ニュースイッチ

東ソーが山口県に臭素の新プラント。アジア向け難燃剤用の需要取り込む

競合の米国やイスラエルと製造と異なり、原料による制約が無い
東ソーが山口県に臭素の新プラント。アジア向け難燃剤用の需要取り込む

東ソー発祥の主要生産拠点である南陽事業所(東ソーウェブページから)

 東ソーは2017年に、南陽事業所(山口県周南市)の臭素の製造設備を刷新する。投資額は42億円。新興国の経済発展によって、アジア地域の臭素需要は18年にかけて年率5%の成長を予想する。樹脂用難燃剤などの用途以外に、水処理や石油掘削、火力発電向けでも事業拡大を目指す。同社全体の臭素の年産能力は2万4000トンと、現状とほぼ同等になる見込みだ。

 東ソーは南陽事業所の老朽化した臭素の製造設備を停止して、新棟を建設する。新製法を導入して生産効率を従来比で数十%向上させる。現在の年産能力は定期修理年ベースで2万4000トンだが、老朽設備のため実際の生産量はそれより少なかった。

 同社は海水から臭素を抽出する製法を採用している。一方、イスラエルや米国の臭素メーカー世界大手は死海など塩分濃度の高いかん水から製造している。ただ、将来的に湖の水量減少や濃度低下などが心配されており、臭素原料の調達問題が深刻化する恐れがある。東ソーは海水から抽出する製法で、効率を高める技術を開発し、新プラントに応用する。

 臭素由来の難燃剤は電子機器向け樹脂部品、繊維、建設材料に用いられる。特に新興国では機器などの難燃化を義務付ける規制の導入がこれから活発になると想定され、需要拡大が見込める。

 同社は臭素を他社へ供給するほか、自社で難燃剤まで仕上げて販売している。16―18年度の中期経営計画でも重点領域の一つとして臭素・難燃剤事業を位置付けている。また、水処理の殺菌や石油掘削時の比重調整、石炭火力発電で排出される水銀の除去などの用途もさらに開拓し、事業を拡大する。
日刊工業新聞2016年8月15日
米山昌宏
米山昌宏 Yoneyama Masahiro
臭素は、難燃剤・石油・ガス採掘・水処理が主な用途であるが、その他の分野でも臭素化合物として様々な分野で使われている。臭素の全世界の需要の伸びは、年率3-3.5%が期待されている。臭素の70%以上は、中東(イスラエル、ヨルダン)及び米国で、イスラエルケミカル(ICL-IP)、ケムチュラ、アルベマール及びその関連会社により生産されている。東ソーの製造方法は、彼らの製造方法と異なり、海水からの抽出であり、原料による制約が無い。

編集部のおすすめ