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「鉄のまち」室蘭のモノづくり企業、異業種交流で商機つかむ

「鉄のまち」室蘭のモノづくり企業、異業種交流で商機つかむ

産廃から金属や樹脂などの資源を高精度に選別・回収できるアール・アンド・イーの「リタック・ジグ」

 北海道室蘭地域でモノづくり企業の連携が活発化してきた。地元企業などが協力して独自の製品開発に取り組んでいるほか、隣接する苫小牧地域と連携する活動もスタートした。北海道のモノづくりを全国に発信しようと地域で知恵を絞る。

自立を探る「鉄のまち」の中小


 「鉄のまち」とも称される室蘭をはじめ、登別市、伊達市などで構成される室蘭地域。歴史的に室蘭の企業は新日鉄住金や日本製鋼所の仕事への依存が高いといわれる。「地元企業の多くは自立する力が足りなかった」と語るのは、産業廃棄物処理などを手がけるアール・アンド・イー(北海道登別市)の北山茂一社長。地方創生には技術力を生かして独自のモノづくりを生み出すことが重要だと強調する。

 連携の核となるのが、2009年に室蘭工業大学の加賀壽地域共同研究開発センター長(当時)や北山社長らが発足させた異業種交流会「蘭参会」だ。現在では業種を問わず室蘭地域の企業などから約200人が登録。年4回の会合には毎回100人前後が出席し、異業種連携のきっかけ作りに貢献している。

石炭選別を応用


 この「出会い」の場を通じて生まれたのが「リタック・ジグ」だ。産業廃棄物などから金属や樹脂を高精度に選別・回収できる機械で、アール・アンド・イーが北海道大学や室蘭地域の製造業など14社と連携して開発し、今年から本格的に販売活動を始めた。

 リタック・ジグはかつて石炭の選別で使われた方法を応用し、素材ごとの比重の違いを活用する。従来品では難しかった0・1の比重差があれば、ほぼ全量の選別が可能だ。選別できる素材は鉱物や太陽光パネルのガラスなど多岐にわたり、資源の再利用拡大につながる。引き合いも増え、食品関係への用途拡大なども見据える。

 他に小水力発電装置の開発などにも取り組んでおり、北山社長は「室蘭地域のモノづくりを全国に広げていきたい」と話す。連携企業でもある難削材の機械加工を手がける馬場機械製作所(北海道室蘭市)の馬場義則会長は「地元企業との連携は社内の人材育成に有効だ」と評価する。

苫小牧にも波及


 苫小牧地域はトヨタ自動車北海道(同苫小牧市)が立地するなど自動車産業の集積が進む。モノづくり強化に向けて、室蘭地域と苫小牧地域の企業が連携に力を入れ始めた。

 7月に苫小牧市テクノセンター(同)が苫小牧・室蘭地域のモノづくり企業による合同研究会を室蘭市内で開いた。松本鉄工所(同)など苫小牧地域の企業などが、産業機械部品製造を手がける西野製作所と馬場機械製作所の室蘭市内2社を見学し、互いに理解を深めた。企画した同センターの桃野正館長は「車関係の仕事を手がけられるようにしたい」と意気込みを語るなど、連携により北海道のモノづくり技術を発信する土壌が醸成されつつある。
(文=札幌・山岸渉)
日刊工業新聞2016年8月30日 中小企業・地域経済面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
北海道とモノづくりというのは、あまりイメージがありません。ただ、鉄鋼や採炭などの産業は、地場の機械系製造業者が支えてきたはずで、地力もあるはず。その技術を生かして、地元で盛んな農業機器の分野へ展開すれば、北海道ブランドを武器に海外展開も期待できそう。

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