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日立アプライアンスが炊飯器の「セル生産」をロボットで置き換え

日立アプライアンスが炊飯器の「セル生産」をロボットで置き換え

導入したロボットセル

 日立アプライアンス(東京都港区、二宮隆典社長、03・3502・2111)は、産業用ロボット数台によるセル生産の工程を広げる。炊飯器組み立てでの内ブタのネジ締めや部品組み付け工程の自動化システムを2015年に作り上げ導入した。品質安定や省人化など効果があったことから、炊飯器組み立ての他工程や洗濯機、掃除機など他の生産品目での活用も狙う。

 同社の生産拠点で家電製品を製造する多賀事業所(茨城県日立市)で蓄積したシステム設計などのノウハウを生かす。炊飯器組み立てでは垂直多関節ロボット2台と水平多関節(スカラ)ロボット1台、部品供給装置、治具などを組み合わせたセル工程を構築し、稼働している。

 垂直多関節ロボット1台とリニアシリンダーが連動しつつ樹脂部品を内ブタに組み付け、スカラロボットがネジを締め、もう1台の垂直多関節ロボットが別の部品を組み付ける。「想定したより大がかり、かつ手間がかかった」(関係者)が、それまで2人の作業者が行っていた工程を自動化。ネジ締め力の安定など品質の向上に貢献した。

 今後、構築したシステムで、組み立てる炊飯器や圧力釜の種類を増やすことを想定し、上流の工程からの部品供給の仕組みなどを再構築する。新製品は順次、ロボットセルを活用できるようにする。

 一方で、洗濯機や掃除機の組み付け工程にもロボットを導入したい考え。大型部品の組み付けや、人手のセルラインとロボットとの協調作業に挑戦したいという。

 産業用ロボットは塗装や溶接などの繰り返し作業での活用は進んだが、セル生産での活用はこれから。コストなどの課題が残る中、労働人口減少など諸課題への対応策としてロボットの活用が期待されている。
日刊工業新聞2016年6月22日 
石橋弘彰
石橋弘彰 Ishibashi Hiroaki 第一産業部
日立アプライアンスが構築したロボットセルラインは当初、ロボットだけのシンプルなものを目指したが、最後は自動機を多数取り入れた大がかりなものになった。産業用ロボットは中小企業の生産ラインへの普及を目指しているが、シンプルに、低コストでシステムを構築できないと導入は難しい。ロボットセルラインを中小企業に広げるにはロボットメーカーの一層の努力が必要だろう。

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