「1分で25万円売る」コールセンターに潜入してみた(前編)
17期連続成長、「ショップチャンネル」の強さの秘密-最近のコールセンター事情
「分単位で売り上げを把握している」。
最前線で指揮を執る水野緑オペレーション本部受注オペレーション部長は語る。
テレビ通販最大手のジュピターショップチャンネル(東京都中央区)。ショッピング番組「ショップチャンネル」を24時間365日、生放送する。1996年の創業以来、17期連続増収を支えるのがコールセンターの存在だ。視聴者はインターネットでも購入できるが、電話経由が8割と依然としてチャネルの重要性は揺るがない。
1日平均7万9000件、最大で22万件。問い合わせが一日1000件を超えれば多い部類といわれるコールセンターでは異例の数字だ。東京と大阪の二拠点で最大460席体制でやりくりしている。
「いかにお客さまを待たせないか」。水野部長は課題を挙げる。待たせてしまう場合はおおよその待ち時間を通知したり、新商品の情報を流したり、工夫を凝らすことで「電話を切られる」機会損失を減らす。IVR(自動音声応答装置)を活用した受注システムも導入して、誘導に成功している。
「それでも、オペレーターに質問したい層は多い。IVRで在庫を確保した上でオペレーター対応を望む人もいるほど。最も重要なのは、商品の売れ行きを予測して、適切なオペレーターを確保する作業」
同社の電話のピークは深夜零時から午前1時。お買い得商品「ショップ・スター・バリュー」を取り上げるため、根強い固定客が多い。過去の類似商品の売れ行きから、算出して、1ー2カ月前にはオペレーターのシフトを組む。
ただ、水野部長は「(インターネットやSNSの普及で)非常に売れ行きは分かりづらくなっている。予想屋の気分」と苦笑いする。需給を均衡させるのは長年の経験があっても容易ではない時代になっている。
例えば、放送の数日前に取り扱う商品の関連製品を有名人がブログで取り上げたりすると、販売が一気に伸びる。電話がパンク状態に鳴るときも珍しくない。逆に、家電がリコールを起こしたりすると、全く関係ない型番やメーカーでも伸び悩むことがあるという。
不可抗力で、取り扱う商品が急きょ変わることもある。ウナギなど生鮮食品は大人気商品だが、シーズンによっては収穫量が少なく、放送直前に商品が変わることもあるとか。
「問題なのは当初想定より注文が上振れしそうな時」。特に深夜帯のオペレーターの確保は直前では難しい。同社では在宅のオペレーターを活用するなどして注文のピークを乗り越えている。
業績を伸ばすのに伴い、人材の質の底上げも課題になる。
特に家電は専門的な質問も多い。想定問答集の用意はもちろん、事前にメーカー関係者の勉強会を開くことも少なくない。「お問い合わせの電話にはほぼオペーレターの段階で疑問を解消できている」。
全ての質問に答えられるわけではないが、生放送ならではの答え方もある。
「衣服の場合、『質感はどうなの』、『後ろから見たらどういう感じですか』とオペレーターには答えづらい質問もある。そういう場合は、スタジオに電話して、生放送中の番組で視聴者にわかるような説明をしてもらうことで即座に解消できるように心がけている」。
コールセンターとスタジオの連絡は密だ。「分単位で売り上げをリアルタイムに把握している。売れ行きも含め連絡している」。1時間で、平均4ー5回、多いときは10回を超えるやりとりがある。
同社の2014年3月期の売上高は1328億円。単純計算すると、1分25万円のペースで売り続けていることになる。当然、分当たりの売り上げは放送中も意識しているが、今後はこれまでと異なる形で顧客満足を挙げる必要性があるという。
「これまではお待たせしないための効率性を重視してきた。いかに待たせないかに加え、one to oneの対応も高めていきたい。当社はリピーターのお客さまも多い。例えば、お客さまにつながると同時にオペレーターの画面に推奨商品や、以前のやりとりの履歴を生かして、お客さまが喜ぶ言葉を表示できるような仕組みも技術的には可能。実現には予算という大きな問題はありますけれどね」。
