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祝打ち上げ!大西飛行士はISSで何をする?

祝打ち上げ!大西飛行士はISSで何をする?

船外活動訓練中の大西宇宙飛行士(JAXA、NASA、ジェームズ・ブレア氏提供)

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の大西卓哉宇宙飛行士(40)が搭乗するロシアのソユーズ宇宙船が、日本時間7日10時36分、国際宇宙ステーション(ISS)に向け、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられる。ISSの日本実験棟「きぼう」ではマウスを使った飼育実験など新しい取り組みが始まる。大西宇宙飛行士のISSでの活動を通じ、日本の技術力をアピールする絶好の機会となる。

「こうのとり」をロボアームで捕捉


 日本と米国、ロシアの宇宙飛行士3人を乗せたソユーズは、打ち上げ後に軌道投入され、ISSへドッキングする。地球への帰還は10月下旬を予定しており、ISSでの滞在期間は約4カ月間となる。

 ISSには米国、ロシア、欧州、カナダ、日本の各国が担当するエリアがあり、その中で日本は日本実験棟「きぼう」を持つ。きぼうでは生命科学や物質科学などの実験を実施する。さらにエアロックとロボットアームを併せ持つ唯一の施設であることから、超小型人工衛星の地球周回軌道への放出を行っている。

 大西宇宙飛行士のISS滞在中に予定されている大型イベントは、ロボットアームで国産物資補給船「こうのとり」を捕捉する作業だ。「得意のロボットアーム操作技術で回収したい」(大西宇宙飛行士)と意気込んでおり、本人を含め多くの日本人がその瞬間に期待している。

20以上のミッション実施


さらに今回、ISSの運用に必要なバッテリーについて、日本製のリチウムイオン電池が使われている新型バッテリーに置き換える予定だ。こうのとりで運ばれた新型バッテリーの交換作業に大西宇宙飛行士が携わることができれば、“チームジャパン”の技術力を世界にアピールできる。

またISSでは多くの実験が計画されており、JAXAだけでも20以上のミッションがある。その中でも今夏にもきぼうで始まると期待されているのが、マウスを利用した小動物飼育実験だ。遠心機で人工的に作った地上と同じ重力環境と、微小重力環境を準備。各環境でマウスを飼育することで重力の影響のみを調べられる。

 2015年に油井亀美也宇宙飛行士が設置した「小動物飼育装置」を利用し、大西宇宙飛行士はマウスの餌やりや装置の清掃、観察などを担当する。大西宇宙飛行士が飼育するマウスを解析することで、骨量減少や筋萎縮など加齢に関わる疾患の解明や、治療薬の開発につながるかもしれない。

 さらに創薬につながる高品質のたんぱく質結晶の生成実験、新材料の開発が期待されている「静電浮遊炉実験」など、日本独自の取り組みが進行中だ。これから約4か月間、油井宇宙飛行士からバトンを受け取った大西宇宙飛行士の活躍に期待したい。

(文=冨井哲雄)
日刊工業新聞2016年7月6日 科学技術・大学面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
日本人宇宙飛行士では11人目の飛行ということです。マウスを使った動物実験など、新しい取り組みに期待です。

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