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ジャパンディスプレイ、3年間の研究開発費に1000億円。高精細化や有機ELに

<追記あり>設備投資は抑制も、踏ん張る余地は十分
ジャパンディスプレイ、3年間の研究開発費に1000億円。高精細化や有機ELに

JDIが製品化した4K液晶パネル

 ジャパンディスプレイ(JDI)は2019年3月期までの3年間で、約1000億円を研究開発に投じる。過去3年間と比べて約1・8倍の規模になる。得意とする低温ポリシリコン(LTPS)技術を進化させた次世代高精細ディスプレーや、狭額縁化技術、フレキシブルディスプレーの開発などを進める。一方で設備投資は抑制し、成長投資として研究開発に重点配分する。研究開発費は毎年300億円程度を充てる。過去3年間の実績では計549億円を投じており、大幅に投資額を積み増す。

 開発費を重点配分する分野は液晶ディスプレーの高精細化技術や、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレー技術の確立など。9年3月期に営業利益率を16年3月期比8・3ポイント増の10%に引き上げる目標に向けて、利幅の大きい新製品を開発し、利益の創出に力を注ぐ。

 同社は売上高の85%を占めるスマートフォン向け事業からの脱却を目標に掲げ、中型液晶事業を強化している。車載パネルやノートパソコン向けを注力領域と位置付け、高精細や低消費電力、デザイン性を強みとして中型市場でのシェア拡大を加速する。19年3月期には非スマホ事業の生産比率を33%に高める計画だ。

 一方、17年3月期に計画している1500億円の設備投資は、200億―300億円減額する見通しだ。不要不急の設備更新などを抑え、資金を成長投資に回す。


記者ファシリテーターの見方


 ジャパンディスプレイはサムスンを筆頭にした有機ELフィーバーと、基盤を作り上げ強みとしている液晶の狭間に置かれている。研究開発費の引き上げは、その先を見据えた一手だ。有機ELへの投資はできる限り抑え、液晶技術を磨き上げて有機ELを凌駕したいというのがJDIの思惑。画質やコストの面では液晶に分がある今のうちに、その状況を作り出せるか。
(政年佐貴恵)

ファシリテーター・原直史氏の見方


 3年間で1,000億円の研究開発投資を計画、重点配分する分野は液晶ディスプレーの高精細化技術や、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレー技術の確立とされる。この二つの分野に配分する額として、充分であろうか? 加えて、低温ポリシリコン高精細化にしても、有機EL製品化にしても、相当な開発スピードが要求される。資金と人材をどのように集中させていくかがポイントになるように思われる。


日刊工業新聞2016年6月20日
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
業界首脳からは、研究開発費をかけられれば、液晶の画質は有機ELに負けないものになるし、また、有機ELはまだコスト面の課題が多いという話を聞く。また日本には要素技術を持つ企業が集積しているので、IoTの戦略的活用で活路が開ける可能性もある。銀行の思惑などもあり、シャープとの事業統合は出来なかったが、JDIとして踏ん張る余地は十分ある。

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