ニュースイッチ

日本は人工知能ロボット大国になれるか!  世界で勝つ戦略へ経産省動く

産総研に100人規模のコミュニテー。14年ぶりの本格予算で五輪までに10種を開発へ
 経済産業省は人工知能(AI)の研究開発を加速させる。産業技術総合研究所に研究拠点を設け、100人規模のAI研究者の開発コミュニティーをつくる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のロボット研究予算をAI開発に割り当てる。2001年度で終了したリアルワールドコンピューティングプロジェクト(RWCP)以来、14年ぶりのまとまった予算となる。20年の東京オリンピックまでに10種のロボット開発を目指す。
 
 AIはロボットがサービス市場に進出するための必須技術。人間とロボットの対話や意味の理解、感情推定などに使われる。あらゆるモノがインターネットでつながる「IoT」時代には家電や情報機器にAIが搭載されて持ち主に合わせたサービスを提案するようになる。そこで産総研にAIの研究環境を整え、NEDOの15年度「次世代ロボット中核技術開発」事業の予算10億円の8割をAI開発に投じる。

 現在、AI研究は自然言語処理や画像処理、機械学習、予測最適化など広範な技術が必要にもかかわらず、分野が細分化し、人材も大学や企業研究所などに分散していた。産総研にAIの研究センターを設け、将来は100人規模の研究者を集める。

 NEDOの事業としてビッグデータ(大量データ)や知識を統合的に解析するデータ・知識融合型AIと、人間の脳のように思考する脳型AIを開発する。5月に開発プロジェクトの公募を開始、産総研は応札する予定だ。NEDOが課題や実証環境を用意し、各AIが課題に挑戦する競技会を開催する。約2年で開発状況を審査し、実現の難しいプロジェクトは中止し新規提案を募る。アワードやワークショップを通して研究者間の連携や情報共有を図る。
 NEDOの開発事業では臭覚センサーや人工筋肉などの要素技術も開発する。AI開発と連携させ、情報処理や制御などの相乗効果を狙う。

 日本のAI開発は92―01年度に実施されたRWCP以来、14年ぶりのまとまった予算になる。国立情報学研究所の「ロボットは東大にはいれるか」プロジェクトなど、各研究者や組織で研究を企画して続けられてきた。米グーグルのAI開発への大型投資やディープラーニング(深層学習)の技術的なブレークスルーなどで注目を集めたが、AI研究者からは「日本はブームで終わり、また冬の時代が来るのでは」と不安が募っていた。
日刊工業新聞2015年05月04日 1面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
アカデミックの分野では東大の松尾先生をはじめAIの研究が盛り上がってきて、産業界でもドワンゴが人工知能研究所を設置するなどベンチャーを含め新たしい企業の取り組みが活発化している。政府が後押しするプラットフォームは必要不可欠で、あとは産業用ロボットメーカーや自動車メーカーなど大手企業から若手人材の参画も期待したい。

編集部のおすすめ