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三井物産、32人抜き最年少社長の仕事観「妥結点を見いだすことが商社の妙技だ」

安永竜夫新社長の取り得は『国際性と土着性』。どうする非資源事業の強化?
 《石油・ガスプラントプロジェクトの交渉ではロシアや中東など資源国の要人とタフな交渉を繰り広げ、同社で初の世界銀行への出向も経験。異文化の中でも相手を理解することを重視し、交渉能力を発揮してきた》
 「世界中の人々との議論や交渉を展開してきた中で、いかに相手を理解しつつ自分を理解せしめるかを大事にしてきた。そのためには相手を知る努力と、その国の言葉や文化を学ぶ必要がある。お互いが通じ合い、妥結点を見いだすことこそが商社の仕事の妙技だ」

 《資源・エネルギー分野が収益全体の約7割を占めるが、市況は低迷している。収益基盤の安定化と強化に向け、非資源分野の事業拡大と収益化は待ったなしの状況だ》
 「非資源分野の強化に向けて、さらにリソースを注いで加速する。発電分野では独立系発電事業者(IPP)として国内有数規模だが、次のステップとして当社がオペレーターとして主体的に取り組める案件参画を目指す。直接運営に携わることで、開発コストの削減や事業の最適化を能動的に進めることができる」

 「一方で食品などの川下領域はまだ弱い。アジアの複合型企業と、複数の事業領域に関わる“面”で付き合うことで事業を広げていく。彼らとは、私がCEO同士で話し合うことで強固な関係を構築していく」

 《資源・エネルギー分野は資産の入れ替えなどを通じて、強いビジネスをより強くする方針》
 「資産の入れ替えや良質化、埋蔵量の拡充に力を入れる。当社の資産はもともとコスト競争力は高いが、一層推し進めることで収益力を高める」

 《世界中で交渉や議論を重ねてきた一方、相手と酒を酌み交わしつつ懐に入る術も持ち合わせ、「取りえは『国際性と土着性』」と笑う》

 【略歴】安永竜夫やすなが・たつお
 83年(昭58)東大工卒、同年三井物産入社。08年プロジェクト業務部長、10年経営企画部長、13年執行役員機械・輸送システム本部長。愛媛県出身、54歳。4月1日就任。
日刊工業新聞2015年04月16日 建設・エネルギー・生活面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
32歳で世界銀行に出向、各国の若き官僚らと議論して国際感覚を磨いた。さらに30代で化学プラント事業のプロジェクトマネジャーとしてパートナーとの交渉を任され、ロシアの「サハリン2液化天然ガスプロジェクト」では事業立ち上げと投資決定を経験した。足元の事業環境は厳しい。低迷する石炭や鉄鉱石の市況に加え原油相場や銅価格の急落。純利益に占める資源事業の比率が約8割と総合商社で突出するだけに、とにかく修羅場に強いという評価に期待したい。

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