ニュースイッチ

スズキは本当に“世代交代”できるのか。修会長からの自立が試される

<追記あり>次期CEO候補に俊宏社長と原山副会長が有力
スズキは本当に“世代交代”できるのか。修会長からの自立が試される

CEO職を返上する鈴木修会長

 スズキは、自動車の燃費データの不正問題の責任をとり、鈴木修会長兼最高経営責任者(CEO)がCEO職を返上する。技術担当の本田治副社長も引責辞任する。後任CEOも含め、29日の株主総会後の取締役会で決定する。責任を明確化し、事態の早期幕引きを図る。新CEOは鈴木俊宏社長か原山保人副会長が有力視される。

 CEO返上と会長継続のどちらを重視するかで、措置の受け取り方は大きく変わる。スズキの顔である鈴木会長がCEOを返上したのは、対外的に責任を明確化するため。問題発覚当初は「お客さまに迷惑をかけることはない」(鈴木会長)と燃費を改ざんしていた三菱自動車との違いを強調していた。しかし、5月の軽自動車販売は大きく落ち込み、風当たりは予想以上に強かった。

 一方、会長職にはとどまるため「社内は何も変わらない」(関係者)という冷めた見方もある。本田副社長の引責辞任も「担当役員として避けられないところ」(同)で、もともと役員の定年内規も超えていた。

 それでも鈴木会長が補佐役に徹すると明言し本田副社長が退任することで、スズキ最大の経営課題であった“世代交代”は否が応にも進む可能性がある。新体制は俊宏社長に近い50代後半が中心だ。

 「部長以上の出張は会長決済」(同)というほどのワンマン体制が続いたスズキが変わるのは容易ではない。「コンプライアンス確保のためには、業界や経営に精通した社外取締役の採用も必要」との外部の声もある。雨降って地固まるか。俊宏社長を中心とする新体制は“会長からの自立”へ、意志の強さが試される。
日刊工業新聞2016年6月10日
原直史
原直史 Hara Naofumi
私は、スズキの内部のことを知らないが、自分の経験から、このような組織がどうなるかを想像してみたい。私が見るところ、ワンマン体制の下では、社員は大きく4つのグループに分かれる。①ワンマンの信奉者②信奉はしないまでも思考停止状態に陥っている人③現状を分かっているが諦めている人④現状変革の意思を持っている人、である。私の経験では④は少ない、①もそれほどではなく、多くは②と③に分類される。改革は④が中心となって進められるのだろうが、容易ではない。①や②の人達は、ワンマンが何か指示しなければ、動けない習性になっていて、①は時として変革の邪魔をする。これを会社としてどう乗り越えるか。④を中心に③、②の社員をどう結集させるのか。これは、まさにガバナンスとマネジメントの問題であり、取締役会の力が試される場面だと思う。

編集部のおすすめ