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トヨタ、新興国エンジン工場の「進化力」

稼働したインドネシア工場、需要に応じて生産量を細かく調整
トヨタ、新興国エンジン工場の「進化力」

インドネシアの新工場

 「画期的な生産技術が導入された」―。2016年3月、トヨタ自動車がインドネシアに建設した新エンジン工場の開所式で、嵯峨宏英専務役員は、こうあいさつした。新工場はエンジン生産の主要工程である鋳造、機械加工、組み付けをすべて一つの建屋内に集約した。こうした工場はトヨタ初だ。

 リーマン・ショックで大幅赤字に陥ったトヨタ。生産が「量の変動に追随できなかった」(牟田弘文専務役員)からだった。その反省を踏まえ、以前の「量を求めた工場」から「競争力のある工場」に工場づくりの発想の転換を図った。キーワードは「シンプル・スリム」「フレキシブル」。

 その成果が新興国から目に見える形で現れ始めた。新興国は急激な需要変動が起きやすいため、新発想の工場の真価が試される。インドネシアの新工場では、どのようにしてエンジン生産の主要工程を一つの建屋に収めたのか。

 鋳造で生じるヤニ・チリ・熱がほかの工程に悪影響を及ぼすため、従来は建屋を分けていた。原因は中子。中子に添加する有機物が燃焼し、ヤニや臭気が発生する。それを除去するために、大型の集塵機や脱臭機が必要だった。今回、添加物を無機物に変更、集塵機を小型化し、脱臭機を不要にした。

 また、これまで大型溶解炉で大量に溶湯をつくってから鋳造機に搬送していたが、新工場では小型溶解炉を鋳造機に直結する「手元溶解」を採用。投資を抑えるだけでなく、需要に応じて生産量を細かく調整できるようにした。

 工場の初期投資は、目標としていた08年比約40%低減を達成した。新発想のエンジン工場はインドネシアに次ぎ、ブラジルでも稼働した。トヨタの工場は着実に変容し始めている。
(文=伊藤研二)
日刊工業新聞2016年6月7日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
トヨタの昨年度のアジア販売(中国を除く)は通貨安や課税強化で前期比9.7%減。今期は4.8%増の141万台への回復を見込む。インドネシアやタイ、マレーシアでも生産設備を増強する。章男社長は業績について「円安の追い風がやみ、等身大の姿がみえる」と話すが、エンジン工場は等身大の実力の象徴の一つだろう。

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