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インフラからおもちゃまで、新技術との融合でデジタルサイネージが進化

2020年には2.6倍の市場に?
インフラからおもちゃまで、新技術との融合でデジタルサイネージが進化

パナソニックが製作した大型の柱状のディスプレーに足を止める人々

 地下街や店舗などの身近な場所で、電子看板(デジタルサイネージ)を見かける機会が増えてきた。表示する情報を柔軟に変更できるため、訪日外国人に対して設置したケースも多い。使い方次第では、都市の中で人の流れを変えられる可能性を秘めている。情報通信技術(ICT)や最新映像技術などとの融合により、電子看板の応用範囲が広がりはじめた。

映像・音響で新しい空間体験


 6月上旬の幕張メッセ(千葉市美浜区)。展示会「デジタルサイネージジャパン」に出展された7本の柱状の大型ディスプレーに、多くの来場者が足を止めた。パナソニックが140面のモニターを使い製作したもので、見る位置や方向で印象が変わる。映像と音響を組み合わせ、新しい空間体験を狙う。このほか商業施設、交通機関向けにコンテンツ配信システムを含めた電子看板ソリューションも紹介した。

 映像技術に強みを持つソニーも展示会に参加。液晶テレビ「ブラビア」を使った電子看板関連のサービスを訴求し、ディスプレーの用途拡大として新たな展開を模索する。

誘導で混雑緩和


 富士キメラ総研(東京都中央区)によると、電子看板市場は2020年に国内だけで14年比2・6倍の2717億円へ拡大するという。

 電子看板は、看板の代替だけでは終わらない。ICTと組み合わせ、人の流れを変える社会インフラの一部になる。また最先端の映像技術によって電子看板自体が最新のオモチャにもなりうる。

 例えば、駅や街中で人の流れを検知し、状況に応じて電子看板に表示する内容を変えて近隣施設に人を誘導すれば、混雑緩和に役立てられる。日立製作所が電子看板ソリューションを提供するのも、IoT(モノのインターネット)基盤と組み合わせて社会インフラの効率化に有効なツールになると認識しているからだ。

空中にキャラクターが浮かぶ


 一方、東芝テックは、アスカネット(広島市安佐南区)の特殊材料「AIプレート」を使って、空中に映像を映し出すシステムを試作した。円形のコースターの上に水の入った瓶を置くと、瓶の中にサンリオのキャラクター「シンカイゾク」の仲間が現れる。瓶は複数あり、別の瓶を選ぶと別の仲間が現れる。6月上旬の「東京おもちゃショー」で、キャラクターを印象的に展示した。



 AIプレートは内部に微小な鏡を規則的に配列している。プレート裏側にモニターを設置すると、映像はプレートで透過・反射される。微小な鏡の配列で反射角が制御され、モニターの反対の空間に結像される。東芝テックは結像される空間に瓶を置く全体設計と、瓶に装着した無線識別(RFID)タグでモニターに映すキャラクターを変更する仕組みを担当した。

 スリーエムジャパン(東京都品川区)が出展した最大60点タッチを同時に認識できる大型タッチパネルも注目される。アミューズメントをはじめ、使い方はアイデア次第だ。最新技術が電子看板の役割を広げている。
(文=梶原洵子)
日刊工業新聞2016年6月23日 電機・電子部品・情報・通信2面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
「デジタルサイネージが拡大する」とかなり前から言われてきましたが、紙だった看板が画面になっただけのものが多く、いまいち有効に使えている感じがありませんでした。ICTなどとの連携でこれからやっと本領発揮できるといったところでしょうか。

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