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「破たん」劇的ビフォーアフター!JALは変わったか(22)貨物の再生

生鮮品はドル箱!?保冷配送サービス「クールEMS」で付加価値生む
「破たん」劇的ビフォーアフター!JALは変わったか(22)貨物の再生

2010年に貨物専用機の運航から撤退した貨物事業

 日本航空(JAL)は2010年の経営破たんで貨物専用機の運航から撤退した。JALの貨物事業における供給スペースは旅客機の床下貨物室のみとなり、供給量が大幅に減少。貨物事業の14年3月期の売上高は796億円と、経営破たん前の半分程度だ。

 3月上旬の成田国際空港。香港行き735便の貨物室にベルトコンベヤーに載った青い箱が吸い込まれていく。箱の中身は、生鮮品。JALと日本郵便が連携して展開する国際スピード郵便(EMS)による小口の保冷配送サービス「クールEMS」の荷物だ。

 貨物郵便本部貨物路線部国際路線室マーケティンググループ長の遅塚周太郎は「限られたスペースを運賃の高い荷物で埋めて、いかに効率よく使うかがポイント」と、現在の貨物事業が置かれる状況を話す。クールEMSは冷凍・冷蔵の小口貨物をJALが開発した専用ボックスに入れて、台湾、シンガポール、香港、マレーシア、ベトナム、フランスの6カ国・地域に運ぶ。専用ボックスは80時間、温度を保つことができる。料金は最も近い台湾向けで、1キログラム未満でも4500円。こうした付加価値の高い荷物をいかに増やしていくかが、収入の最大化につながる。

 経営破たん後、貨物事業にも部門別採算制度が入り、業務の考え方が変わった。例えば、それまで空港の担当者は交代制だったが、路線ごとに担当者を置くやり方に変えた。遅塚は「各路線の専門知識が高まって荷物が効率よく積めて、空きスペースの情報が予約や営業にも来るようになった」と、変化を肌で感じている。

 今後は貨物事業でも、収益を最大化するレベニューマネジメントの取り組みを強化する。JALでは、世界中の支店から機動的に情報を集め、運賃の高い荷物を効率よく積めるようにする「社内入札」の仕組みを作り、運用を始めている。貨物郵便本部業務部収支管理グループの秋田谷薫は「売り上げ最大、費用最小を、日々皆が考えている」と話す。

 貨物専用機を飛ばしていた頃は、巨大なスペースを埋めることに追われ、収益など考える余裕もなく、赤字体質からなかなか抜け出せなかった。今は少ないスペースを大事に使い、皆で収入の最大化を目指す。(敬称略)
日刊工業新聞2015年04月09日 建設・エネルギー・生活面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
先日、ANAと米ユナイテッド航空が2015年中に日本と北米間の一部で貨物事業の一体運営が認められた。ANAは日欧間で独ルフトハンザ航空と昨年から一体運営を始めており、JALどのような戦略を描くのか。

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