(後編は5月12日(火)に掲載)
最前線で指揮を執る水野緑オペレーション本部受注オペレーション部長は語る。
テレビ通販最大手のジュピターショップチャンネル(東京都中央区)。ショッピング番組「ショップチャンネル」を24時間365日、生放送する。1996年の創業以来、17期連続増収を支えるのがコールセンターの存在だ。視聴者はインターネットでも購入できるが、電話経由が8割と依然としてチャネルの重要性は揺るがない。
1日平均7万9000件、最大で22万件。問い合わせが一日1000件を超えれば多い部類といわれるコールセンターでは異例の数字だ。東京と大阪の二拠点で最大460席体制でやりくりしている。
「いかにお客さまを待たせないか」。水野部長は課題を挙げる。待たせてしまう場合はおおよその待ち時間を通知したり、新商品の情報を流したり、工夫を凝らすことで「電話を切られる」機会損失を減らす。IVR(自動音声応答装置)を活用した受注システムも導入して、誘導に成功している。
「それでも、オペレーターに質問したい層は多い。IVRで在庫を確保した上でオペレーター対応を望む人もいるほど。最も重要なのは、商品の売れ行きを予測して、適切なオペレーターを確保する作業」
同社の電話のピークは深夜零時から午前1時。お買い得商品「ショップ・スター・バリュー」を取り上げるため、根強い固定客が多い。過去の類似商品の売れ行きから、算出して、1ー2カ月前にはオペレーターのシフトを組む。
ただ、水野部長は「(インターネットやSNSの普及で)非常に売れ行きは分かりづらくなっている。予想屋の気分」と苦笑いする。需給を均衡させるのは長年の経験があっても容易ではない時代になっている。
例えば、放送の数日前に取り扱う商品の関連製品を有名人がブログで取り上げたりすると、販売が一気に伸びる。電話がパンク状態に鳴るときも珍しくない。逆に、家電がリコールを起こしたりすると、全く関係ない型番やメーカーでも伸び悩むことがあるという。
不可抗力で、取り扱う商品が急きょ変わることもある。ウナギなど生鮮食品は大人気商品だが、シーズンによっては収穫量が少なく、放送直前に商品が変わることもあるとか。
「問題なのは当初想定より注文が上振れしそうな時」。特に深夜帯のオペレーターの確保は直前では難しい。同社では在宅のオペレーターを活用するなどして注文のピークを乗り越えている。
業績を伸ばすのに伴い、人材の質の底上げも課題になる。
特に家電は専門的な質問も多い。想定問答集の用意はもちろん、事前にメーカー関係者の勉強会を開くことも少なくない。「お問い合わせの電話にはほぼオペーレターの段階で疑問を解消できている」。
全ての質問に答えられるわけではないが、生放送ならではの答え方もある。
「衣服の場合、『質感はどうなの』、『後ろから見たらどういう感じですか』とオペレーターには答えづらい質問もある。そういう場合は、スタジオに電話して、生放送中の番組で視聴者にわかるような説明をしてもらうことで即座に解消できるように心がけている」。
コールセンターとスタジオの連絡は密だ。「分単位で売り上げをリアルタイムに把握している。売れ行きも含め連絡している」。1時間で、平均4ー5回、多いときは10回を超えるやりとりがある。
同社の2014年3月期の売上高は1328億円。単純計算すると、1分25万円のペースで売り続けていることになる。当然、分当たりの売り上げは放送中も意識しているが、今後はこれまでと異なる形で顧客満足を挙げる必要性があるという。
「これまではお待たせしないための効率性を重視してきた。いかに待たせないかに加え、one to oneの対応も高めていきたい。当社はリピーターのお客さまも多い。例えば、お客さまにつながると同時にオペレーターの画面に推奨商品や、以前のやりとりの履歴を生かして、お客さまが喜ぶ言葉を表示できるような仕組みも技術的には可能。実現には予算という大きな問題はありますけれどね」。
(後編は5月12日(火)に掲載)
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