錦織選手、テニスで96年ぶりの銅メダル!ラケットの計測器で東京五輪を狙う日独連合
レゾニック・ジャパンの川口代表。風力発電の研究者から重心の位置計測の道へ
「重心の位置を測るだけで生活していけるだろうか」―。物体を乗せるだけで質量、重心の位置、物体の回転しにくさを表す慣性モーメントを測れる計測器「レゾニック」シリーズを販売するレゾニック・ジャパン代表の川口卓志は、起業当初不安を抱えていた。
川口は東京工業大学大学院出身。風力発電を研究し、博士号を取得した。在学中は研究の傍ら、同じ研究室に所属するロバート・クレッパーが開発した「レゾニック」の日本での特許取得を手伝った。卒業後、クレッパーがドイツで設立したレゾニックの日本法人を川口が設立することになった。
「重心の位置と慣性モーメントを測ることで物体の動きを予想・制御できる。計測の意義も、計測精度の高い機械の素晴らしさも把握していたが、お金にするのは別の話。本当にやっていけるのかは分からなかった」
ただ、目に見えないものを数値にできれば性能を裏付けられる。その意義は大きかった。2014年12月、設立から1年3カ月でエンジンメーカーへの販売が決まった。「これで会社がつぶれない」。安心感とうれしさがこみ上げた。その後も続々と大手企業からの仕事が舞い込んだ。
「大学時代の人脈を利用したり、飛び込み営業をかけたり、とにかく製品を売り込んだ。無我夢中でやっていたら仕事が寄ってきてくれた」という。また「やり方次第で会社の規模にかかわらず社会の役に立てる」との実感も、川口に大きな自信をもたらした。
(スポーツ用品の計測に使う振り子式計測器「レゾニックK」)
現在は開発をドイツで、販売を日本で行っている。ラインアップもテニスのラケットなどスポーツ用品向けの「レゾニックK」や2トン以上の重量に耐えられる「レゾニック2000F」など5種類に増えた。販売だけでなく計測サービスも好調だ。
20年の東京五輪・パラリンピックに向けて「レゾニックK」の販売には特に力を入れるという。「最終的には製品のラベルに慣性モーメントの数値が入るようになれば感慨深い。多種多様な場面で活用してほしい」と笑顔をみせる。
経営が堅調な今、川口は次の一手に出る。15年12月に新会社、ラプソドスを東京都大田区に設立、カフェ「トイトイトイ」をオープンした。家庭用焙煎(ばいせん)機も開発中で、カフェと焙煎機で出した利益で若手研究者を雇う計画だ。
川口には「そもそも学問は役に立つかどうかでするものではない」という思いがある。だからこそ「弱くなりがちな研究者の地位を保証し、本当の意味での学問ができるようにしたい」という。
カフェ所属の研究者誕生へ。川口の夢は動きだしたばかりだ。
(敬称略、文=門脇花梨)
(東京五輪の時には30歳になる錦織圭選手)
独レゾニック(本社=ベルリン市)は独自の計測技術を開発し、計測器「レゾニック」シリーズを販売している。振動を利用して物体の慣性特性を計測する。短時間で精度の高い計測ができるのが最大の特徴だ。数値を分析すると、物体の運動を予想して制御できる。2013年には「レゾニックS」を独自動車メーカーのフォルクスワーゲンに納入した。
レゾニックの製品は計測器の上に物体を乗せるだけで質量、重心の位置、惰性の大きさを表す慣性モーメントを測れる。位置を変更したり、高出力のアクチュエーターを使ったりしなくてもあらゆる項目を計測可能。振動部分には空気ベアリングを使用して摩擦を低減。計測精度を高めている。製品群として1キログラム―3トンまで測れるものを用意。大きさを問わず慣性特性を計測できる。
13年に日本法人を設立。20年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向け、テニスラケットなどスポーツ用品開発で振り子式計測器「レゾニックK」の活用を狙っている。物体の運動を予測し、スポーツ選手の感覚を数値化する。
