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FAオープン化の波、国内王者の三菱電機が考えていること

担当役員に聞く。
FAオープン化の波、国内王者の三菱電機が考えていること

IoT化が進む名古屋製作所(サーボモーターの自動化ライン)

 プログラマブルロジックコントローラー(PLC)、サーボモーターなど工場自動化(FA)機器で高いシェアを誇る三菱電機。FA機器と管理ソフトウエアなどを一括提供し製造革新に導く「e―ファクトリー」を展開している。IoT(モノのインターネット)の普及でFAにさらなる進化が求められる中、業界大手として新時代にどう向き合うのか。漆間啓常務執行役FAシステム事業担当に戦略を聞いた。

  ―IoTの時代に向けe―ファクトリーをどう進化させますか。
「すでに300社近くと組み、多様な機器、ソフトを製造現場に提供できるようになっている。だが今後は製造だけでなく、設計、調達、販売、サービスなども支援できるようにしていく必要がある。このため、協業の幅をもっと広げていきたい」

 ―調達などサプライチェーンの領域に踏み込むとなると、競合他社の製品と連携する必要も出てきます。
 「ドイツなどで構想される第4次産業革命は基本的にオープンな世界。オープン化に対応できなければ、流れに乗り遅れる。従って将来には(e―ファクトリーと競合製品が)つながるようにするべきだと思う」

(漆間氏)

 ―競合他社が提唱し始めたオープン型のIoT基盤に参加するつもりはありますか。
 「可能性はある。ただ、まずはe―ファクトリーのオープン化を目指したい。順番として(競合のシステムに参画するのは)その後になる」

 ―4月にレーザー加工機向けIoTサービス「iQケアリモート4U」を始めました。
 「加工機の遠隔診断を可能にし、稼働停止時間の低減に貢献することが目的。まだ始めたばかりなので未知数だが、興味を持っているユーザーが非常に多いのは確かだ。今後は故障の予知なども可能にしていきたい」

 ―IoTの普及でFA業界はどう変化していくのでしょう。
 「ここ1年ほど、IoTに対するユーザーの関心度は驚くほど高い。ユーザー側も大きく変わろうとしている。その中で、他の一歩先を行くことが大事だ。e―ファクトリーをベースに課題解決型の事業形態にしていくべきだと思う」

【記者の目・新時代の旗手へ変容期待】
 ハードウエアの信頼性を強みに発展してきた日本のFA機器業界。だが欧米などで構想されるIoT革命は、ハードよりソフトに重きを置いたものだ。競合のファナックは、情報系企業と組み独自のIoT基盤を提唱し始めた。三菱電機もハード主体から課題解決型への転換を目指すという。巨大な既存ビジネスを抱える中、どれだけ劇的に変わり、時代の変化をリードできるかが見どころだ。
(聞き手=藤崎竜介)

IoT使い生産革新、20工場で実証


日刊工業新聞2016年1月12日


 三菱電機は2016年度から国内の自社工場を対象に、モノのインターネット(IoT)技術を使った生産革新を本格的に始める。データを収集・分析する生産システム「e―ファクトリー」を中核に据え、発電機やパワー半導体の工場など少なくとも10―20程度の工場で着手する。1年かけてコスト削減などの効果を実証し、17年度から生産革新の仕組みを外販する。

 すでにFA機器を生産する名古屋製作所と、ブレーカーを作る福山製作所でIoTを採用し生産革新を進めていた。自動化しやすい量産品の工場ではIoTとの親和性が高いためだ。今後は発電機など受注生産品の工場でも採用し、国内で全面的に展開する。

 事業領域を絞らずに各工場からIoT活用の立候補を募り、生産革新の具体案を提出させて年度内に決める計画。コスト削減や品質・歩留まり改善、製造期間の短縮など目的に応じ、各種センサーやe―ファクトリーなどを導入する。

 e―ファクトリーは工場の各種設備からデータを収集・分析する。課題を”見える化“し、生産効率や品質の向上に結びつける。e―ファクトリーを中心にIoTの仕組みを導入し「自社工場で高い生産性を示す」(同社)。さらに蓄積したノウハウを生かし、製造業の顧客にシステムとして提供する。

 同業では日立製作所が16年度にサーバーやストレージ(外部記憶装置)の工場でIoT技術を採用する。生産ラインにセンサーを設置して稼働状況を把握し、多品種少量生産の効率を高める意向だ。NECも16年度から国内外の主要生産拠点でIoT活用の標準システムを導入する。

IoTの活用は米国やドイツが先行しているが、日本の主要メーカーでも工場で使う動きが広がってきた。
日刊工業新聞2016年5月25日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
「まずはe―ファクトリーのオープン化を目指したい。順番として(競合のシステムに参画するのは)その後になる」という発言は気になる。事業部門のトップとしては模範解答かもしれないが、トヨタはFAネットワークの標準規格にドイツの「イーサキャット」を採用するという。三菱電機の「CCリンク」はガラパゴス化しないか。漆間氏は技術系が多い同社の事業トップの中で事務系でしかも前職は、欧州代表兼統括販社社長。ビジネスの嗅覚に期待。

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