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ホンダ、「系列回帰」ムード高まる。調達方針に変化か

<追記あり>水平分業の中でメガシフトは続くも、「ホンダらしさ」に答える部品メーカーにチャンスあり
ホンダ、「系列回帰」ムード高まる。調達方針に変化か

八郷社長は就任以降、調達方針で多くを語っていない

 ホンダの八郷隆弘社長が就任してから1年。この間サプライヤーはホンダの調達方針に変化を感じ取っている。かつてホンダはメガサプライヤーとの距離を縮めようとしたが、“チームホンダ”を掲げる八郷社長の就任で系列サプライヤーの間では「系列回帰」ムードが高まる。拡大路線からの方針転換で系列サプライヤーに頼らざるを得ない事情もあるようだ。

 「志をひとつに皆で努力!」。昨年、八郷社長は系列サプライヤーにこんな直筆メッセージの色紙を手渡している。社長就任を機に世界中の現場を巡回し各系列サプライヤーも訪問。新生ホンダの成長に向けて系列サプライヤーに協力を呼びかけて回った。

 八郷社長は“チームホンダ”をスローガンに掲げた。チームの主メンバーにはホンダ本体だけでなく系列サプライヤーも含まれる。こうした新トップの言動から多くの系列サプライヤー幹部が「系列への揺り戻しを感じる」と口をそろえる。

離縁状で鍛えられたサプライヤー


 揺り戻しとは、ホンダがメガサプライヤーに歩み寄ったことの反動ということだ。2012年、ホンダはメガサプライヤーとの取引を拡大する方針を打ち出した。

 当時ホンダの世界販売は年400万台だったが、わずか4年で1・5倍の600万台にするという拡大路線をとった。これに伴い調達方針を転換した。モジュール化など車づくりの効率化が自動車メーカーの競争力を左右する環境の変化もあり、メガサプライヤーの協力なしでは急速な規模拡大は難しいとの判断があった。

 この方針転換は、規模で見劣りする系列サプライヤーの間で衝撃を持って受け止められた。系列サプライヤーはホンダ依存体質からの脱却を迫られ、ホンダ以外の取引を拡大するために競争力を磨いた。

 「当時は離縁状をつきつけられたと思ったが刺激になって鍛えられた。今は感謝している」。こう話すように競争力を養った例もあるが、失注で体力がそがれた系列サプライヤーも少なくない。

600万台旗降ろす


 結局ホンダの拡大路線はホンダ自体の開発現場の負担を重くし、主力車種でリコールが相次ぐ事態に発展。600万台の旗を降ろした。八郷社長が就任した時期はその直後になる。

 「規模を確保できないとメガサプライヤーに振り向いてもらえない」と指摘するのは別の系列サプライヤー幹部。600万台の公約を果たせなくなり、量を求めるメガサプライヤーとの取引でホンダの立場が弱くなった。それで系列サプライヤーに頼らざるを得なくなった。というのが系列サプライヤー間の大方の一致した見方だ。

 「品質や納期やコストで客観的に調達先を選ぶ。これまでもこれからも変わらない」。八郷社長は就任以降、調達方針で多くを語っていない。だが今後の新型車の部品の受注競争では取引歴が長く互いを知り尽くした系列サプライヤーが有利になる公算が大きい。「追い風だがあぐらをかくことなく競争力を上げないといけない」。ある系列サプライヤー幹部は気を引き締めて受注獲得に臨む。
(文=池田勝敏)
日刊工業新聞2016年7月11日
中西孝樹
中西孝樹 Nakanishi Takaki ナカニシ自動車産業リサーチ 代表
本当にホンダ系列へ追い風が吹いているかどうかは、疑問を感じる。確かに、前経営陣の極端な発言が系列取引へきわどい逆風を感じさせるものはあったし、関係悪化の原因にもなったと言える。八郷社長の温和なコミュニケーションは関係改善を感じさせるが、それが取引拡大を単純に意味するものとは思われない。ホンダは、水平分業を勧めながら、独自の「ホンダらしさ」を突き詰める戦略にあるだろう。水平分業の中でメガシフトは続くであろうし、「ホンダらしさ」に答える部品には大いにホンダ系サプライヤにはチャンスがあると考える。

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