20年前のガソリン車に比べEVの特殊鋼使用は45%減少
EVの普及が進む2027年には最大41万トンの需要を失う可能性も
特殊鋼倶楽部(東京都中央区)の調査で、同じエコカーと呼ばれるハイブリッド車(HV)と電気自動車(EV)で、特殊鋼の使用形態が大きく変わることが判明した。EVでは特殊鋼が多く使われるエンジン、排気処理装置、トルクコンバーターがなくなるのが主因。量が減るだけでなく、EVから耐熱鋼と快削鋼が消え、ステンレス鋼が大幅に減るなど鋼種の範囲も狭まる。EVの普及が進む2027年には計算上、最大41万トンの需要を失う可能性もある。
特殊鋼倶楽部は2012年にトヨタ自動車のHV「プリウス」を調査。エンジンやブレーキ、サスペンションなど特殊鋼が使われるユニットを解体し、特殊鋼が144・3キログラム使われていることを特定した。今回は日産自動車のEV「リーフ」で同様に調査。ともに5人乗り5ドア車で、電池を除く車体重量がほぼ同じ車種を選んだ。その結果、EVの特殊鋼使用量はHVより41キログラム少ない103・3キログラムだった。
鋼種別で比べると、HVで14・9キログラムあった快削鋼、0・7キログラムあった耐熱鋼がゼロになった。快削鋼はエンジン内のクランクシャフトとコンロッド、耐熱鋼は同じくバルブに使われていた。また、HVで17・9キログラムあったステンレス鋼が0・7キログラムに激減。HVでは大半がマフラーで使われていたが、EVではこれがなくなった。
ボルトなどに使う炭素鋼、ギアなどに使う合金肌焼き鋼も減少した。対照的に、合金強靱(きょうじん)鋼が駆動モーターシャフトなどに使われ、4・8キログラムから11・5キログラムに増えた。スタビライザーなどに使うバネ鋼も9・7キログラムから14・8キログラムに増えた。
一方、モーターなどに使う軸受鋼はほとんど変わらなかった。ただ、調査を受託した日鉄住金総研(東京都千代田区)では「HVからEVになったからといって、鋼種や重量が大きく変わったとは思わない」(経済産業調査部)と評価。むしろ「自動車会社による素材の使い方の違いの方が大きい」(同)と指摘し、エンジンや排気系がないことによる構造的な要因を強調した。
ただ、海外の調査機関による世界自動車販売台数の予測データを基に、EVが27年に185万台、同じくエンジンのない燃料電池車が50万台販売されると想定。ここから日本企業の特殊鋼占有率などを加味して単純計算すると、特殊鋼使用量は対HV比較で約41万トンのロスになる。ただ、自動車の市場自体は拡大するため、総需要はこれ以上に増える。なお、15年度の特殊鋼生産量は約2330万トンある。
特殊鋼倶楽部は2012年にトヨタ自動車のHV「プリウス」を調査。エンジンやブレーキ、サスペンションなど特殊鋼が使われるユニットを解体し、特殊鋼が144・3キログラム使われていることを特定した。今回は日産自動車のEV「リーフ」で同様に調査。ともに5人乗り5ドア車で、電池を除く車体重量がほぼ同じ車種を選んだ。その結果、EVの特殊鋼使用量はHVより41キログラム少ない103・3キログラムだった。
鋼種別で比べると、HVで14・9キログラムあった快削鋼、0・7キログラムあった耐熱鋼がゼロになった。快削鋼はエンジン内のクランクシャフトとコンロッド、耐熱鋼は同じくバルブに使われていた。また、HVで17・9キログラムあったステンレス鋼が0・7キログラムに激減。HVでは大半がマフラーで使われていたが、EVではこれがなくなった。
ボルトなどに使う炭素鋼、ギアなどに使う合金肌焼き鋼も減少した。対照的に、合金強靱(きょうじん)鋼が駆動モーターシャフトなどに使われ、4・8キログラムから11・5キログラムに増えた。スタビライザーなどに使うバネ鋼も9・7キログラムから14・8キログラムに増えた。
一方、モーターなどに使う軸受鋼はほとんど変わらなかった。ただ、調査を受託した日鉄住金総研(東京都千代田区)では「HVからEVになったからといって、鋼種や重量が大きく変わったとは思わない」(経済産業調査部)と評価。むしろ「自動車会社による素材の使い方の違いの方が大きい」(同)と指摘し、エンジンや排気系がないことによる構造的な要因を強調した。
ただ、海外の調査機関による世界自動車販売台数の予測データを基に、EVが27年に185万台、同じくエンジンのない燃料電池車が50万台販売されると想定。ここから日本企業の特殊鋼占有率などを加味して単純計算すると、特殊鋼使用量は対HV比較で約41万トンのロスになる。ただ、自動車の市場自体は拡大するため、総需要はこれ以上に増える。なお、15年度の特殊鋼生産量は約2330万トンある。
日刊工業新聞2016年6月10日/20日の記事を再編集