帽子を被ると薄毛になるのは本当?科学的に実証してみて分かったコト
運動後、細菌数など増加。専門家は洗髪を推奨
真夏の運動や外出時の必需品の一つに帽子がある。夏に帽子をかぶる最大の目的は頭を直射日光から守り、熱中症や日焼けを防ぐことにある。一方、帽子の中が蒸れることで頭皮や髪に悪影響があるのでは、との懸念も根強い。こうした中、帽子が頭皮や髪に与える影響を科学的に検証する動きが出てきた。業務上、帽子やヘルメットを着用する製造現場などにも研究成果の波及が期待される。
2016年1月、帽子内の環境を研究する組織「帽子内環境研究会」が発足した。同組織は毛髪・脱毛症治療や医用工学、公衆衛生学などの研究者らで構成。
研究代表を務める東京メモリアルクリニック・平山(東京都渋谷区)の佐藤明男院長は「『帽子をかぶると、はげやすくなる』と都市伝説のように言われているが、本当にそうなのか。科学的に探索し、健康的な帽子の活用方法の提案につなげたい」と研究会設立の狙いを語る。
本格的な研究に先立ち、同研究会は帽子内の環境変化に関する簡易実験を4月に実施した。成人男性50人が被験者として参加。各被験者は新品のヘルメットを着用した状態で、休憩を挟みつつ自転車型トレーニング器具を3時間こぎ続ける運動実験を行った。
ヘルメット内の温度変化を分析したところ、運動前は平均で20度C台前半だったのに対し、運動開始30分後には約30度Cまで上昇。その後も運動終了まで30度C近辺の値を維持した。
同様にヘルメット内の湿度も運動前の70%から、運動開始30分後には80%近くまで上がり、そのまま運動終了まで80%近辺で推移。温度、湿度ともに運動開始後30分で上昇し、その後は高い値で安定する傾向が現れた。
同実験では、運動の前後の頭皮の汚れや細菌の状況も調べた。その結果、頭皮の汚れはすでに運動前の時点で、食品工場や調理室で行う手指の汚れ検査で不合格となる基準よりも汚れていることが判明。細菌の検査では肺炎の原因菌など全13種類の菌を検出できた。
汚れ、細菌の量ともに運動後は運動前に比べて増加。その改善策としては運動後の洗髪が効果的で、汚れや細菌を大幅に減らせることを確認した。
今回の実験は、あくまで運動によるヘルメット内の環境変化を簡易的に調べただけであり、帽子着用と脱毛との関係を現時点で突き止めたわけではない。
夏場の帽子着用は頭皮や毛髪にダメージを与える紫外線を防ぐ効果も大きく、「長時間の外出時などに帽子をかぶるべきか、かぶらない方がよいのかと聞かれれば、かぶった方がいい」と佐藤院長は説明する。
ただ、佐藤院長は簡易実験の結果から「頭の不快さを感じたら帽子を脱いで日陰や室内で休憩する、というように、帽子と上手に付き合う必要がある」とも指摘する。
また夏場に限らず一年中、帽子やヘルメットの着用を義務付けられた職場で働く人について「頭皮や髪への影響が気になるようであれば、休憩時間中に単に帽子を脱いで休むだけでなく、洗髪をお勧めしたい」とアドバイスする。
一方、「新品のヘルメットを使った簡易実験の結果だけでは分からないことも多い」(佐藤院長)。実生活では同じ帽子やヘルメットを洗ったり汚れを拭いたりしながら使い続けるのが一般的で、常に新品を使うことはほとんどありえない。
今後は、元々使っている帽子を洗って使う場合と、洗わないで使う場合、新品の帽子を使う場合で、帽子内の細菌の量に違いが現れるのかなど、より実態に近い状況で詳細な実験を行う計画。
帽子を着用した人が多く働く工場などに、実験協力を依頼することも視野に入れている。将来は研究対象を帽子やヘルメットだけでなく、女性が装飾目的で使うかつら(ウイッグ)や付け毛などにも広げていきたい考えだ。
(文=斉藤陽一)
都市伝説を暴く
2016年1月、帽子内の環境を研究する組織「帽子内環境研究会」が発足した。同組織は毛髪・脱毛症治療や医用工学、公衆衛生学などの研究者らで構成。
研究代表を務める東京メモリアルクリニック・平山(東京都渋谷区)の佐藤明男院長は「『帽子をかぶると、はげやすくなる』と都市伝説のように言われているが、本当にそうなのか。科学的に探索し、健康的な帽子の活用方法の提案につなげたい」と研究会設立の狙いを語る。
本格的な研究に先立ち、同研究会は帽子内の環境変化に関する簡易実験を4月に実施した。成人男性50人が被験者として参加。各被験者は新品のヘルメットを着用した状態で、休憩を挟みつつ自転車型トレーニング器具を3時間こぎ続ける運動実験を行った。
ヘルメット内の温度変化を分析したところ、運動前は平均で20度C台前半だったのに対し、運動開始30分後には約30度Cまで上昇。その後も運動終了まで30度C近辺の値を維持した。
同様にヘルメット内の湿度も運動前の70%から、運動開始30分後には80%近くまで上がり、そのまま運動終了まで80%近辺で推移。温度、湿度ともに運動開始後30分で上昇し、その後は高い値で安定する傾向が現れた。
同実験では、運動の前後の頭皮の汚れや細菌の状況も調べた。その結果、頭皮の汚れはすでに運動前の時点で、食品工場や調理室で行う手指の汚れ検査で不合格となる基準よりも汚れていることが判明。細菌の検査では肺炎の原因菌など全13種類の菌を検出できた。
汚れ、細菌の量ともに運動後は運動前に比べて増加。その改善策としては運動後の洗髪が効果的で、汚れや細菌を大幅に減らせることを確認した。
やっぱり夏場はかぶった方がいい!?
今回の実験は、あくまで運動によるヘルメット内の環境変化を簡易的に調べただけであり、帽子着用と脱毛との関係を現時点で突き止めたわけではない。
夏場の帽子着用は頭皮や毛髪にダメージを与える紫外線を防ぐ効果も大きく、「長時間の外出時などに帽子をかぶるべきか、かぶらない方がよいのかと聞かれれば、かぶった方がいい」と佐藤院長は説明する。
ただ、佐藤院長は簡易実験の結果から「頭の不快さを感じたら帽子を脱いで日陰や室内で休憩する、というように、帽子と上手に付き合う必要がある」とも指摘する。
また夏場に限らず一年中、帽子やヘルメットの着用を義務付けられた職場で働く人について「頭皮や髪への影響が気になるようであれば、休憩時間中に単に帽子を脱いで休むだけでなく、洗髪をお勧めしたい」とアドバイスする。
ウイッグや付け毛にも対象広げる
一方、「新品のヘルメットを使った簡易実験の結果だけでは分からないことも多い」(佐藤院長)。実生活では同じ帽子やヘルメットを洗ったり汚れを拭いたりしながら使い続けるのが一般的で、常に新品を使うことはほとんどありえない。
今後は、元々使っている帽子を洗って使う場合と、洗わないで使う場合、新品の帽子を使う場合で、帽子内の細菌の量に違いが現れるのかなど、より実態に近い状況で詳細な実験を行う計画。
帽子を着用した人が多く働く工場などに、実験協力を依頼することも視野に入れている。将来は研究対象を帽子やヘルメットだけでなく、女性が装飾目的で使うかつら(ウイッグ)や付け毛などにも広げていきたい考えだ。
(文=斉藤陽一)
日刊工業新聞2016年8月16日