自分は「ネーティブレベル」、6割が英語学習を始めた時期が5歳未満
そして孫さんがプレゼンでよく使う表現は50。全て中学校レベルの平易なもの
ロバート・ウォルターズ・ジャパン(東京都渋谷区、デイビッド・スワン社長)は外資系企業などで英語を使って働いている人が語学力を身につけた方法に関する調査結果を発表した。最多は「1年以上の留学」で20%だったが、「職場で身につけた」も18%だった。日本国内に住んでいても、英語力が求められる環境に身を置くことで、スキルを向上できると同社は分析している。
英語の勉強を始めた時期については、44%が中学校(13―15歳)と回答した。ただ自らの英語力を「ネーティブレベル」だとしている人に限定すると、60%が5歳未満で英語学習を始めたとしている。
同社はバイリンガルを対象とした人材紹介を手がける。同社の登録者を対象に7月26日―8月10日にアンケートを実施し、192人から回答を得た。
《トライオン社長・三木雄信氏に聞く》
―ソフトバンクグループ創業者の孫正義氏の英語スピーチについて分析しています。
「2007年から14年までの間に、孫正義氏が実際に英語でスピーチした中から7回・合計3時間分を抽出して分析した。その結果、プレゼンテーションで使う英単語はわずか1480語に過ぎず、必ず使う決まり文句やよく使う表現は50しかなかった。しかも単語・熟語・文法は、全て中学校レベルに収まる平易なものを使用していた。さらに発音は完全にジャパニーズ・イングリッシュだ」
「ところが、ソフトバンクの歴史は孫正義氏自身が世界の企業のトップを英語で口説くことで作られてきた。例えばマイクロソフト創業者のビル・ゲイツに直接会って販売契約を結び、ナスダック会長のフランク・ザーブと交渉してナスダック・ジャパンを創設し、アップル創業者のスティーブ・ジョブズを口説いてiPhone(アイフォーン)の独占販売を実現した。なぜ中学英語で世界のトップ経営者を説得できるのか、解き明かしたかった」
―まず「発音を捨てろ」と説いています。
「日本人は発音を気にしすぎだ。発音の正確さより、アクセントとリズムの方が重要。例えばlocal(ローカル)。日本語では『ロ・ー・カ・ル』と4拍だが、英語だと『lo・cal』と2拍で発音し、『ロコ』と聞こえる」
―執筆時に苦労した点は。
「英語を勉強する本ではなく、英語の使い方を理解してもらう本だということが明確に分かるよう書いた点だ。プレゼンテーションが最もうまいと言われたスティーブ・ジョブズのスピーチを分析したところ、彼でさえ文法上の誤りがあった。文法も完璧にこなす必要はない。まずは下手でも声を出すことが大切だ」
―タイトルに“あの人”とした意図は。
「孫正義氏は偉大すぎて、自分とは違う、まねできないというイメージが浸透していると感じていたからだ。あえて“あの人”と表記することで親しみやすさを強調した」
―三木さん自身は英語は得意でしたか。
「ソフトバンクに入る前は、TOEICの点数は500点台で、ほとんどしゃべれなかった。社長秘書として入社後に孫社長の米国出張に同行した際、ヤフー最高経営責任者(CEO)のティム・クーグルに『He is a scary man』(彼は恐るべき男だな)と言われるほど沈黙していた。今でも夜中に起きて思い出すほど悔しい出来事だったが、これがきっかけで1年間、毎朝7時半から1時間、英会話教室へ通い、猛勉強した」
「小さい時はもちろん大学の時でさえ、将来外国人の部下を持ったり、ビジネスの場で英語を話すなど考えもつかなかった。英語を話せるようになったことで自分自身の人生の可能性が大きく広がったと感じている」
(文=茂木朝日)
<略歴>
三木雄信氏(みき・たけのぶ)トライオン社長。95年(平7)東京大学経済学部卒業後、三菱地所に入社。98年ソフトバンク入社、社長室長を務める。マイクロソフトとの共同出資会社設立、ナスダックジャパン開設、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)買収、およびソフトバンクの通信事業参入のベースとなったブロードバンド事業のプロジェクトマネージャーを務めた。06年ジャパン・フラッグシップ・プロジェクト設立、トライオン創業。福岡県出身、43歳。>
