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余った熱や電気を地域で有効活用する田町のスマートタウン その目玉とは?

余った熱や電気を地域で有効活用する田町のスマートタウン その目玉とは?

東京・芝浦地区で先進的なエネルギーネットワーク構築が進む(イメージ)

 エネルギー関連企業も、エネルギーを地域で効率的に使える仕組みを提案している。東京ガスが提供する「スマートエネルギーネットワーク」では、コージェネレーション(熱電併給)システムを軸に、余った熱や電気を地域で有効利用できる仕組みなどを構築。節電・省エネや二酸化炭素(CO2)削減に貢献し、災害にも強いエネルギーインフラをつくる。すでに東京・豊洲埠頭(ふとう)地区で11月に開場する東京都中央卸売市場(豊洲市場)への電力供給を始めた。

 目玉と言える熱や電気の有効利用では、スマートグリッド(次世代電力網)の構築などで熱や電気を、余っている場所から不足している場所に融通する面的なネットワークを整備する。地域のエネルギー需給を一体的に管理でき、発電効率が高い大型コージェネシステムの導入による省エネにもつながる。

 エネルギーの需給管理には、情報通信技術(ICT)を活用。需要の推移や気象などのデータを分析して電源・熱源や需要側の空調設備、照明機器などをきめ細かく制御し、節電・省エネを支援する。

 太陽光や太陽熱などの再生可能・未利用エネルギーも有効活用する。太陽光発電などの出力が変動しても、コージェネシステムなどが影響を吸収する働きをするため、再生エネを大量導入できる。

 実際に手がけた事例では豊洲埠頭地区の都市開発で、大型のガスコージェネシステムとエネルギー需給管理システムを導入し、豊洲市場への電力供給を1日に開始。三井不動産三菱地所と共同で進めている東京・芝浦地区(JR田町駅東口北地区)の大規模複合開発などでもエネルギーネットワークの構築に取り組んでいる。

 特に芝浦地区は、隣接地区との間でエネルギーを融通する先進的な事例になる。同地区に導入するエネルギー需給管理・制御システムを、東京ガスが隣接地区に別途整備したシステムと連携させ、両街区間で熱を融通し合えるようにする。停電などの非常時には電気も融通できる。

 国内初の試みとして、2018年に運用を開始。ガスコージェネシステムや太陽光発電設備などの導入効果も加え、両地区合計のCO2排出量を、90年基準比で約45%減らす目標だ。

 東京ガスは首都圏初の取り組みとして、東京の新宿新都心で1971年に地域熱供給事業を始めて以来、数多くの地域で面的な熱供給を手がけてきた。この中で培った技術で「都市機能の高度化と環境共生を実現するスマートエネルギーネットワークを展開する」(吉岡朝之執行役員都市エネルギー事業部長)方針だ。


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       ~横浜・綱島と東京・田町の街づくりを中心に」


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日刊工業新聞2016年6月9日 建設・エネルギー・生活1面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
スマートグリッド、コージェネ、ICTを組み合わせて、街全体を省エネ化するという先進的な取り組みが進んでいます。今後は季節や需要に応じて、よりきめ細やかにエネルギーの利用を制御する時代が来るでしょう。

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