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今年度の設備投資は11%増17兆5000億円。どの産業がけん引している?

政投銀調べ。素材やエコカー関連で新製品の開発投資が増える
 日本政策投資銀行が発表した2016年度の設備投資計画調査によると、全産業の国内投資計画は15年度実績比10・9%増の17兆5128億円になった。5年連続の増加になる見通し。製造業は同14・5%増6兆6642億円とけん引する。素材やエコカー関連など日本企業が強い分野で、新製品向け投資が活発だ。

 調査は6月に実施した。資本金10億円以上の大企業2077社から回答を得た。製造業の業種別では「化学」が後発医薬品の増産や新素材の開発投資がけん引し、同26・8%増と伸びる。自動車などの「輸送用機械」も同14・3%増。エコカー関連投資のほか、モデルチェンジ対応や生産効率化に向けた投資が目立つ。

 非製造業は同8・8%増の10兆8486億円。「運輸」「卸売・小売」「不動産」の投資が堅調な見通しだ。20年の東京五輪・パラリンピックを見据えたインフラ関連投資が続く。

 海外の設備投資は全産業で同1・3%減の4兆680億円で2年連続のマイナス。製造業は同4・7%増の2兆8551億円。自動車は新興国向け投資が一巡し、前年度に続き減るが、化学や精密機械が増加する。非製造業は同13・2%減の1兆2129億円。資源安を受け、鉱業が同29・1%減と大幅に減るため、7年ぶりにマイナスに転じる。

 全体に占める海外での設備投資比率は34・6%で前年度の36・9%から下がる。3年連続低下で、08年秋のリーマン・ショック以降拡大してきた海外投資に一服感がみられる。

それでも国内回帰は進まない



 企業が成長に向けた投資を増やそうとしている。日本政策投資銀行が発表した2016年度設備投資計画によると、製造業の投資動機の中で新製品や製品高度化に向けた投資が約2割を占めた。能力増強投資と合わせると4割超になる。活発だった設備の維持・補修の動きが一巡、企業の前向きな投資姿勢が鮮明になってきた。

 製造業の投資理由をみると「新製品・製品高度化」をあげる企業は全体の18・6%。2015年度実績から4ポイント上昇した。現項目での調査を開始した86年度以降では最も割合が多かった。

 「能力増強」は24・3%。8年ぶりに前年を上回った15年度実績からは4ポイント下落したが、13年度、14年度実績よりはいずれも1ポイント以上高い。

 「研究開発」も9・5%と高水準を維持。「合理化・省力化」は10・2%で0・4ポイント上昇した。「維持・補修」をあげる企業は全体の24・3%。前年度実績よりは増えたが、一服感がある。

 企業の投資姿勢の変化が顕著なのは海外投資だ。08年のリーマン・ショック以降に高水準を維持してきた海外の設備投資は減速している。15年度実績は前年度比1・6%減と6年ぶりにマイナスに転じた。16年度も1・3%減と2年連続の減少になる。

気になる結果


 自動車を対象にした今後3年程度の中長期的な国内・海外の供給能力の見通しによると、13年度に9割以上の回答を占めた「相対的に海外を強化」は16年度には5割まで低下した。

 ただ、国内への回帰も進まない。製造業全体で今後3年で生産を国内に回帰すると答えた企業は8%。例え国内回帰したとしても、7割の企業が設備投資の増額要因にはならないと回答した。

 企業の投資が有形の固定資産投資から先端技術開発や人的投資へと広がりをみせている一方、気になる結果もある。

 製造業505社の内、現在の中核事業以外の事業やサービスなどの成長市場を開拓に取り組む企業は約4割にとどまる。既存事業での収益確保や成長が見込まれる企業もあるが、企業成長には新たな収益の柱の模索は不可欠だ。

エコノミストはこう見る


明治安田生命保険チーフエコノミスト・小玉祐一氏「円高が懸念材料」
 計画値ながら、2年連続で下振れたものの、前年度比での増加率は10%を維持した。総括として減速しているが、底堅い水準は維持したといえるだろう。

 ただ、内訳では製造業の2016年度計画が14.5%増と15年度の24.2%増から大きく下方修正した。もともと当初計画と実績のぶれが出やすい上、為替相場も円高傾向にある。想定為替レートの大半が1ドル=110―115円と足元の水準と10円以上の差があり、製造業の投資計画の動向は懸念材料といえる。

 世界経済の情勢もリスク要因となる。特に英国の欧州連合(EU)離脱問題は足元で落ち着いてきたが、この問題は中長期的な課題。今後、設備投資が下振れする多くのリスクを抱えている。

日本総合研究所調査部マクロ経済研究センター所長・牧田健氏「老朽設備の更新が増加の背景」 
 国内については、老朽化に伴う設備更新が設備投資額の増加の一番の背景と言える。非製造業も東京五輪に向けた再開発や物流改革が進み、国内はしっかりとした設備需要に支えられている。

 海外設備投資比率低下の背景には、世界経済に対する全般的な見通しが大きく変化し、積極的に海外で投資する状況ではなくなったという共通認識がある。為替相場がかつてのように1ドル100円を超えて円高が進む状況ではなくなり、過度な海外シフトに修正が起きているとも言える。

 だが、今後はマクロ経済環境にもよるが、国内の人手不足もあり、長期トレンドとしては海外設備投資を増やして果実を得るスタンスにならざるを得ない。
日刊工業新聞2016年8月5日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
「企業の前向きな投資姿勢が鮮明になってきた」という記述があるが、文章全体のトーンでいえばそんな感じを受けない。円高を含め設備投資に関しては下振れリスクが増えている。逆にM&Aなどの戦略投資は一部の企業でダイナミックに動くのではないか。

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