(「レゾニック2000F」で車をドライバーを乗せたまま計測)
特許取得を手伝い日本法人の代表に
川口は東京工業大学大学院出身。風力発電を研究し、博士号を取得した。在学中は研究の傍ら、同じ研究室に所属するロバート・クレッパーが開発した「レゾニック」の日本での特許取得を手伝った。卒業後、クレッパーがドイツで設立したレゾニックの日本法人を川口が設立することになった。
「重心の位置と慣性モーメントを測ることで物体の動きを予想・制御できる。計測の意義も、計測精度の高い機械の素晴らしさも把握していたが、お金にするのは別の話。本当にやっていけるのかは分からなかった」
ただ、目に見えないものを数値にできれば性能を裏付けられる。その意義は大きかった。2014年12月、設立から1年3カ月でエンジンメーカーへの販売が決まった。「これで会社がつぶれない」。安心感とうれしさがこみ上げた。その後も続々と大手企業からの仕事が舞い込んだ。
「大学時代の人脈を利用したり、飛び込み営業をかけたり、とにかく製品を売り込んだ。無我夢中でやっていたら仕事が寄ってきてくれた」という。また「やり方次第で会社の規模にかかわらず社会の役に立てる」との実感も、川口に大きな自信をもたらした。
(スポーツ用品の計測に使う振り子式計測器「レゾニックK」)
「学問は役に立つかどうかでするものではない」
現在は開発をドイツで、販売を日本で行っている。ラインアップもテニスのラケットなどスポーツ用品向けの「レゾニックK」や2トン以上の重量に耐えられる「レゾニック2000F」など5種類に増えた。販売だけでなく計測サービスも好調だ。
20年の東京五輪・パラリンピックに向けて「レゾニックK」の販売には特に力を入れるという。「最終的には製品のラベルに慣性モーメントの数値が入るようになれば感慨深い。多種多様な場面で活用してほしい」と笑顔をみせる。
経営が堅調な今、川口は次の一手に出る。15年12月に新会社、ラプソドスを東京都大田区に設立、カフェ「トイトイトイ」をオープンした。家庭用焙煎(ばいせん)機も開発中で、カフェと焙煎機で出した利益で若手研究者を雇う計画だ。
川口には「そもそも学問は役に立つかどうかでするものではない」という思いがある。だからこそ「弱くなりがちな研究者の地位を保証し、本当の意味での学問ができるようにしたい」という。
カフェ所属の研究者誕生へ。川口の夢は動きだしたばかりだ。
(敬称略、文=門脇花梨)
(東京五輪の時には30歳になる錦織圭選手)
ドイツ「レゾニック」、スポーツ選手の感覚を数値化
独レゾニック(本社=ベルリン市)は独自の計測技術を開発し、計測器「レゾニック」シリーズを販売している。振動を利用して物体の慣性特性を計測する。短時間で精度の高い計測ができるのが最大の特徴だ。数値を分析すると、物体の運動を予想して制御できる。2013年には「レゾニックS」を独自動車メーカーのフォルクスワーゲンに納入した。
レゾニックの製品は計測器の上に物体を乗せるだけで質量、重心の位置、惰性の大きさを表す慣性モーメントを測れる。位置を変更したり、高出力のアクチュエーターを使ったりしなくてもあらゆる項目を計測可能。振動部分には空気ベアリングを使用して摩擦を低減。計測精度を高めている。製品群として1キログラム―3トンまで測れるものを用意。大きさを問わず慣性特性を計測できる。
13年に日本法人を設立。20年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向け、テニスラケットなどスポーツ用品開発で振り子式計測器「レゾニックK」の活用を狙っている。物体の運動を予測し、スポーツ選手の感覚を数値化する。
(「レゾニック2000F」で車をドライバーを乗せたまま計測)
日刊工業新聞2016年7月18日