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これからのロボット活用で大注目はバラ積みピッキング

MUJINの次世代型はとにかく速い
これからのロボット活用で大注目はバラ積みピッキング

アクスルが導入したピッキングロボットシステム

 MUJIN(東京都文京区)は、産業用ロボット向け汎用コントローラーとビジョンセンサーを組み合わせたバラ積みピッキングのシステム「ピックワーカー」の次世代版を開発した。ロボットに動きを教えるティーチング(教示)が不要で「通常1年半はかかる生産ライン実装が約3週間で可能になる」(滝野CEO)という。

 8月からシステム構築会社やエンドユーザーとなる製造業に提案を始める。独自の教示用ペンダントとコントローラーのセットで価格は300万円(消費税抜き)。産業用ロボットやビジョンセンサーは別購入。2017年5月期に4億円の売り上げを目指す。

 産業用ロボットのメーカーを問わず使える。前の世代に比べて使い勝手を高めた。100%ピッキングに成功するわけではないが「24時間作業できることで、作業員の負担を大幅に減らしつつ生産性を高められる」(同)という。

 同システムは、動きの邪魔になる干渉物をあらかじめ3次元モデルで登録すると勝手に回避する動きを行う。ピッキングの対象物をつかむ位置も複数箇所登録すれば、素早く最適な位置を探り効率よくつかむ。拾った部品を置く場所も大まかに指示すれば、効率的な動きを自分で作り出せる。間違ったつかみ方をすると、戻ってやり直す。

 一般的なバラ積みピッキングはエンジニアによる教示作業が煩雑で、わずかな変更でもプログラミング設計をやり直す必要がある。同システムはこうした課題をふまえ教示を不要にしたのが特色で、アスクルの物流現場にも個別ピッキング作業ができるロボットシステムを構築した。

(産業用ロボットのメーカーを問わず使えるMUJINのシステム)

アスクル、個別ピッキング可能なシステム構築


 アスクルは28日、ロボット制御技術のベンチャー企業で業務提携先のMUJIN(東京都文京区)と物流現場へのロボット導入を進めると発表した。物流現場で自動化が難しかった個別ピッキング作業ができるロボットシステムを構築し、作業の24時間自動化を達成した。今後、神奈川県の物流センターなどへも展開する。

 MUJINが持つ自動的にロボットの動きを生成する技術とビジョンセンサー、産業用ロボットを組み合わせた。自動倉庫から流れてきた箱の中にある無造作に置かれた商品箱から産業用ロボットが的確な個数をピッキングし、個別配送用の段ボールへ効率よく投入する。

 一般的な産業用ロボットは繰り返し作業に強い半面、バラ積みされた商品のピッキングなど柔軟に動きを変えることが難しい。実証実験では「自動倉庫によりスペースあたりの在庫効率が3倍に高まり自動ピッキングロボットで3人分の作業ができる」(アスクルの池田和幸執行役員)ようになった。

 アスクルは一般消費者向けインターネット通販サービス「ロハコ」に、8月末から1時間単位で受取時間を指定できて細かく配送状況を利用者に知らせる「ハッピーオンタイム」サービスを加える。岩田彰一郎社長は「こうしたサービスの向上に人工知能(AI)やロボット技術を活用したい」と意気込む。
日刊工業新聞2016年6月29日面
石橋弘彰
石橋弘彰 Ishibashi Hiroaki 第一産業部
MUJINのバラ積みピッキングはとにかく早い。採用したアスクルの役員に「MUJINの技術の良さは」と聞くと、「世界中のロボット関連企業を回ったが、MUJINが一番早く、失敗もない」と絶賛していた。MUJINのコントローラーが産業用ロボット市場を広げる牽引役になるかもしれない。

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