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パナソニック、世界全254工場で「水リスク」評価

トヨタや日産も水使用量を調査。産業界で広がる危機意識
 パナソニックは水問題が工場操業に影響を与える「水リスク」について、2018年度までに世界全254工場の評価をする。米シンクタンク「世界資源研究所(WRI)」などの評価ツールを使い、水不足が起きる可能性や規制を点検する。リスクが高い工場は節水や排水再利用の対策をする。水問題を経営リスクと捉える製造業が増えている。日産自動車トヨタ自動車、ソニーなどは調達先の水使用量も調査している。

 パナソニックはWRIのほか、世界自然保護基金(WWF)の評価ツールや各国政府のデータベースも水リスク評価に活用する。各ツールで工場が立地する地域の10年後の水量を予測する。工場によっては現地調査もする。

 評価結果から事業への影響を精査する。対策が必要な工場は節水目標の設定や排水を繰り返し使える浄化設備を導入する。これまで拠点別の水使用量は把握してきたが、全体像を調査して優先順位を決めて踏み込んで対応する。

 取水制限や水道料金の上昇で操業に支障が出たり、コストが上昇したりする。水資源が豊富でも気候変動による渇水や人口増加による水需要の増加で、水不足が深刻化する地域もある。世界銀行は対策を講じないと50年の東アジアなどの国内総生産(GDP)が6%減少すると予測する。

 積水化学工業は15年度までに全拠点の水リスクを調査した。日産やトヨタは調達先の水使用量を調査している。ソニーも調達先に削減目標の設定も促すなど大手企業で、水リスクの調査が広がっている。
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
水リスクに関心が高まっている最大の理由が、機関投資家からの要請です。投資先企業が将来、水不足に直面し、操業に支障でると機関投資家は損をしてしまいます。飲み水や農業用水を奪うようなことをやる企業だと社会から非難を浴び、不買運動などで株価が下がります。そういったリスクを避けるために機関投資家が企業に圧力をかけ始めています。

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