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調子のいい地方はどこだ?―景気回復進む日本列島、実情さまざま

調子のいい地方はどこだ?―景気回復進む日本列島、実情さまざま

景況は来期も上昇する見通し(仙台市内の繁華街)

【北海道/訪日観光客100万人突破】
 北海道は原材料などの輸入の割合が多く、円安の恩恵を受けにくい。だが、4月の全国財務局長会議で北海道の景気に対する総括判断を「持ち直している」とした。観光は堅調に推移、外国人観光客数は増加を続ける。2013年度に年間の外国人観光客数が100万人を突破したが、14年度はそれも上回る見通し。
 一方で、好調な自動車市場の影響が道内企業に及ぶ動きもある。駆動関連部品を手がけるダイナックス(千歳市)は国内外拠点の増設に乗り出す。企業誘致では地震などの災害リスクの低さや豊富な自然資源などから北海道が選ばれるケースも増えている。
 
【東北/本格回復まであと一歩】
 日本政策金融公庫仙台支店がまとめた2015年1―3月期の東北地区中小企業動向調査結果によると、小企業(原則従業員20人未満)の業況判断DIは14年10―12月期比3・5ポイント増のマイナス32・5と5期ぶりに上昇。中小企業(同20人以上)は同0・1ポイント増加し、マイナス2・4となり3期連続で上昇。いずれも来期も上昇する見通し。仙台支店は、景況の本格回復まであと一歩と見る。
 ある岩手県の中小経営者は「受注が増えており、外注先に頼んでも断られるほど、周りも好況のようだ。分野によって差がある」と語る。宮城県の中小企業経営者は「仕事量は震災前の水準には戻ったが、リーマン・ショック前には戻らない。見積件数は増えたが、国内の競合他社との価格競争が厳しい」と語る。
 
【関東/大型小売店販売活況】
 関東地方は、関東財務局が4月にまとめた管内の総括判断で「回復の動きが続いている」とされ、景気回復が続く。
 一方で、大手建機メーカーを取引先とする関口工業(さいたま市中央区)の関口拓造社長は「受注は14年度までは好調だったが、今後は世界経済の下振れなどの影響が心配だ」と先行きの不安を語る。国内回帰は感じるものの、原材料やエネルギー価格の動向、為替の変動については依然として注視する必要がある。
 また個人消費では、インバウンド消費の影響により大型小売店販売額が7カ月連続で前年を上回った。北陸新幹線の延伸、上野東京ライン開業などが消費に拍車をかけている。沿線各駅では周辺地域の再開発や観光誘致が加速している。
 
【東海・北陸/設備投資活発】
 東海・北陸地方は北米市場が堅調な自動車、設備投資需要で活況な工作機械など、おしなべて好調だ。切削工具の製造販売を手がける大見工業(愛知県安城市)の大見満宏社長は「設備投資に対する減税政策や補助金がきいている」と見る。
 東海財務局によると15年度の管内設備投資は全産業で前年度比17・7%増の見込み。「全国と比較しても非常に強い設備投資意欲」(長谷川浩一東海財務局長)が地域経済を支える。
 ただ、懸念は人材不足。2月の管内有効求人倍率は1・39と全国より高く、特に中小企業の人材確保は難しい。
 北陸地域は観光も有力な産業。3月の北陸新幹線開業効果は早くも出てきた。観光地の兼六園(金沢市)の3月の訪問者数は前年同月比60%増の約20万人、輪島朝市(石川県輪島市)は同70%増の約6万人を記録した。
 
【近畿/雇用情勢は改善】
 「仕事がないのに設備投資しても余計に苦しくなるだけ」。樹脂・金属部品加工メーカーの出雲(大阪府門真市)の大坪勤社長は、補助金給付が先行する国の設備投資支援政策に苦言を呈する。「2014年度の近畿全体の設備投資は前年度を上回る見込み」(近畿財務局)だが電気機械や建設では弱く、多くの中小は慎重な姿勢のままだ。
 有効求人倍率は12カ月連続で1倍を超え、雇用情勢は改善。一方で外食・小売り・建設などで人手不足が深刻だ。「十分な人材を確保できる大企業と、できない中小で明暗が分かれる」(日本政策金融公庫大阪支店)。
 中国や北米向け電子部品・デバイスの輸出が増え、生産はゆるやかに回復しつつある。訪日外国人の「爆買い」による個人消費は依然好調で、他産業への波及効果も大きい。
 
【中・四国/産業用機械高水準続く】
 中国・四国地方の景気は、4月の全国財務局長会議で両地方とも5期ぶりに「持ち直している」と上方修正されており、回復基調が続いている。
 中国地方では産業用機械で高水準の生産が続いているほか、自動車や造船の生産が増加。四国地方ではスマートフォンや照明向けなど電機の生産が好調なのに加え、産業用機械や紙パルプの生産も持ち直してきた。
 広島県内のある生産設備機械メーカーの経営者は「自動車業界の設備投資の恩恵を受けて、夏ごろまで高水準の受注残を抱えている」と話す。
 一方で課題は人手不足。2月の有効求人倍率は、1・44の岡山県、1・36の広島県、1・34の香川県で全国平均を上回って好調に推移している。底堅い状況が続きそうだ。
 
【九州・沖縄/電子部品生産増える】
 九州経済は持ち直しの動きが続いている。福岡、佐賀、長崎を管轄する福岡財務支局は4月の経済情勢を「持ち直している」として判断を据え置き。南部の九州財務局は、電子部品などの生産増加で判断を上方修正した。しかし小規模事業者の現状や見通しは厳しい。福岡商工会議所の経営動向調査によると15年1―3月の業況DIは改善したもののマイナス6・0とマイナスが続き、4―6月もマイナスの見通し。同会議所の末吉紀雄会頭は「小規模事業者は厳しい経営を強いられている。政府には手綱を緩めず経済対策に取り組んでほしい」と訴える。
 一方、沖縄県は回復基調にある。特に産業の柱である観光では、入域観光客数(単月)が2月時点で16カ月連続の過去最高人数を記録している。
 4月には県中部に県内最大級のショッピングセンター「イオンモール沖縄ライカム」が開業。さらなる観光客の誘致に期待が集まっている。
日刊工業新聞2015年05月12日深層断面より一部抜粋
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
 観光客増加が景気回復の鍵になっている地域が多くみられます。「爆買い」に象徴されるように外国人観光客の影響は大きいものがありますが、国内の個人消費も今夏にも緩やかに回復する可能性が出てきたとも報じられています。

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