リオ五輪の飛び込み選手を悩ます藻類。実は美容や健康にいい!?
ファイトロックス、微細藻類原料量産でプラント新設
ファイトロックス(沖縄県うるま市、星野厚社長)は、8月をめどに抗肥満や抗酸化作用を持つ成分「フコキサンチン」の量産体制を整える。微細藻類である珪藻(けいそう)の一種を原料にする。同社沖縄工場(うるま市)にプラントを新設し、藻の培養から精製まで一貫して行う。
生産能力は純度100%換算で月40キログラム。5年後に売上高50億円を見込む。フコキサンチンはアスタキサンチンなどと同じカロテノイドの一種。
コンブやワカメなどの褐藻類に含まれるが、100キログラム当たり1―3グラム程度しか抽出できず希少とされる。そこで含有量が褐藻類に比べて約150倍という珪藻を原料にする。新設備ではコンブ3000トン相当の月産量ができる。
生産では、独自の低コスト培養法や沖縄県からの濃縮海水の無償提供などの優位性を生かす。設備投資では、沖縄振興開発金融公庫から資本性ローンとして3億円を調達した。
ファイトロックスは現在、小規模設備でサンプル品の生産や提供を実施。新設備稼働後は成分純度40―95%の製品や水溶性を持つ製品を販売する。大手の製薬会社や食品メーカーでの採用を目指す。
星野社長は「フコキサンチンの量産は、世界でも珍しく、トップシェアを取れる。シェア5割以上は取りたい」としている。
<微細藻類の珪藻から抽出、精製したフコキサンチン(右は水溶性化した粉末)>
デンソーが熊本県天草市に設けた、微細藻類の大規模屋外培養実証プラントが本格的に稼働を始めた。培養するのは光合成により二酸化炭素(CO2)を吸収して自動車などに使えるバイオ燃料をつくり出す藻。デンソーは天草のプラントで2018年度に効率的な大規模培養技術を確立し、そのノウハウを培養事業者にライセンス供与して広げるビジネスモデルを描く。自動車部品世界大手のデンソーにとって変わり種とも言える取り組みは果たして花開くか―。
細長い培養槽が屋外に並ぶ天草のプラント。その隅にはサッカーゴールが、ぽつんと置かれている。プラントは廃校となった中学校跡地をデンソーが賃借して設置し、グラウンドだった場所に培養槽を設置した。事務所や室内実験室は体育館を利用している。愛知県に本社を置くデンソーが天草を選んだのは「温暖な気候と豊富な日照、きれいな水」(渥美欣也新事業推進室事業企画担当部長)と藻の培養に適した環境が整っていたからだ。
デンソーは08年に微細藻類の研究に着手。「5万種類以上ある」(同)藻の中から選んだのはシュードコリシスチスという大きさ5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)程度の微細藻類。デンソーが特許を持つ新種の藻で、光合成によって細胞内にオイルをつくる。“体脂肪率”は30%に達する。
培養技術確立に向け、これまで培養規模を段階的に大きくしてきた。当初は実験室での小規模培養から始め、10年からは善明製作所(愛知県西尾市)の一角を使い20×2メートルの槽で実施。そして天草で事業化に向けた大規模培養の実証を行う。
(廃校のグラウンドに設置した藻培養槽)
大分県の別府温泉から採取したシュードコリシスチスを使用し、段階的に槽を大きくしながら培養する。まずは実験室、次に屋外の20×2メートル槽、40×4メートル槽、80×8メートル槽と順番に移していく。トータル20―30日で回収でき現状の生産能力は精製前のオイルベースで年間約6000リットル。18年度までに80メートル槽を2本追加導入し、同2万リットルに拡大する。
バイオ燃料実用化に向け壁となるのが価格だ。現状では1リットル当たり600―1000円。これを「軽油レベルに下げるのが目標」(同)。コスト削減に向け、もっとも効率的な槽の設置数を突き止めるほか、今は人手で藻が沈殿しないよう培養槽を撹拌(かくはん)しているが全自動化を目指す。藻自体も改良する。より増殖速度を高めたり、体脂肪率を増やしたりといった遺伝子レベルの研究を進める。
