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プロセッサーの巨人ARMをソフトバンクが買収するダイナミズム

15年前にCEOが予見「グローバルスタンダードになるには半導体メーカーでは困難だ」
プロセッサーの巨人ARMをソフトバンクが買収するダイナミズム

アームの公式ページより

 ソフトバンクグループは18日、半導体設計の英アームを約240億ポンド(約3兆3000億円)で買収すると発表した。アームは1990年にエイコーン・コンピュータ、アップルコンピュータ、VLSIテクノロジーの合弁で設立されたCPU(中央演算処理装置)設計会社。モバイル向けに圧倒的に強くアップルのアイフォーンにも設計資産が搭載されている。日刊工業新聞社ででは2001年11月に当時の最高経営責任者(CEO)のウォレン・イースト氏(現ロールス・ロイスCEO)に初めて単独インタビューした。

 当時から飛ぶ鳥を落とす勢いだったアームに対し、日本の半導体メーカーはDRAMで敗北、システムLSIに舵を切り始めようとしていた。ソフトバンクといえば、2000年に経営破綻した日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)に筆頭株主として出資。ITバブルにより時価総額がトヨタ自動車に次ぐ企業になっていたが、通信事業者として存在感を発揮するのはもう少し後になってからだ。

 アームのイーストCEOはインタビューで「グローバルスタンダードとなるには(自ら製品展開する)半導体メーカーでは困難だ」と話している。アームのようなビジネスモデルが日本の半導体や携帯端末メーカーの競争力を奪い取っていったのは間違いない。そのアームをソフトバンクが買収するという時代の流れとダイナミズムを感じる。

「アームは成長途上の発育ざかりだ」


日刊工業新聞2001年11月29日


 未曽有の不況に苦しむ半導体業界で、地殻変動が始まっている。システムLSI時代の本格到来を前に総合半導体メーカー(IDM)からIP(設計資産)ベンダーへ主役の新旧交代が起こりつつあるからだ。とくにIDM各社が業績不振に苦しむなか、携帯電話機向けプロセッサーで最大シェアを握るIPベンダー最大手、英アーム(ケンブリッジ市)の業績は右肩上がりの成長。なぜIPベンダーが台頭しているのか。来日したアーム最高経営責任者(CEO)のウォレン・イースト氏に聞いた。

 ―アーム社のプロセッサーが普及した理由は。
 「もともとの技術が優れていたからだが、ビジネスモデルもグローバルスタンダードとなるように組まれていたこともある。意識してパートナーと連携し、すべてを1社で独り占めするのではなく、より大きなパイ(需要)を共有するという考え方を選んだ。基本ソフト(OS)やソフト、ツールなど環境が整って普及に勢いが出ると、それが環境整備にはね返るという良い循環が出来上がった。これは長年にわたる努力の成果だ」

 ―大手IDMもデファクトスタンダード(事実上の業界標準)の獲得には努力してきたはずですが。
 「日本の大手メーカーもそれぞれスタンダードを作っていると思うが。ただIDMはすべてのバリューチェーンを独自技術で確保しようとするところが、我々のオープンアーキテクチャーと違う。アーム社が設立されたときには選択肢が三つあった。ファブレスメーカーや工場を持って製造まで取り組む道などもあったが、我々はあえてライセンスビジネスに特化する道を選んだ。グローバルスタンダードとなるには(自ら製品展開する)半導体メーカーでは困難だからだ」

 ―IDMの地位は低下し始めているのですか。
 「IDMとはこれからも共存していく。私は20年近くも前からこの業界にいるが、その時からIDMの役割が縮小するのではと言われてきた。それでも相変わらずIDMは生き抜いている。もちろん技術の世代が移り変われば業界をリードする企業も変わるが、ビジネスそのものは拡大し、IDMのビジネスが絶対量で減ることもないだろう」

 ―この不況下でアーム社は成長を続けています。
 「それはアーム社が成熟企業ではなく、成長途上の発育ざかりだからだ。無線では8割近くのシェアだが、その他の多くの分野はまだ初期段階。まだまだ伸びる余地が大きい」

 【記者の目】
 日本の半導体メーカーでアーム社とライセンス契約を結んでいないのは、SHマイコンを擁する日立製作所ぐらい。各社とも自社マイコンをそろえてはいるがシステムLSI事業を世界市場で展開するには「アームでないと戦えない」(イーストCEO)というのが実情だ。システムLSI時代に設計資産の価値が高まるのは目に見えているが、アームに対抗できるだけのビジネスモデルを確立できた国内勢はまだ現れていない。
 (聞き手=尾本憲由)
※肩書き、内容は当時のもの
日刊工業新聞2001年11月29日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
今の事業とのシナジーは特に感じないがIoT時代を見据えた戦略投資というのは間違いない。「通信キャリア」というビジネスも変わっていく、あるいは孫さんは見切っているのか。

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