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今日からアフリカ開発会議。経済環境が悪いなかで日本企業の糸口はどこに

商社などを除き投資は低水準にとどまる。主要業界、それぞれの期待値
今日からアフリカ開発会議。経済環境が悪いなかで日本企業の糸口はどこに

出典「アフリカビジネスパートナーズ・アフリカ開発銀行」

 アフリカの開発について話し合う日本政府主導の国際会議「アフリカ開発会議(TICAD)」が27、28日、ケニアの首都ナイロビで開かれる。今回が6回目で、アフリカ開催は初めて。アフリカの経済をいかに発展させるかが主要テーマで、各国政府は日本企業の貢献に期待を寄せる。現地の経済環境は決して良くないが、中長期目線で投資する姿勢が日本企業に求められている。主要業界の動向は-。

【商社】消費財・食料需要に照準


 大手商社ではアフリカに強みを持つ海外企業と協業し、市場開拓につなげる動きが出ている。中間層の増加を背景に成長が見込まれる消費財や食料の需要を取り込む。

 豊田通商は12年に買収したフランス商社のセーファーオー(CFAO)を通じて、事業領域を拡大している。15年にはCFAOが仏カルフールとともに、コートジボワールの首都アビジャンに大型商業施設を開業。20年までに店舗数をアフリカ8カ国・80店舗に増やす計画だ。また同国でオランダのハイネケンと共同で15年にビールの製造・販売にも乗り出している。

 三菱商事は15年、シンガポールの農産物商社のオラム・インターナショナルに20%出資した。同社はコーヒーやカカオ、ナッツの生産・集荷に加え、アフリカでは加工食品事業も手がける。三菱商事は当面、日本向けにオラム商品を販売し、将来はアフリカでの共同事業展開も期待される。

(豊田通商傘下の仏CFAOが仏カルフールと組み、コートジボワールの首都アビジャンに大型商業施設を開業)

【自動車】ナイジェリアへの投資活発化


 完成車メーカー各社はアフリカを将来成長が期待できる新興市場と位置付ける。南アフリカ共和国やエジプト、モロッコに生産拠点が集中しており、日系ではトヨタ自動車日産自動車などが工場進出している。現地向けに供給するほか、欧州などへの輸出基地となっている。

 こうした中、経済成長が著しいナイジェリアへの投資が活発化している。ホンダは15年に同国の2輪車工場で主力4輪車「アコード」の生産を始めた。ホンダがアフリカで4輪を生産するのは初めてで、需要拡大が見込めると判断し輸入販売から現地生産に切り替えた。日産は16年度までにアフリカ大陸における自動車販売台数を11年度比で倍増する計画を掲げており、14年春から同国でピックアップトラック「パトロール」を委託生産している。

【建機】インフラ整備見込む


 建設機械は海外需要が低迷するなか、人口増加に伴ってインフラ整備などが見込まれるアフリカ市場に期待を寄せる。コマツはアフリカでの建機・車両の16年3月期売上高が前期比26.2%減の824億円と苦戦しているものの、景気減速の影響を受ける中国売上高を上回った。

 同社は南アなどに現地法人を持ち、アフリカ地域の従業員が約1300人。保守サービスの強化を重視し、代理店などの人材育成を進めている。

(南アフリカ共和国で稼働するコマツの鉱山機械)

【電機】地熱発電市場に期待


 重電で今後の市場拡大が期待されるのが地熱発電だ。東芝は8月初旬、ジブチのジブチ地熱開発公社と、地熱発電事業における包括的な協業で合意した。東芝はケニアで地熱タービン4基の導入実績があるほか、エチオピア、タンザニアの電力関連公社とも同電事業の協業で包括提携している。

 もともと地熱発電用設備では東芝、富士電機三菱重工業日立製作所が共同出資する三菱日立パワーシステムズといった日本勢が高いシェアを持つ。アフリカでも東芝を筆頭に各社が事業展開を加速させる。

 家電ではパナソニックが中東アフリカ、中国、アジアを年平均5%以上の市場成長が見込める戦略地域と位置づけ、14年に地域主体の事業運営体制へと移行した。地域ニーズに合う商品開発など、現地発の事業を迅速に進める狙いだ。

 中でもアフリカは中期的に市場が拡大する地域とみており、インド市場で先行しているスマートフォン、テレビ、ビデオカメラ、白物家電などを順次、投入している。
日刊工業新聞2016年8月25日「深層断面」から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
 経団連をはじめ日本から約150社の企業が現地入りする見通し。日本政府の期待が先行し企業は模様眺めの印象。ビジネス環境の悪さから大手商社など一部の大企業を除き、日本全体ではまだ対アフリカ投資は低水準にとどまる。世界銀行の投資環境ランキングによると、189カ国中、最下位がアフリカ東部のエリトリア。下から2番目が北のリビア、次が南スーダンと、最下層にアフリカ諸国が続く。  一方で魅力はやはり爆発的に増える人口。アジア新興国がすでに日本と同様の少子高齢化を迎えつつあるのに対し、アフリカはまだ延々と増え続ける。国連の推計では、2015年にアフリカの人口は11億人に対し50年には24億人と倍増する。  厳しい投資環境の中でも、豊田通商が旧宗主国である仏商社と連携するな攻略の糸口を探り始めている。ただ欧州企業に美味しいところだけ持っていかれて果実をまったく得られないという情景も浮かんでしまう。

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