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国産スギ木材でサーフボードを作ろう~海と森の出会いの演出~

**海に浮かぶ森
 国産木材でサーフボードをつくろうという旅路は、お遍路が海辺を横切る徳島県海陽町宍喰から始まりました。徳島からJR牟岐線を海部で阿佐海岸鉄道に乗り換え、トンネルを抜けると『海に浮かぶ森』が目に飛び込んで来ます。宍喰駅に立つと陸の道よりも海へ向かう水の道を感じます。
 海陽町のサーフショップに立ち寄ったことと、海に浮かぶ森とは緑の列島日本そのものではないかという思いが、サーフボード制作の始まりでした。



木材とシェーパー


 木材関係者なら誰でも知っていることですが、水に強い木材といえば船材として使われて来た宮崎県の飫肥(おび)スギです。スギは加工しやすく水に浸けると膨張することから古代から造船に使われて来ました。木材の選定と、サーフボードの制作職人(シェイパー)との出会いがとても重要で、その為に各地へ出向いた旅は2年続きました。木を提供する森の匠と、波に乗る微妙な丸み角度をボードに削り出す匠の出会いがうまくいかなければ、国産木材サーフボードは水泡と化すからです。

海と森の出会い


 ロングボードを削り出す為には、3,000mm×600mm×150mmの無垢材が必要だという思いが強く、実物を見て感心した中では天竜ミサクボスギが油分も多く適合していましたが、今回は三重県津市の美スギ(みすぎ)を選びました。このスギは映画『WOOD JOB』撮影中に実際に伐採された奥伊勢の銘木です。ウッジョブのモデルと言われている三浦妃己郎さん(三浦林商/NPO法人もりずむ)が2年間天然乾燥させ保管していたものです。
 一方、湘南片瀬江ノ島駅からほど近くにサーフショップとスクールを開設する公認プロサーファーの石坂健さんは、ハワイで知り合ったシェイパーの尾林誠さんとLEI SUF DESIGNSブランドでサーフボードを制作・販売しています。
 もりずむ代表の藤崎昇さんや、Andecoの早川慶朗さん、創造再生研究所の秋吉顕さん等の尽力があり、三重県津市美杉町で、林業者とプロサーファー&シェイパーとの感動的な出会いが生まれました。



サーフボード制作過程と名前


 この無垢スギは重量が100kgあります。無垢材の一枚板でなくてはならないという思いとは別に、赤黒身が多い(丸太の中心部)この材は縦に4分断されることになります。分断された縦長の材には重量を落とす為に、丸く空洞が開けられ海に浮きやすく加工されます。そして間に同じスギの化粧板を差込み、あわせてシェイプされる訳です。無垢一枚板に拘り過ぎた、と反省するもデザイン的にはその方が価値が高まるということも良く分かりました。
 茅ヶ崎の牛舎を改良したシェパールームを訪ねると、尾林誠さんはひたすら木材に向かって戦っていました。天然乾燥の木材の良さを波に活かそうとする姿勢は、彼らが山村に訪れなければ決して生まれては来なかったでしょう。



 三重県産木材と神奈川県湘南のサーフ文化の出会により産み出される新しい風を感じつつ、このサーフボードの名前は『海に浮かぶ森』を表す、FOS(Forest On the SEA)にしようと思います。
(文=小見山將昭/創造再生研究所)
        
 この国産木材サーフボードは下記にて展示されます。
「スマートコミュニティJapan2016/グリーンビルド展」
 2016年6月15日(水)~17 日(金)
 東京ビックサイト東3ホール
 http://biz.nikkan.co.jp/eve/smart/
ニュースイッチオリジナル
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
サーフボードだけでなく、最近流行しているスタンドアップパドル・サーフィン(SUP)のパドルも製作したということです。

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