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売上高1兆5000億円超え。京セラは“京都企業”のリーディングで居続けられるか

山口社長インタビュー。村田や日本電産が追い上げも「部品を深堀りすれば2兆円の先へ」
売上高1兆5000億円超え。京セラは“京都企業”のリーディングで居続けられるか

「緩やかな統制も必要だ。これをどうやりきるかはマネジメントの力」と山口社長

 京セラは2015年3月期に売上高が初めて1兆5000億円を超え、再び成長軌道を描き始めた。ただ、電子部品最大手メーカーとしては、同じ“京都企業”で売上高1兆円を達成した村田製作所日本電産などから、激しい追い上げを受けているのも事実だ。業界トップ企業としてどのような成長戦略を推し進めるのか、山口悟郎社長に聞いた。

 ―村田製作所や日本電産も1兆円企業となります。
 「当社の電子部品事業は村田製作所と似たような製品を展開している。その電子部品だけで1兆円に達するのだからすごいと思うが、それだけ我々の電子部品も伸ばせると感じている。売上高1兆5000億円のうち部品事業は約6割。ここをもっと深掘りしていけば2兆円や、さらにその先へと売上高を伸ばすことも決して無理でない」

 ―モーターや積層セラミックコンデンサーなど一つの分野で圧倒的なシェアと事業規模を持つ両社と比べ、京セラは事業範囲が広い一方で個々の事業規模に劣るのでは。
 「当社は、それぞれの製品ごとに細かく分かれた組織が中小企業のように自主的に動いて伸びてきた会社。セラミックパッケージなどのようなトップの製品はあるが、一つひとつの事業のすべてが、必ずしもシェアを伸ばし切れているわけではない。ただ、伸びそうなところだけにリソースを集中してしまったら、事業の幅が狭くなるし、現場が自ら考える自主性も損なわれ、京セラらしさが失われてしまう。たとえ効率が悪く見えても、それぞれの部門が自分たちで頑張ってシェアを高めなければならない」

 ―その一方で組織横断の車載プロジェクトを立ち上げるなど、総合力を生かす取り組みも進めています。
 「それぞれの事業分野が自由に伸びていく中でも、もう少しこっちを向いた方が良いのではなどと方向付けをする、緩やかな統制も必要だ。これをどうやりきるかはマネジメントの力だろう」

 ―機器事業では携帯電話端末で海外進出などの攻勢をかけています。
 「スマートフォン最大手のようにハイエンド機を大量に販売するのではなく、特徴のある機種を法人客へ個々に供給していく。日米に加え中南米や欧州にも販売先を広げ、そう遠くない将来に販売台数は2倍、3倍にもできる」

 【記者の目/新規事業追求貪欲さが必要】
 部品に機器と事業の幅を大きく広げるが、競争力の原点がセラミックスにあるのは創業以来変わっていない。セラミックスは燃料電池のキーデバイスでも使われているように、新事業の可能性もさらに広がりつつある。もう一段の成長を遂げるためには、個々の事業の深掘りに加え、新規事業への貪欲な取り組みが今後も必要となりそうだ。
 (聞き手=尾本憲由)
日刊工業新聞2015年05月12日 電機・電子部品・情報・通信面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
業績好調な京都の企業。京都総合経済研究所のまとめによれば、京都・滋賀の上場企業の14年3月期の増益率は東証一部上場企業の平均を上回るという。上場企業の多くは部品メーカーなどで、一般向けや最終製品が少ない。「京様式経営」のビジネスモデルの特徴のひとつは、本社を東京に置かないことだという。東京シフトは大阪企業では珍しくないが、京都企業は確かに少ない。海外展開が盛んなため“東京イコール魅力的な巨大市場”という図式も成り立ちにくいのだ。ある京都企業の経営者が京都であることのメリットについて、「大学など人材が適度に集積したコンパクトシティーで、海外の顧客はみんな京都を知っていることが有利に働いている」と話す。さらに京都のお菓子。「海外の人は日本のおもてなしに期待しており、その究極が京都」。奥深い強さである。

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