VR、これから高解像度か、小型か、軽量化か
「理想的な解像度は『8K』以上」(ソニー)
360度方向の映像を楽しめる仮想現実感(VR)市場が拡大してきた。盛り上がりの背景には、ヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)の視野角の広がりや、頭の動きと映像のズレを低減する低遅延化といった端末の進化がある。ただ、まだまだ端末の機能向上の余地は大きい。VR端末メーカー各社は、高解像度化、小型・軽量化といったキーワードで取り組みを加速させている。
10月にプレイステーションVR(PSVR)の発売を控える、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(東京都港区)の高橋泰生グローバル商品企画部1課課長は、VR端末の課題について「さらなる高精細化」を挙げる。
PSVRの解像度はフルハイビジョン(FHD)だが、右目と左目用の表示で2分割するため、実際には解像度が落ちる。米オキュラスが提供する端末「オキュラスリフト」や台湾のHTCが提供する端末「HTCバイブ」も同様だ。今のサイズでも十分楽しめるが、高橋氏は「理想的なサイズは、『8K』(FHDの16倍の解像度)以上とは言われている」と指摘する。
高橋氏は「無線化」も課題に挙げる。ゲームユーザーを主なターゲットとする、オキュラスリフト、HTCバイブ、PSVRはいずれもHMDとパソコンやゲーム機本体に有線ケーブルで接続する。実際に動き回って楽しむゲームだと、ケーブルが動作の邪魔になる。しかし、いずれのVR端末もリフレッシュレートが90ヘルツ以上で、映像を伝送するデータ量は膨大だ。高橋氏は「現在の無線伝送方式では表示転送速度が不足する。更なる技術開発が必要」と無線化はまだ先になりそうだ。
小型化、軽量化も今後のテーマになる。オキュラスで日本事業を率いる池田輝和氏は、10日に東京で行われたイベント「VRサミット」で「HMDを何時間も装着するのはなかなか難しい」と指摘した。「小型化、簡素化していきたい。メガネレベルのサイズにしていきたい」と将来像を掲げる。すでにオキュラスリフトは500グラム以下だが、軽量化を追求する必要性はある。
HTCバイブを担当するレイモンド・パオVR関連副社長は「日本、米国、中国ではゲームを楽しむ環境が異なる」と分析する。住宅環境が広い米国は、例えばHTCバイブの使用環境で推奨される空間(約4・5メートル角)はある。しかし、一般的に部屋の小さい日本や、インターネットカフェでゲームを楽しむ中国では、使用時の楽しさが制限されてしまう。
(中国・北京小鳥看看のVR端末「ピコ」)
一方、日本にオフィスを構える中国の北京小鳥看看有限公司の端末「ピコ」はユニークだ。通常は「本体×HMD×コントローラー」が高機能モデルの基本だが、ピコはHMDと有線で接続するコントローラーそのものがコンピューター。気軽に持ち運べ、ゲームを楽しめる利点がある。
VR端末は解像度、応答速度、視野角といった課題を乗り越えて、この1年で一気に製品化された。ただ、VR端末を体験した一般消費者は絶対的に少ない。体験者が増えることで、新たな課題が見え、次の端末が開発されていくだろう。
(文=大塚淳史)
10月にプレイステーションVR(PSVR)の発売を控える、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(東京都港区)の高橋泰生グローバル商品企画部1課課長は、VR端末の課題について「さらなる高精細化」を挙げる。
PSVRの解像度はフルハイビジョン(FHD)だが、右目と左目用の表示で2分割するため、実際には解像度が落ちる。米オキュラスが提供する端末「オキュラスリフト」や台湾のHTCが提供する端末「HTCバイブ」も同様だ。今のサイズでも十分楽しめるが、高橋氏は「理想的なサイズは、『8K』(FHDの16倍の解像度)以上とは言われている」と指摘する。
高橋氏は「無線化」も課題に挙げる。ゲームユーザーを主なターゲットとする、オキュラスリフト、HTCバイブ、PSVRはいずれもHMDとパソコンやゲーム機本体に有線ケーブルで接続する。実際に動き回って楽しむゲームだと、ケーブルが動作の邪魔になる。しかし、いずれのVR端末もリフレッシュレートが90ヘルツ以上で、映像を伝送するデータ量は膨大だ。高橋氏は「現在の無線伝送方式では表示転送速度が不足する。更なる技術開発が必要」と無線化はまだ先になりそうだ。
小型化、軽量化も今後のテーマになる。オキュラスで日本事業を率いる池田輝和氏は、10日に東京で行われたイベント「VRサミット」で「HMDを何時間も装着するのはなかなか難しい」と指摘した。「小型化、簡素化していきたい。メガネレベルのサイズにしていきたい」と将来像を掲げる。すでにオキュラスリフトは500グラム以下だが、軽量化を追求する必要性はある。
HTCバイブを担当するレイモンド・パオVR関連副社長は「日本、米国、中国ではゲームを楽しむ環境が異なる」と分析する。住宅環境が広い米国は、例えばHTCバイブの使用環境で推奨される空間(約4・5メートル角)はある。しかし、一般的に部屋の小さい日本や、インターネットカフェでゲームを楽しむ中国では、使用時の楽しさが制限されてしまう。
(中国・北京小鳥看看のVR端末「ピコ」)
一方、日本にオフィスを構える中国の北京小鳥看看有限公司の端末「ピコ」はユニークだ。通常は「本体×HMD×コントローラー」が高機能モデルの基本だが、ピコはHMDと有線で接続するコントローラーそのものがコンピューター。気軽に持ち運べ、ゲームを楽しめる利点がある。
VR端末は解像度、応答速度、視野角といった課題を乗り越えて、この1年で一気に製品化された。ただ、VR端末を体験した一般消費者は絶対的に少ない。体験者が増えることで、新たな課題が見え、次の端末が開発されていくだろう。
(文=大塚淳史)
日刊工業新聞2016年5月25日