源量を持つ。日本地熱協会によれば日本で稼働する地熱発電所の総出力は51万キロワット。環境省が試算する導入ポテンシャル量からすると、まだ3%程度しか利用できていない。掘削に時間と費用がかかり、行政手続きも必要なため開発のハードルが高いためだ。同省は30年に最大221万キロワットの導入が可能としている。

 買い取り制度開始後、小規模な地熱発電所の運用が始まっている。温泉街で湯と一緒に吹き出ている水蒸気を活用した温泉発電だ。新たな掘削をせずに稼働でき、出力が数百キロワットでも発電した電力は固定価格で売電できる。神戸製鋼所が11年に発売した温泉発電向けの設備はこれまでに10台以上の納入実績がある。
 
 【桜島は貴重な観光資源】
 鹿児島県のシンボルとなっている桜島。噴煙を上げる姿は、市民には見慣れた光景。貴重な観光資源になっており、噴煙に思わず歓喜の声を上げる観光客は珍しくない。

 県内製造業で火山灰を原因とする製造・品質上の問題はほとんどない。ただ、シャッターの開閉に注意したり、エアコンの室外機に灰が入り込まないよう工夫したりと各社が対策を講じている。日常生活に厄介な火山灰は、回収システムが確立している。鹿児島市では世帯ごとに専用の「克灰袋」を配布。地域の拠点に持ち込むと回収される仕組み。霧島市や垂水市などでも回収している。
 
 火山灰を有効活用する取り組みもある。樹楽(鹿児島県姶良市)は、灰にシイラやアジなどの切り身をつけ込んだ「桜島灰干し」を2012年4月に発売した。鹿児島県での商品化は初めてという。桜島の火山灰を独自の洗浄や熱処理技術などで食品加工に使えるようにした。「桜島の灰の中で寝かせることで、魚の切り身から水分や臭みが抜けてうま味成分が増える。焼き魚にしても冷めてもおいしい」(梛木社長)という。

 降灰が多い垂水市は灰の缶詰「ハイ!どうぞ!!」を11年度に製品化、道の駅などで販売している。灰を集めて持ち帰る観光客がいたことから地域資源を生かした特産品にならないかと製品化した。「100円という安さから“ついで買い”されることが多い」(水産商工観光課)という。製造は地元の障害者施設に委託しており、売り上げは施設の貴重な収入源となっている。

日刊工業新聞2015年05月13日深層断面から抜粋・一部修正
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
今年の観光の優先順位の最上位は箱根と桜島にしよう。

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