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電気軽トラが島の農業を守る!

スマートコミュニティー構想の事例
電気軽トラが島の農業を守る!

照明に電力を供給する電気軽トラック

 沖縄本島からフェリーで30分ほどの伊江島(沖縄県伊江村)がスマートコミュニティー導入の舞台だ。

 周囲22キロメートルの伊江島には5000人ほどが暮らす。農業が基幹産業の一つで、特に電照菊の栽培が盛んだ。その電照菊は夜間も照明をあて開花時期を調整するが、台風などで停電すると開花がズレるだけでなく品質も落ち、農家の収入が減る。

 そこでパシフィックコンサルタンツやNECは電気軽トラックの導入を提案する。ふだんは農業作業で活用し、停電時は電気軽トラの蓄電池から照明に電力を送って電照菊の品質を保つ。電気軽トラックは安くはないが、日常的に使うので非常時のためだけに蓄電池を導入するよりもコストメリットがある。

 燃料費も抑制できる。伊江島は離島なのでガソリン代が本島よりも高く、電気軽トラの活用でガソリンの使用量を減らすことでの経済メリットが大きい。計画では太陽光パネルで発電した電力で電気軽トラを充電する。将来はICTで太陽光の発電と充電のタイミングを合わせるように電気軽トラを誘導し、できるだけ多く太陽光の電力で充電する。

 伊江島は停電と燃料費の高さが地域課題。電気軽トラの導入で二つの課題解決を目指す。導入時期は具体的になっていないが「地域の視点に立って、地域に本当に必要とされる設備とシステムを組み合わせながら計画を進める」(パシフィックコンサルタンツの小野弘臣環境エネルギー部長)方針だ。


 ※「スマートコミュニティJapan2015」の開幕が6月17日に迫ってきました(会場は東京ビッグサイト、http://www.nikkan.co.jp/eve/smart/)。
14年開催の「スマートコミュニティJapan2014」開幕に向けた掲載したスマートコミュニティー構想の事例を随時紹介していきます。
(掲載時はあくまで構想段階。その後の事業計画など変更がある場合があります)
日刊工業新聞社2014年06月18日深層断面から抜粋・加筆
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
スマートコミュニティーというとまだ馴染みの薄い言葉と思います。横浜市や北九州市など大都市の取り組みが有名ですが、全国各地に導入構想があります。しかも、それぞれが地域課題解決を目指した地域密着型です。伊江島の例のようにスマートコミュニティーは新産業とは限りません。既存産業を守るスマートコミュニティーもあります

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