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デジタルサイネージ市場を征するのはハードよりもコンテンツ力

5年以内に液晶とLEDで競合が起こる
デジタルサイネージ市場を征するのはハードよりもコンテンツ力

デジタルサイネージになる高輝度LEDディスプレー(シャープ提供)

 デジタルサイネージ(電子看板)に代表される業務用のパブリックディスプレー(PD)は、堅調な拡大を見込む成長市場だ。先進国に加え、中国の上海や北京など新興国の大都市が次なる市場と期待される。出荷台数で3割弱のシェアを抱える韓国サムスン電子と1割程度の同LG電子、NECの3社が市場で先行する状態が続く。

 デジタルサイネージの普及に伴い、PDは製品の売り切りではなく保守サポートやメンテナンスで稼ぐビジネスモデルに変化してきた。上位3社は設計からシステムの構築、導入、保守、次の提案までをワンストップでできる点を強みとする。

 中国パネルメーカーも参入をもくろむが、継続的なサービスを提供する体制が整っておらず、ティア1(1次取引先)と呼ばれる上位企業にシェアが集中する要因となっている。


 近年はテレビ同様、液晶パネルの価格下落に伴い大型化が進む。ただ人とディスプレーの接触時間が短いPDでは、高解像度化の動きは鈍いだろう。

 フルハイビジョン(FHD)の4倍の解像度を持つ4Kにすると、システム全体のコストはFHDの4―5倍になる。当面はFHDで留まりそうだ。

 2―3年前からはテレビをPDに応用する動きも出始めた。テレビメーカーの参入が容易で、先行するサムスン電子やLG電子に加え、ソニーやシャープ三菱電機が業務用で展開する。

 メーカーは既存の開発部隊や生産設備を活用でき、店舗側は大がかりな設備更新をせずにサイネージを導入できる。双方のメリットが合致し市場は拡大中だ。テレビとPDテレビ、PDの三つが互いに市場を食い合う可能性もある。

 液晶と並んで主流の発光ダイオード(LED)方式は液晶よりもコストは高いが、今後は差が縮まってくる。対して液晶パネルでは狭額縁化が進んでおり、5年以内に競合が起こると予測する。

 話題の有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)は焼き付きが懸念材料。ただコンテンツによっては高コントラストやフレキシブル性といった特徴で、市場を獲得できそうだ。

 プロジェクターからの置き換えも期待できる。画質やサイズ、コンテンツなど、既存デバイスではできないことで差別化することが重要になるだろう。
(文=氷室英利 IHSテクノロジーディレクター) 
日刊工業新聞2016年8月23日
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
この市場予測で注目するのは、ディスプレー単体よりも、コンテンツやサービス、広告収入のカテゴリーの方が伸びが大きい点だ。今後はコンテンツメーカーとの連携やサービス部隊の強化が必須条件となる。すでにその仕組みを作り上げている既存メーカーがさらに優位になりそうだ。ジャパンディスプレイもサイネージ市場を狙っているが、サプライチェーンにどこまで入り込めるか。

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