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処方箋ありきの調剤特化から薬局は変われるか

新制度「健康サポート薬局」が後押し。がん判定や禁酒・禁煙サポートまで
処方箋ありきの調剤特化から薬局は変われるか

医療政策が大病院から地域の診療所や在宅にシフトし薬局に求められることも多様化している

 HMCエデュケーション(東京都港区、塚田紀理社長)は、タブレット端末を用いて患者の健康状態の把握・改善を支援できる薬局向けシステム「バイタルデザインシステム」を開発した。厚生労働省が今春に始めたかかりつけ薬局制度「健康サポート薬局」に対応し、薬局・薬剤師に求められる内容をパッケージにした。

 当初は「がんリスク判定(検査前検査)」など三つのメニューを用意。薬局や薬剤師は来店した患者にコンサルティングを通じて、最適な生活習慣を助言できる。システム構築費用は13万8000円から(消費税抜き)で、冊子代などが別途かかる。31日に発売し、初年度に約700件の採用を目指す。

 患者の回答内容や血液検査、生体情報を基に、患者ごとに異なる冊子を30日ごとに発行する。患者は冊子を通じて自主的に学習でき、薬剤師は患者ごとに健康増進や維持管理の施策を支援できる。

 メニューは順次追加し、年内に禁酒支援と禁煙支援を、2017年3月に骨粗しょう症予防対策、軽度認知障害予防、ストレスマイニングを始める予定。

 健康サポート薬局は、医師からの処方箋に応じた調剤に加え、地域の健康をサポートする役割が求められる。

健康情報管理システム導入、運動ゲームも


日刊工業新聞2016年6月17日


 クオールは健康サポート薬局のモデル店舗「QOLサポートクオール薬局京王八王子店」(東京都八王子市)に対し、富士通が構築した健康情報管理基盤を導入し17日に運用を始める。

 富士通は強固なセキュリティーの下で、利用者の服薬履歴や健康情報などを収集できる同基盤をクラウド上で開発した。健康サポート薬局に対し、顧客への指導・アドバイス業務を支援する。

 同店では血圧や体組成などの計測、簡易血液検査、骨密度、口腔(こうくう)内細菌数などをチェックできる。これらの情報を健康情報管理基盤に一元管理することで、薬剤師は詳細な服薬指導や健康サポートへのアドバイスが可能になる。

 今後、同店では健康チェックやセミナーを行うほか、運動・機能訓練による介護予防を目的とした運動ゲームなどの健康フェアを開く。

薬局・病院・介護の連携ツール販売


日刊工業新聞2016年7月26日


 EMシステムズは調剤、医科、介護の情報連携システムの販売に乗り出す。2018年4月の介護報酬・診療報酬の同時改定や地域包括ケアシステムの推進などに対応する狙い。第1弾として8月中にアプリケーション・サービス・プロバイダー(ASP)型の介護保険請求ソフト「ユニケア・クラウド」を発売する。10月には「医療介護連携ソリューション」を投入予定。

 ユニケア・クラウドはケアマネジャー、介護サービス事業者など業務内容に合わせて利用可能。訪問や通所介護など居宅サービスの介護報酬請求業務、利用者負担分の請求書や領収書を発行できる。同ソフトをASP方式に対応させ、端末の台数制限なく、どこからでも接続可能にした。初期費用は2万円(消費税抜き)。月額利用料は1サービス当たり5000円(同)。

 一方、医療介護連携ソリューションは診療所、薬局、ケアマネジャー、訪問看護師、利用者が各スケジュール管理などを共有するシステムの連携機能を構築。例えば、ケアマネジャーが医師に介護者の治療状況などを相談できる。

 日本は25年に約4人に1人が75歳以上になり、在宅医療需要が高まると予想されている。同社は政府が進める地域包括ケアシステム実現には地域における医療・介護関係機関の情報通信技術(ICT)を活用した効率連携が不可欠と判断、同システムを開発した。

がん・糖尿病専門の薬剤師を育成


日刊工業新聞2016年6月30日


 総合メディカルは社内認定資格である「がん・糖尿病専門調剤」を本格育成する。2017年3月期は全国の七つのエリアから13店を選定、薬剤師約30人に対し育成研修を実施する。同社はこれまで福岡市内の同社調剤薬局で「がん・糖尿病専門薬剤師」を配置し、患者ごとの最適ケアに向けたノウハウを蓄積してきた。

 研修は蓄積した疾病知識や患者心理、ケア手順などを体系的に学ぶ場として、今後全社に取り組みを広げる意向という。

 福岡市中央区の「天神中央店」ではがん患者約430人、糖尿病患者約320人に対し8人の薬剤師が対応し、食生活や家族環境、服薬の状況などを聞きケアしてきた。

診療報酬改定や在宅訪問


日刊工業新聞2016年4月27日


 キリン堂ホールディングス子会社のキリン堂は2020年2月期までに、調剤薬局を年平均10カ所ペースで新規開局する。主にドラッグストア(DRG)と併設する調剤薬局を増やす。

 調剤薬局の20年2月期売上高は、16年2月期比48億円増の150億円を目指す。全売上高構成比率を現行比0・8ポイント増の10%に引き上げる。

 調剤薬局の17年2月期の新規開局は計7カ所。うち5カ所はDRGとの併設を計画する。新規開局と合わせて薬剤師を確保養成する。

 また、診療報酬改定への対応、店舗オペレーションの統一や効率化を進める。今後は厚生労働省が推し進める「健康サポート薬局」への対応や、薬剤師の在宅訪問などの分野へ積極的に関与する考えだ。

 これにより新規開局による増収に加えて調剤薬局1カ所当たりの売り上げを伸ばす。

日刊工業新聞2016年8月30日
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
2016年4月にスタートした新制度「健康サポート薬局」。地域の薬局に幅広い分野の専門的な知識や、健康相談・健康サポートなどの機能を求めている。国の医療政策が大病院から地域の診療所や在宅などにシフトする中、処方箋ありきの調剤特化型ビジネスから本当の意味で地域に役立つ薬局への脱皮が求められている。

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