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女子高生がNASAで働きたい!その夢をかなえたロボットの目

NASAジェット推進研究所研究員・岩下友美さん
女子高生がNASAで働きたい!その夢をかなえたロボットの目

火星探査機「キュリオシティ」と

 私が高校生だった頃、若田光一宇宙飛行士が宇宙に行くニュースは日本中を駆け巡った。この出来事に私は大いに魅了され、将来は宇宙飛行士、もしくは宇宙に関する仕事に携わりたいと夢見た。

 当時、大学受験を控えていた私は、若田さんの出身校の九州大学工学部航空宇宙工学科(現・機械航空工学科)への進学を希望した。

 しかしセンター試験で苦手だった文系科目に苦戦し、また電気関係のエンジニアだった父親の影響もあったことから、第2希望の電気情報工学科へと進学した。だが、実はこのことが将来、米航空宇宙局(NASA)で働くことへの第一歩であることを当時は夢にも思っていなかった。

 大学生の頃はロボットに興味を持ち始め、その後の大学院ではロボット開発の命とも言えるロボットビジョンに関する研究を始めた。この時に素晴らしい先生方と研究室の仲間に恵まれ、特に学生時代の指導教員であり私の永遠の師匠である先生からは、研究者として多くのことを学ばせて頂いた。

 ロボットビジョンとは、ざっくり言うとロボットに搭載されたカメラなどのセンサを用いて「ロボットの目を作る」ことである。これまでに私は、ロボットが人を理解するための機能の一部である生体認証、人の動作計測・認識、人物追跡などの研究を行ってきた。

 研究者の仕事は「研究」のほか、成果を学会で発表することも大切であり、これが次のチャンスにつながることがある。

 2008年に私が国際会議で発表した生体認証に関する成果が、NASAの研究者が必要としていた技術の一つであり、休憩時間に交わした議論がきっかけで共同研究が始まった。このことが、私の高校生の頃の夢を実現へと導いた。

 NASAジェット推進研究所には、私が大学で行っていた「ロボットが人を理解する」というプロジェクトはあまりない。だが、惑星探査機を代表としてロボットビジョンを必要とするプロジェクトは多く、今までの研究成果が大いに役立っている。

 もちろん解決困難な課題も多くあるが、プロジェクトメンバー全員で解決に取り組んでいる。今、この素晴らしい環境で宇宙開発に携われることを幸せに思う。今後もさまざまな形で宇宙開発に貢献していきたい。
〈プロフィル〉
岩下友美(いわした・ゆみ)九州大学大学院客員准教授。07年九大院システム情報科学府博士課程修了。同年九大院助教。11年NASAジェット推進研究所協力研究員。14年九大院准教授を経て現職。
「凛としていきる・理系女性の挑戦」より。企画協力・日本女性技術者フォーラム(JWEF)

日刊工業新聞2016年8月30日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
米国はスペースシャトル計画の終了でNASAの規模が大幅に縮小、事業性の高いプロジェクトは民間への開放が進む。今後、日本の企業や大学などがプロジェクトに関わる事例が増えるだろう。特にロボットのハードは日本の得意分野。女性のロボットエンジニアも以前に比べかなり増えている。

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