“中小企業”から独立!「小規模企業白書」の初刊行を後押しした存在とは?
フリーランスの実態が明らかに。「やりがい」の半面、社会的評価や収入に不満も
政府が社会経済の実情や施策を広く国民に周知させる狙いで刊行する公式文書である「白書」-。お堅いイメージの公式文書ですが、2015年度から初刊行となった「小規模企業白書」には、働き方や雇用をめぐる実情や課題が浮き彫りになっており、一読の価値があります。
「小規模企業白書」が分析の対象とするのは、製造業では従業員20人以下、非製造業は5人以下と定義される事業者で、日本に385万ある中小企業の9割を占めます。こうした規模の小さな事業者は、これまで「中小企業」とひとくくりにされてきましたが、今回の白書では、小規模事業者が営んでいる事業やどんな人材に支えられているのか、さらには地域社会ではどのような存在であるのか多角的な分析が試みられています。
経営者の7割弱が本社所在地の出身地で、従業員の7割弱が親族というのは、何となくイメージ通り。一方で経営者の6割以上の手取り年収が300万円未満という結果には驚きを隠せません。このように収益基盤が脆弱では事業所数の減少もやむを得ないのかもしれません。
こうした厳しい現状が明らかになる一方で、今回の分析で異彩を放つのは、小規模事業者は、自らの経験や技能を生かし、組織に縛られず活躍できる「新しい働き方」としてやりがいを感じている姿です。
特に「フリーランス」に関する公的な調査は過去になく、初の実態調査とか。中小企業で経験を積んで独立した40歳から50歳代がフリーランスの中心で、彼らは「自由度」や「やりがい」に満足する一方で、「社会的評価」と「収入」面での不満が強いことも浮き彫りになっています。
もうひとつ、見逃せないのは小規模事業者が、地域コミュニティーと積極的に関わり、地域住民の側からも地域のリーダー的存在と評価されている点です。地域のイベントや祭りといった事業以外の活動でも地域に積極貢献している姿が垣間見えます。
日本経済がこれからも成長を遂げるには、多様な働き方を志向する個人の力を引き出すとともに、地域に密着する事業者が、より一層活躍しやすい環境を整えることが重要になるのではないでしょうか。
(ニュースイッチオリジナル)
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約1年前のインタビューですが、クラウドソーシング大手のランサーズの秋好陽介社長が、フリーランスの「新しい働き方」の可能性や課題について語っています。
―クラウドソーシング(不特定多数者への業務委託)の国内市場規模は2013年で300億円弱です。成長のペースをどうみていますか。
「2年前の想定では5倍に拡大すると思っていたが、3倍程度にとどまっている。ボトルネックは啓発。まだ発注する企業側がどのように活用すればいいか分からないケースも多い。仕事を受託するフリーランスの人もデザイナーやプログラマーなどITが中心。IT系人材のニーズはまだまだ増えるが、経理や法務などにも広げたい」
―ITスキルが不足している中小企業の活用は分かります。大手企業はどのような課題解決を求めているのでしょう。
「現状はコストを下げるというよりも社内の刺激を期待している。昨年秋にパナソニックがデジタルカメラのデザインを公募して、1300件もの応募があった。60件が採用され年末には商品化されたが、リアル(これまでの実際の現場)ではありえないことだ」
―建設や飲食業の現場では人手が不足しています。クラウドソーシングはITの職種以外ではなじみにくいのでは。
「ITでやりやすいのは確かだが、まだ工夫できることはある。一人では受託できない案件でもチームを組むことで事業領域が広がる。今年からランサーズでもチーム受託の仕組みを立ち上げ、ウェブ制作などで5―6人の共同作業の実績が出てきた。将来、まったく知らない日本、中国、アフリカの人がチームで働くこともありえる」
―一般の会社の場合、社内の行動指針の下で仕事が評価されます。オンラインのプラットフォーム(通信回線を利用した基盤)で完全に代替できますか。
「(働き手の)登録者が30万人を超え、マッチングの精度などクオリティー担保をこれまで以上にしっかりやっていく。確かにすべてオンラインで解決することは難しい。(人材派遣の)インテリジェンスとの提携は、リアルの部分を補完することにつながる」
―政府・与党は子育て主婦やシニアなど潜在労働力の顕在化に力を入れ始めています。
「今、女性の登録者が増えて5割ぐらい。年収が1000万円を超える人も出てきたが、去年のトップ3のうち2人が50代。クラウドソーシングの良さは働く場所にとらわれないこと。登録者の7割は地方で、今後は海外展開など電子商取引(EC)以上に可能性があると思う。正社員、派遣、クラウドソーシングという選択肢まで認知されるには、フリーランスの人たちが安心して働けるプラットフォームを提供する必要がある。法制度の壁があって保険や年金などの手当はできないが、確定申告の仕方など情報共有や福利厚生を充実させている」
