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MRJ、ソフトウエア改修が必要になる可能性。米国への再出発は9月下旬以降?

空調異常の原因はセンサーの誤作動
MRJ、ソフトウエア改修が必要になる可能性。米国への再出発は9月下旬以降?

名古屋空港に引き返したMRJ

 三菱航空機(愛知県豊山町、森本浩通社長)は開発中の国産小型ジェット旅客機「MRJ」の試験1号機を、飛行試験を本格実施する米国に向けて27、28日に出発させたが、いずれも引き返した。空調システムの異常が原因。米国に早く持ち込むより、原因究明と対策を優先させる。慎重を期す姿勢が浮き彫りとなった。

 MRJは2018年半ばの量産初号機納入前に、国土交通省の型式証明の取得が必要になる。約2500時間の飛行試験が条件で、愛知県営名古屋空港(愛知県豊山町)を拠点に、これまで約140時間試験した。気象条件の良い米ワシントン州の空港に試験1―4号機を運び、約1年間かけて飛行試験を実施する。

 試験1号機の持ち込み時期は当初年内の予定だったが、8月中に前倒した。空調システムには、機内や電子機器の空調と、機内を地上と近い気圧に保つ与圧の役割がある。米国に向け出発した2日とも、空調データを収集する監視システムに異常が発生し、引き返した。27日の着陸後にセンサー部品を交換して28日に臨んでいた。これまで同様のトラブルはなかった。

 運航自体に影響はないが、米国に万全の状態で持ち込むため、再点検し、対策を施す。月内の再出発は難しいとみられる。持ち込みが遅れる分、米国での飛行試験の開始時期は後ろ倒しになる。それでも引き返したのは、「海外の航空関係者から慎重すぎると言われる」(広報担当者)ほど、念入りに開発を進める姿勢にある。

 飛行試験を早く実施したければ、そのまま持ち込んでいただろう。機体の安全性を優先させたと言え、三菱航空機に焦りの色はない証しだ。

 ただ、米国に試験1―4号機を持ち込んだ後、飛行試験でトラブルが頻発すれば、納期を守れなくなる恐れが出てくる。森本浩通社長は「機体のソフトウエアの改修が必要になる可能性がある」と懸念する。

 今回の事態が問題点を洗い出す結果になり、米国での飛行試験が順調に進むことが期待される。
(文=名古屋・戸村智幸)
日刊工業新聞2016年8月30日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
誤作動の理由はまだ不明のようだ。森本社長はかねてから機体の「ハードウエアよりも、ソフトウエアで不具合が見つかる可能性がある」と指摘していた。今後、原因の究明や部品交換、海外での飛行許可の取り直しなどの時間を考えると、再出発が9月下旬以降にずれ込む可能性が高いという。

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