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「クラウドファンディング×3Dプリンター」で自己変革するソニー

「リスクを取った商品が出てくるようになった」(平井社長)
 ソニーは試作だけでなく、民生品の量産にも3次元(3D)プリンターを活用しようとしている。第1号が新規事業創出プログラムで生まれた、スティック型アロマディフューザーの内蔵部品だ。3Dプリンターの試作から量産までの活用で、より自由な発想で短期にモノづくりを実現する体制が整いつつある。

 「AROMASTIC(アロマスティック)」は、手のひらサイズの筒状の筐体(きょうたい)の上部を回転させることで、5種類の香りを楽しめる製品だ。事業化の前段階のクラウドファンディングで約1300本を受注し、8月中旬の出荷を目指す。香りは、長さ2センチメートルほどで直径1ミリメートル弱の穴が空いた筒状部品に保持されている。香りを効率よく保持すべく、穴の内部にもマイクロ流路が加工されている。切削や射出成形では難しい複雑形状だ。

 製品の設計、製造を手がけるソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ(SGMO)の大嶋敏蔵統括部長は「製品を実現する形状など、開発者の発想を形にするには3Dプリンターが最適だった」と説明する。1989年から手がけてきた3D光造形機のノウハウを応用し、試作では自社製の高精細3Dプリンターを活用してきた。これを量産にも使おうと、技術開発に着手した。

 量産に向けた最大の課題が造形時間だった。ボトルネックは光硬化樹脂をレーザーで硬化した後に、ガラス基板からワーク(加工対象物)をはがす工程だ。そこでガラス基板の形状を円筒形にし、ワークがはがれやすい形に改良。造形速度を数十倍に高めた。SGMOの木原信宏3D造形担当マネージャーは「高精細と高速造形を両立できた」と胸を張る。

 従来は難しかった形状も3Dプリンターで生産できるようになる。SGMOの加藤健一統括部長は「今後は他の製品の生産にも3Dプリンターの応用を提案したい」と意気込む。より自由な発想で生まれた製品が市場投入される日も近そうだ。(政年佐貴恵)
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
ソニーのクラウドファンディングプロジェクト「First Flight」では、バンド部分にデジタル機能を搭載した「wena wrist」をはじめ、独創的な発想の製品が複数生まれている。こうした仕組みが受け皿となり、平井一夫社長が言う「リスクを取った商品が出てくるようになった」背景になっているのだろう。ここに量産型の3Dプリンターが組み合わされば、着想に忠実な製品を実現できる可能性はさらに広がる。その中から収益性も高く、世界を席巻するような製品が生まれることを期待したい。

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