※『なぜあの人は中学英語で世界のトップを説得できるのか』(祥伝社)
英語の勉強を始めた時期については、44%が中学校(13―15歳)と回答した。ただ自らの英語力を「ネーティブレベル」だとしている人に限定すると、60%が5歳未満で英語学習を始めたとしている。
同社はバイリンガルを対象とした人材紹介を手がける。同社の登録者を対象に7月26日―8月10日にアンケートを実施し、192人から回答を得た。
なぜ孫正義は中学英語で世界のトップを説得できるのか。
日刊工業新聞2016年7月4日
《トライオン社長・三木雄信氏に聞く》
―ソフトバンクグループ創業者の孫正義氏の英語スピーチについて分析しています。
「2007年から14年までの間に、孫正義氏が実際に英語でスピーチした中から7回・合計3時間分を抽出して分析した。その結果、プレゼンテーションで使う英単語はわずか1480語に過ぎず、必ず使う決まり文句やよく使う表現は50しかなかった。しかも単語・熟語・文法は、全て中学校レベルに収まる平易なものを使用していた。さらに発音は完全にジャパニーズ・イングリッシュだ」
「ところが、ソフトバンクの歴史は孫正義氏自身が世界の企業のトップを英語で口説くことで作られてきた。例えばマイクロソフト創業者のビル・ゲイツに直接会って販売契約を結び、ナスダック会長のフランク・ザーブと交渉してナスダック・ジャパンを創設し、アップル創業者のスティーブ・ジョブズを口説いてiPhone(アイフォーン)の独占販売を実現した。なぜ中学英語で世界のトップ経営者を説得できるのか、解き明かしたかった」
―まず「発音を捨てろ」と説いています。
「日本人は発音を気にしすぎだ。発音の正確さより、アクセントとリズムの方が重要。例えばlocal(ローカル)。日本語では『ロ・ー・カ・ル』と4拍だが、英語だと『lo・cal』と2拍で発音し、『ロコ』と聞こえる」
―執筆時に苦労した点は。
「英語を勉強する本ではなく、英語の使い方を理解してもらう本だということが明確に分かるよう書いた点だ。プレゼンテーションが最もうまいと言われたスティーブ・ジョブズのスピーチを分析したところ、彼でさえ文法上の誤りがあった。文法も完璧にこなす必要はない。まずは下手でも声を出すことが大切だ」
―タイトルに“あの人”とした意図は。
「孫正義氏は偉大すぎて、自分とは違う、まねできないというイメージが浸透していると感じていたからだ。あえて“あの人”と表記することで親しみやすさを強調した」
―三木さん自身は英語は得意でしたか。
「ソフトバンクに入る前は、TOEICの点数は500点台で、ほとんどしゃべれなかった。社長秘書として入社後に孫社長の米国出張に同行した際、ヤフー最高経営責任者(CEO)のティム・クーグルに『He is a scary man』(彼は恐るべき男だな)と言われるほど沈黙していた。今でも夜中に起きて思い出すほど悔しい出来事だったが、これがきっかけで1年間、毎朝7時半から1時間、英会話教室へ通い、猛勉強した」
「小さい時はもちろん大学の時でさえ、将来外国人の部下を持ったり、ビジネスの場で英語を話すなど考えもつかなかった。英語を話せるようになったことで自分自身の人生の可能性が大きく広がったと感じている」
(文=茂木朝日)
三木雄信氏(みき・たけのぶ)トライオン社長。95年(平7)東京大学経済学部卒業後、三菱地所に入社。98年ソフトバンク入社、社長室長を務める。マイクロソフトとの共同出資会社設立、ナスダックジャパン開設、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)買収、およびソフトバンクの通信事業参入のベースとなったブロードバンド事業のプロジェクトマネージャーを務めた。06年ジャパン・フラッグシップ・プロジェクト設立、トライオン創業。福岡県出身、43歳。>
※『なぜあの人は中学英語で世界のトップを説得できるのか』(祥伝社)
日刊工業新聞2016年8月12日