またシュードコリシスチスは燃料だけでなく養殖用飼料や健康食品用栄養素などとしても活用できそうだ。それらトータルでもうかる仕組みを確立した上で18年度以降、ライセンス供与を展開する計画だ。
生産能力は純度100%換算で月40キログラム。5年後に売上高50億円を見込む。フコキサンチンはアスタキサンチンなどと同じカロテノイドの一種。
コンブやワカメなどの褐藻類に含まれるが、100キログラム当たり1―3グラム程度しか抽出できず希少とされる。そこで含有量が褐藻類に比べて約150倍という珪藻を原料にする。新設備ではコンブ3000トン相当の月産量ができる。
生産では、独自の低コスト培養法や沖縄県からの濃縮海水の無償提供などの優位性を生かす。設備投資では、沖縄振興開発金融公庫から資本性ローンとして3億円を調達した。
ファイトロックスは現在、小規模設備でサンプル品の生産や提供を実施。新設備稼働後は成分純度40―95%の製品や水溶性を持つ製品を販売する。大手の製薬会社や食品メーカーでの採用を目指す。
星野社長は「フコキサンチンの量産は、世界でも珍しく、トップシェアを取れる。シェア5割以上は取りたい」としている。
<微細藻類の珪藻から抽出、精製したフコキサンチン(右は水溶性化した粉末)>
デンソーは藻類培養で美容・健康食品メーカーの顔を持ち始めた?
日刊工業新聞2016年7月28日
デンソーが熊本県天草市に設けた、微細藻類の大規模屋外培養実証プラントが本格的に稼働を始めた。培養するのは光合成により二酸化炭素(CO2)を吸収して自動車などに使えるバイオ燃料をつくり出す藻。デンソーは天草のプラントで2018年度に効率的な大規模培養技術を確立し、そのノウハウを培養事業者にライセンス供与して広げるビジネスモデルを描く。自動車部品世界大手のデンソーにとって変わり種とも言える取り組みは果たして花開くか―。
細長い培養槽が屋外に並ぶ天草のプラント。その隅にはサッカーゴールが、ぽつんと置かれている。プラントは廃校となった中学校跡地をデンソーが賃借して設置し、グラウンドだった場所に培養槽を設置した。事務所や室内実験室は体育館を利用している。愛知県に本社を置くデンソーが天草を選んだのは「温暖な気候と豊富な日照、きれいな水」(渥美欣也新事業推進室事業企画担当部長)と藻の培養に適した環境が整っていたからだ。
デンソーは08年に微細藻類の研究に着手。「5万種類以上ある」(同)藻の中から選んだのはシュードコリシスチスという大きさ5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)程度の微細藻類。デンソーが特許を持つ新種の藻で、光合成によって細胞内にオイルをつくる。“体脂肪率”は30%に達する。
培養技術確立に向け、これまで培養規模を段階的に大きくしてきた。当初は実験室での小規模培養から始め、10年からは善明製作所(愛知県西尾市)の一角を使い20×2メートルの槽で実施。そして天草で事業化に向けた大規模培養の実証を行う。
価格は軽油レベルに下げるのが目標
(廃校のグラウンドに設置した藻培養槽)
大分県の別府温泉から採取したシュードコリシスチスを使用し、段階的に槽を大きくしながら培養する。まずは実験室、次に屋外の20×2メートル槽、40×4メートル槽、80×8メートル槽と順番に移していく。トータル20―30日で回収でき現状の生産能力は精製前のオイルベースで年間約6000リットル。18年度までに80メートル槽を2本追加導入し、同2万リットルに拡大する。
バイオ燃料実用化に向け壁となるのが価格だ。現状では1リットル当たり600―1000円。これを「軽油レベルに下げるのが目標」(同)。コスト削減に向け、もっとも効率的な槽の設置数を突き止めるほか、今は人手で藻が沈殿しないよう培養槽を撹拌(かくはん)しているが全自動化を目指す。藻自体も改良する。より増殖速度を高めたり、体脂肪率を増やしたりといった遺伝子レベルの研究を進める。
またシュードコリシスチスは燃料だけでなく養殖用飼料や健康食品用栄養素などとしても活用できそうだ。それらトータルでもうかる仕組みを確立した上で18年度以降、ライセンス供与を展開する計画だ。
日刊工業新聞2016年4月14日