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後発薬メーカーは多品種少量ニーズにどう応えていくか

18年度に供給能力7割増を目指す日医工の取り組み
後発薬メーカーは多品種少量ニーズにどう応えていくか

日医工の富山第一工場。生産中の製品について品質試験を行う品質試験室

 政府のジェネリック医薬品(後発薬)普及政策を受け、後発薬メーカーの供給責任が重くなっている。日医工は2018年度に後発薬の年間供給能力を15年度比71・3%増の185億錠とする計画を掲げ、富山第一工場(富山県滑川市)での新棟建設をはじめとする設備投資も決めた。だが後発薬の品目数は増え続けており、多品種少量生産への対応は難しさを増す。伊藤正幸執行役員富山工場長に製造現場での課題や解決策などを聞いた。

 ―富山第一工場の位置づけや役割は。
 「錠剤やカプセル剤を製造しており、顆粒(かりゅう)剤を手がける富山第二工場(同)に比べて生産量が大きい。研究開発機能も有し、他工場で製造をする製品についても開発の際は試験をここでやる。マザー工場と言えるだろう」

 ―多品種少量生産にどう対応しますか。
 「製品A、B、C、Dがあったとした場合、その順番で生産するのではなく、同一製品を続けて製造する時間が長ければ清掃や段取り替えが改善される。実現には全製品の在庫が十分にそろっている必要があり、生産推進の部署がその対応を進めている。また、現場では多能工化が求められる。新たな機器を入れれば人が必要になるが、経験者を配置するのは難しい。長期的な視点の下で教育訓練を施し、複数の機械を扱える人を育てる」

 ―今まで以上に柔軟な勤務体制を確立する必要もあるのでは。
 「包装工程では2直と3直のラインがある。ただ人数の制約があり、全ラインを3直にはできていない。『なぜ私だけがいつも夜勤なのか』といった従業員の不満が出ないよう、うまくローテーションを回している。そのためにも(多能工化などの)教育が不可欠だ。勤務交代時の引き継ぎは短時間で終わるよう工夫している」

 ―開発支援業務も増えていきそうですね。
 「小規模な機器で開発品の評価を行い、いけるとなった場合は開発部隊から製品化に向けたお願いをされる。実生産機を使った製造をして下さい、という依頼だ。商用生産の計画が組まれている中で時間を取られるのは非常に苦しいが、協力をする。だが勝手にやれることではなく、生産推進から許可をもらうことが必要。社内のコミュニケーション(意思疎通)を大事にしていきたい」

【ポイント・安定供給へ意思疎通円滑に】
 日本では後発薬メーカーの数が非常に多く、同じ有効成分の薬を20社以上が販売する事例も珍しくない。医薬品は欠品すると患者の命に関わる可能性があるため、医療機関や調剤薬局は価格や品質だけでなく、メーカーの供給力も見極めて採用製品を決めている。最大手の日医工といえども安心はできず、安定供給の実現に腐心する日々が続く。需要予測の精度向上とともに、社内関係者間の意思疎通をさらに円滑化する必要がありそうだ。
(文=斎藤弘和)
日刊工業新聞2016年7月14日
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
後発薬メーカー各社の取り組みもあって、後発薬の数量シェアは着実に増加している。だが国が掲げる目標から見ると、増加のスピードは緩やか。使用促進に向けた環境整備を進めるためにも、品質への信頼性、安定供給は生命線となる。

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