自動運転時代のキー技術をデンソーの研究開発から読み解く
自動運転の今後を知るキーワード
自動車業界で「自動運転」の技術開発が花盛りを迎えている。トヨタ自動車や日産自動車、ホンダ、米GMなどの自動車メーカーに加え、米グーグルなどIT企業もこぞって新規参入を狙って自動運転車を開発している。
すでに衝突回避支援システムや高速道路でのクルーズコントロールなど、自動運転の第一歩とも呼べる機能は自動車に搭載され始めている。2020年前後には高速道路での追い越しなども実用化される見通し。一方で先日、米テスラ・モーターズの電気自動車が自動運転支援機能「オートパイロット」の使用中に死亡事故を起こすなど、まだ十分に成熟していない技術でもある。
そんな中、7月中旬に愛知県岡崎市で開かれた展示会で、自動車部品大手デンソーの加藤良文常務役員が講演し、高度運転支援システム(ADAS)や自動運転技術の開発戦略を語った。自動車業界を挙げて取り組む自動運転の技術は今後どう進化するのか。そのカギを、加藤氏の講演から読み解きたい。
そもそも自動運転をどう定義するか。デンソーは「①周辺環境を認識し、②自動で走る・曲がる・止まるを制御し、③安全・快適に目的地まで到達させる」技術だとみている。
このうち、最も重要なのが①の周辺認識の技術だという。現在のクルマにはカメラやミリ波レーダーが搭載されることが多くなり、ドライバーに衝突の危険を知らせたり、自動ブレーキをかけたりするようになってきている。
周辺認識技術のスタンダードな仕組みは、単眼カメラやミリ波レーダーを組み合わせて前後方をみるもの。これにソナーを使うこともある。これによって自車の周辺100メートル~250メートル程度を認識できる。
今後は自動運転化が進むにつれ、個々の車がより遠くの状況も認識することが必要になってくる。こうしたことから、デンソーは「V2X」(Vehicle to X)と呼ばれる、車同士(車車間)や車と路面(路車間)をつなげる通信機器を使い、1000メートル単位で周辺状況を取得。さらにクラウド通信器や「ADASロケータ」(位置情報提供装置)などの機器を装備して、1万メートル(10キロメートル)先の情報を得ることを想定している。
また、歩行者の認識も自動運転の前提として重要になる技術。歩行者と一口にいっても、ベビーカーを押す人から杖をつく人、裾の広がるスカートをはく女性などさまざまな人がいる。また、車の前に飛び出てきたのが人なのか、動物なのか、はたまたゴミなのか。これを判別できない限り、正確な自動運転はできない。
デンソーは実に3万2000次元の歩行者の特徴を分析し、カメラに映る物体が歩行者なのか、そうでないのかを判別するシステムを作り上げたという。
加藤氏は講演で、「いつもする例え話」として、「BMI指数」を挙げた。BMIは身長と体重からその人の肥満度を調べる指数のことだが、ここで出てくる数字は、身長と体重の2次元となる。同社は歩行者認識のために、人の写真データから、3万2000次元の特徴量を分析。歩行者の画像データを2000万枚、人ではない障害物などのデータを約2億枚集めて、スーパーコンピューターによって1カ月ほど膨大なデータを計算したという。
加えて、デンソーはレーザーによって周辺環境を認識する「走査型LIDAR」にも注目する。自動運転車では、歩行者などを認識するだけでなく、「何もない空間=移動可能な空間」を認識することが必要だ。車の周辺には、カメラでは認識できなくとも、レーザーをあてると「道にはタイヤの切れ端から、ソファー、野菜などまで落ちている」(加藤氏)。こうしたものを発見できなくてはレーンチェンジや駐車時に障害物に当たってしまう。
カメラによる周辺認識に、LIDARによる計測を加えた「センサーフュージョン」がホットな話題になっているのだという。
<次ページ:「クルマから人への情報伝達」もカギに>
すでに衝突回避支援システムや高速道路でのクルーズコントロールなど、自動運転の第一歩とも呼べる機能は自動車に搭載され始めている。2020年前後には高速道路での追い越しなども実用化される見通し。一方で先日、米テスラ・モーターズの電気自動車が自動運転支援機能「オートパイロット」の使用中に死亡事故を起こすなど、まだ十分に成熟していない技術でもある。
そんな中、7月中旬に愛知県岡崎市で開かれた展示会で、自動車部品大手デンソーの加藤良文常務役員が講演し、高度運転支援システム(ADAS)や自動運転技術の開発戦略を語った。自動車業界を挙げて取り組む自動運転の技術は今後どう進化するのか。そのカギを、加藤氏の講演から読み解きたい。
1万メートル先を認識
そもそも自動運転をどう定義するか。デンソーは「①周辺環境を認識し、②自動で走る・曲がる・止まるを制御し、③安全・快適に目的地まで到達させる」技術だとみている。
このうち、最も重要なのが①の周辺認識の技術だという。現在のクルマにはカメラやミリ波レーダーが搭載されることが多くなり、ドライバーに衝突の危険を知らせたり、自動ブレーキをかけたりするようになってきている。
周辺認識技術のスタンダードな仕組みは、単眼カメラやミリ波レーダーを組み合わせて前後方をみるもの。これにソナーを使うこともある。これによって自車の周辺100メートル~250メートル程度を認識できる。
今後は自動運転化が進むにつれ、個々の車がより遠くの状況も認識することが必要になってくる。こうしたことから、デンソーは「V2X」(Vehicle to X)と呼ばれる、車同士(車車間)や車と路面(路車間)をつなげる通信機器を使い、1000メートル単位で周辺状況を取得。さらにクラウド通信器や「ADASロケータ」(位置情報提供装置)などの機器を装備して、1万メートル(10キロメートル)先の情報を得ることを想定している。
「3万2000次元」の特徴を分析して歩行者を認識
また、歩行者の認識も自動運転の前提として重要になる技術。歩行者と一口にいっても、ベビーカーを押す人から杖をつく人、裾の広がるスカートをはく女性などさまざまな人がいる。また、車の前に飛び出てきたのが人なのか、動物なのか、はたまたゴミなのか。これを判別できない限り、正確な自動運転はできない。
デンソーは実に3万2000次元の歩行者の特徴を分析し、カメラに映る物体が歩行者なのか、そうでないのかを判別するシステムを作り上げたという。
加藤氏は講演で、「いつもする例え話」として、「BMI指数」を挙げた。BMIは身長と体重からその人の肥満度を調べる指数のことだが、ここで出てくる数字は、身長と体重の2次元となる。同社は歩行者認識のために、人の写真データから、3万2000次元の特徴量を分析。歩行者の画像データを2000万枚、人ではない障害物などのデータを約2億枚集めて、スーパーコンピューターによって1カ月ほど膨大なデータを計算したという。
加えて、デンソーはレーザーによって周辺環境を認識する「走査型LIDAR」にも注目する。自動運転車では、歩行者などを認識するだけでなく、「何もない空間=移動可能な空間」を認識することが必要だ。車の周辺には、カメラでは認識できなくとも、レーザーをあてると「道にはタイヤの切れ端から、ソファー、野菜などまで落ちている」(加藤氏)。こうしたものを発見できなくてはレーンチェンジや駐車時に障害物に当たってしまう。
カメラによる周辺認識に、LIDARによる計測を加えた「センサーフュージョン」がホットな話題になっているのだという。
<次ページ:「クルマから人への情報伝達」もカギに>
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