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部品業界の代表が予見、「異業種を含めた合従連衡が起きる」

志藤日本自動車部品工業会会長(ヨロズ会長)に聞く業界展望
 自動車部品業界を取り巻く環境が大きく変化している。英国の欧州連合(EU)離脱で世界経済の不透明さが増しているほか、環境規制への対応や自動運転など次世代車載技術を巡る競争は激化の一途をたどる。日本の部品メーカーはどう戦うべきか。日本自動車部品工業会の志藤昭彦会長(ヨロズ会長)に聞いた。


「周辺部品を含めて作りこむ必要」


 ―日産自動車三菱自動車が資本提携で合意しましたが、部品メーカーへの影響は。
 「日本の自動車産業にとって今回の日産、三菱自の提携は非常にプラスだ。開発、調達、生産などあらゆる面を補完し、シナジーを創出できるからだ。双方のサプライヤーにとっても自社技術の採用を広げられる大きなチャンスになるだろう」

 ―部品メーカーの事業環境をどう見ていますか。
 「昨年までの為替の円安進行から一転、中国の景気減速、英国のEU離脱で一気に円高に動いた。国内も予定されていた消費増税の延期が決まり、駆け込み需要による車の販売増も期待できず、不透明で厳しい環境といえる。ただこれを言い訳にせず、技術開発の手を休めないことが競争力を高めるために重要だ」

 ―各国で厳格化される車の環境規制への対応に、部品メーカーとしてどう貢献していきますか。
 「車体のさらなる軽量化が欠かせず、日本の部品メーカーの高度な技術力が生きる。ただ従来のように単品部品だけで軽量化を進めるのではなく、周辺の部品を含めて作りこむ必要が出てくるだろう。同業だけでなく素材メーカーなど異業種を含めた合従連衡が起きる可能性がある」

 ―自動運転分野では海外メガサプライヤーが存在感を強めています。
 「日本の部品メーカーは専門領域において優れた固有の技術を持つ企業が多い。確かに海外メガサプライヤーは脅威ではあるが、部品の軽量化に向けた戦略同様に、企業同士の連携を深めることで存在感を示していけるだろう」

 ―部工会として中小サプライヤーをどう支援していきますか。
 「販路支援策としては展示会や商談会の機会をこれまで以上に積極的に設け、後押ししたい。事業継続計画(BCP)対策としては部工会が指針を策定している。4月の熊本地震の発生の際に各社にヒアリングしたが、だいぶ浸透していると感じた。今後もBCPに関する啓発を続けていく」
(聞き手=下氏香菜子)

 
日刊工業新聞2016年7月22日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
自動運転技術など完成車メーカーの開発領域が広がる中、特に従来の基幹部品を進化させる上で、部品メーカーが果たすべき役割は大きくなっている。ただ、海外メーカーを含めて競争が激しくより付加価値の高い技術・製品を提案できなければ生き残りは難しい。志藤会長が指摘するように他社との連携も視野に競争力を高めていく戦略が欠かせない。 (日刊工業新聞第一産業部・下氏香菜子)

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