「小規模企業白書」が分析の対象とするのは、製造業では従業員20人以下、非製造業は5人以下と定義される事業者で、日本に385万ある中小企業の9割を占めます。こうした規模の小さな事業者は、これまで「中小企業」とひとくくりにされてきましたが、今回の白書では、小規模事業者が営んでいる事業やどんな人材に支えられているのか、さらには地域社会ではどのような存在であるのか多角的な分析が試みられています。
経営者の7割弱が本社所在地の出身地で、従業員の7割弱が親族というのは、何となくイメージ通り。一方で経営者の6割以上の手取り年収が300万円未満という結果には驚きを隠せません。このように収益基盤が脆弱では事業所数の減少もやむを得ないのかもしれません。
こうした厳しい現状が明らかになる一方で、今回の分析で異彩を放つのは、小規模事業者は、自らの経験や技能を生かし、組織に縛られず活躍できる「新しい働き方」としてやりがいを感じている姿です。
特に「フリーランス」に関する公的な調査は過去になく、初の実態調査とか。中小企業で経験を積んで独立した40歳から50歳代がフリーランスの中心で、彼らは「自由度」や「やりがい」に満足する一方で、「社会的評価」と「収入」面での不満が強いことも浮き彫りになっています。
もうひとつ、見逃せないのは小規模事業者が、地域コミュニティーと積極的に関わり、地域住民の側からも地域のリーダー的存在と評価されている点です。地域のイベントや祭りといった事業以外の活動でも地域に積極貢献している姿が垣間見えます。
日本経済がこれからも成長を遂げるには、多様な働き方を志向する個人の力を引き出すとともに、地域に密着する事業者が、より一層活躍しやすい環境を整えることが重要になるのではないでしょうか。
(ニュースイッチオリジナル)
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約1年前のインタビューですが、クラウドソーシング大手のランサーズの秋好陽介社長が、フリーランスの「新しい働き方」の可能性や課題について語っています。
―クラウドソーシング(不特定多数者への業務委託)の国内市場規模は2013年で300億円弱です。成長のペースをどうみていますか。
「2年前の想定では5倍に拡大すると思っていたが、3倍程度にとどまっている。ボトルネックは啓発。まだ発注する企業側がどのように活用すればいいか分からないケースも多い。仕事を受託するフリーランスの人もデザイナーやプログラマーなどITが中心。IT系人材のニーズはまだまだ増えるが、経理や法務などにも広げたい」
―ITスキルが不足している中小企業の活用は分かります。大手企業はどのような課題解決を求めているのでしょう。
「現状はコストを下げるというよりも社内の刺激を期待している。昨年秋にパナソニックがデジタルカメラのデザインを公募して、1300件もの応募があった。60件が採用され年末には商品化されたが、リアル(これまでの実際の現場)ではありえないことだ」
―建設や飲食業の現場では人手が不足しています。クラウドソーシングはITの職種以外ではなじみにくいのでは。
「ITでやりやすいのは確かだが、まだ工夫できることはある。一人では受託できない案件でもチームを組むことで事業領域が広がる。今年からランサーズでもチーム受託の仕組みを立ち上げ、ウェブ制作などで5―6人の共同作業の実績が出てきた。将来、まったく知らない日本、中国、アフリカの人がチームで働くこともありえる」
―一般の会社の場合、社内の行動指針の下で仕事が評価されます。オンラインのプラットフォーム(通信回線を利用した基盤)で完全に代替できますか。
「(働き手の)登録者が30万人を超え、マッチングの精度などクオリティー担保をこれまで以上にしっかりやっていく。確かにすべてオンラインで解決することは難しい。(人材派遣の)インテリジェンスとの提携は、リアルの部分を補完することにつながる」
―政府・与党は子育て主婦やシニアなど潜在労働力の顕在化に力を入れ始めています。
「今、女性の登録者が増えて5割ぐらい。年収が1000万円を超える人も出てきたが、去年のトップ3のうち2人が50代。クラウドソーシングの良さは働く場所にとらわれないこと。登録者の7割は地方で、今後は海外展開など電子商取引(EC)以上に可能性があると思う。正社員、派遣、クラウドソーシングという選択肢まで認知されるには、フリーランスの人たちが安心して働けるプラットフォームを提供する必要がある。法制度の壁があって保険や年金などの手当はできないが、確定申告の仕方など情報共有や福利厚生を充実させている」
日刊工業新聞2014年06月03日 ひと&会社面