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スズキ「37年の経営経験の中で最悪の事態」でもインド新工場を半年前倒し

来年1月稼働、現地“納車待ち”改善
スズキ「37年の経営経験の中で最悪の事態」でもインド新工場を半年前倒し

インドのマルチ・スズキの生産ライン

 スズキは販売好調なインドで4輪車を増産するため、建設中のグジャラート工場(グジャラート州)を予定より約半年前倒し、2017年1月に稼働する。同国で3番目となる新工場の稼働により、20年に年産200万台体制を整える。燃費の測定不正などの影響で国内販売が苦戦する中、大黒柱のインド事業が救世主となりそうだ。

 新工場の稼働時期はこれまで17年半ばとしていた。既存のグルガオン工場(ハリアナ州)とマネサール工場(同)を合わせた年産能力は約150万台。すでにほぼフル稼働で、「バレーノ」など人気車種は納車待ちの期間が長くなっている。新工場の生産車種は、バレーノを検討する。

(インドで人気がある「バレーノ」)
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 **修会長「全都道府県の販売店へおわびに回る」
 スズキは29日、浜松市内で株主総会を開いた。燃費の測定不正の引責で「CEO(最高経営責任者)職を返上しても、会長職にとどまるのは責任逃れ」と厳しく追求した株主に対し、鈴木修会長は「辞めることは無責任。徹底的に会社に残って対処するのが男として大切」と毅然(きぜん)と言い放った。

 鈴木修会長は今回の燃費の測定不正を「37年の経営経験の中で最悪の事態」と受け止め、再発防止に全力を注いで自身によるワンマン体制からの脱却を急ぐ。

 総会には過去最多の642人が出席した。スズキの販売店を営む株主から信頼回復の方法を問われた鈴木修会長は「9月までに全都道府県の販売店におわびに回る」とし、この日も総会後に北海道・東北地方へ向かうとした。

 鈴木俊宏社長は「社員全員が猛反省し、一日も早く信頼を回復したい。お客の期待を超える商品づくりにまい進する」と宣言した。

 78年の社長就任から40年近くにわたり議長を務めてきた鈴木会長にとっては議長として仕切る最後の株主総会となった。


俊宏氏がCEOとCOO兼務


 スズキは29日、株主総会後の取締役会で、鈴木俊宏社長が鈴木修会長の後任の最高経営責任者(CEO)に就く人事を決めた。鈴木社長がCEOと最高執行責任者(COO)を兼務する新体制が始動し、鈴木会長のワンマン体制からの脱却を図る。

 鈴木会長は燃費測定不正の責任をとりCEOを返上したが会長にとどまる。これには内外から「何も変わらない」との声も出るが、事態の収拾には鈴木会長の経験が不可欠。今後は不正の再発防止や外交中心に活動し、新体制を後方支援する。

 一方、鈴木俊宏社長のCEOとCOO兼務は「名実ともにスズキのトップとなることを示す」(関係者)とリーダーシップに期待がかかる。引責辞任した本田治副社長は同社初の技監に就任。皮肉にも今回の不祥事が、これまでなかなか実現できなかった鈴木会長からの自立を経営陣に促すことになった。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
グジャラート工場の生産能力は年間25万台で、すでに第2工場の準備もしているという。世界へ輸出するバレーノのほか、「スイフト」も将来の生産車種の候補にあがっている。インド事業は好調だが、国内販売は今回の燃費問題で大きなダメージになりそう。息子の俊宏氏にCEO職を譲った修会長だが、経営者としての経験やカリスマ性は比べることすらできない差がある。他社との連携が現実味を帯びてくる。

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