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損保大手の「再生エネルギー保険」、風力や地熱にも広がり

太陽光依存から脱却。損保ジャパンは東大と風力のリスク評価
 損害保険会社が再生可能エネルギーに関連した保険商品などを相次いで投入している。東京海上日動火災保険は地熱発電に関する賠償責任保険を、損保ジャパン日本興亜は風力発電のリスク評価モデルを東京大学などと開発した。太陽光発電向けが中心だった再生エネ向けの保険・サービスが広がりをみせている。

 東京海上日動は地熱発電事業者向けに、地表調査から操業までの賠償責任を引き受ける保険を発売した。地熱の開発中に近隣温泉地の湯量減少などが生じた際、原因調査費用や温泉事業者側に生じた逸失利益の損害賠償額を補償する。

 地熱開発中に湯量の減少などが生じた場合、温泉事業者は損害賠償を請求するには、自らが地熱開発との因果関係を調査する必要がある。

 この費用負担が300万円以上と高額となるため、地熱開発において温泉事業者側の理解が得られず、開発が進展しにくい課題があった。今回の保険はこの調査費用をカバーし、さらに地熱開発との因果関係が立証されれば、温泉事業者の逸失利益も補償する。

 損保ジャパン日本興亜は東大、英子会社SOMPOキャノピアスと共同で風力発電において、自然災害などによる損害額、発電停止中の逸失利益を推定するモデルを開発した。

 風力発電は風車の大型化、洋上風力発電の開発が進んでいる。ただ、事故の損害額は高額な上、リスクの定量的な評価が難しいことが事業者の悩みとなっている。今回の評価モデルを活用し、リスクを定量的に評価した上で、保険やコンサルティングなどにつなげる。

 三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は、バイオマス発電事業者向けに、発電設備などへの財物損害や第三者への賠償責任などのリスクを包括的に補償する保険を投入した。

太陽光中心もFITの減額がどう影響するか


 従来、損保会社は再生エネ関連の保険において、太陽光発電事業者向けの火災保険が中心で、実際、足元でも販売は好調だという。ただ、政府による固定買い取り価格が減額傾向にあり、業者の減少が起きれば、中長期的に保険需要に響く可能性もある。

 一方、2030年までの政府の「長期エネルギー需給見通し」において、太陽光以外の再生エネの底上げも明記されており、今後、風力や地熱などの保険の引き合いが相対的に増える可能性がある。多様化する再生エネのニーズを巡り、損保各社の保険の獲得をめぐる競争が激しくなっていきそうだ。
(文=杉浦武士)
日刊工業新聞2016年8月2日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
資産運用でも再生可能エネルギー関連のファンドにどんどん投資して下さい。

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