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デンソーが初めて4000億円超え。トヨタ系部品メーカー、研究開発投資は怠らず

自動運転技術やADASの基盤強化
デンソーが初めて4000億円超え。トヨタ系部品メーカー、研究開発投資は怠らず

アイシン精機はスマートフォンで操作するリモコン駐車を開発中

 自動運転技術など先進分野の開拓を見据え、トヨタ自動車グループ大手部品メーカーの研究開発費が増加している。2017年3月期にデンソーは研究開発費が初めて4000億円を超える見込みで、アイシン精機やジェイテクトも連続して過去最高額の更新を計画する。大手自動車メーカーなどが自動運転技術やADAS(先進運転支援システム)の開発を積極化する中、将来の需要取り込みを目指して研究開発を急ぐ。

 デンソーは17年3月期に研究開発費4150億円(前期比3・9%増)を計画する。「環境や安全分野を中心に製品開発を強化する」(有馬浩二社長)ため、売上高比率で高水準の約9・2%を充てる。1月には高度運転支援や自動運転の技術開発を進めるために関連部署を統合した「ADAS推進部」も設置しており、体制基盤を整備している。


 アイシン精機は同1700億円(同4・6%増)を想定する。自動運転分野では、運転手の運転不能状態を検知して自動で路肩に退避する技術のほか、スマートフォンを使って無人で自動駐車する「リモコン駐車」などを開発中だ。1700億円のうち、自動変速機(AT)で世界最大手のアイシン・エィ・ダブリュがグループで695億円(前期比5・6%増)を占める。アドヴィックス(愛知県刈谷市)は同203億円(同5・2%増)で、自動ブレーキの研究開発などに資金を投じる。

 電動パワーステアリング(EPS)で世界首位のジェイテクトは同500億円(同8・2%増)を見込む。自動車部品事業は4月にステアリング事業と駆動事業に分離しており、それぞれの技術を洗練する。ADASの開発推進や多様な駆動システムの提案などにつなげる。

 トヨタ紡織は自動運転や移動空間に関連する先進技術の情報調査・分析を強化するため、4月に米カリフォルニア州シリコンバレーに「トヨタ紡織アメリカシリコンバレーオフィス」を新設した。石井克政社長は「自動運転が注目され、我々が何を提供すれば良いのか問題意識が急速に高まっている」と設立経緯を説明する。

 20年頃に自動車専用道路での自動運転車の実用化を目指すトヨタは、5月下旬に開かれた伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)で一般道に対応した実験車を初公開した。

 米グーグルなどIT大手も自動運転車の開発を進めるなど、業界を超えて競争が激化しており、部品メーカーも対応に迫られている。
(文=名古屋・今村博之)
日刊工業新聞2016年6月14日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
トヨタは系列サプライヤーにこれまでも求心力と遠心力をうまく使い分けてきた。各社の開発部門はプライドも高い。ただ自動運転領域などはまさに「総合力」の勝負になる。お金の問題だけでなく開発リソースを集中させる必要がり、トヨタ本体がこれまで以上にグルップを効かす時期だろう。

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