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旭化成、VB投資にヘルスケア枠数十億円設定

先端技術、事業取り込み
 旭化成はヘルスケア分野のベンチャー(VB)投資を加速する。社内ベンチャー・キャピタル(CVC)に、ヘルスケア向けの投資枠を新たに数十億円設定。従来は主力の化学やエレクトロニクス分野が投資対象の中心だった。2016―18年度の新中期経営計画でヘルスケア部門を素材、住宅に次ぐ第3の柱に育てるため、M&A(合併・買収)を含む社外リソースの積極活用を目指す。

 旭化成は米国シリコンバレーにCVCを構え、北米を中心に初期開発段階にある技術や事業の取り込みを目的にベンチャー投資活動を展開している。08年の拠点開設以降は複数の投資実績があるものの、事業化できたのは11年末に買収した紫外発光ダイオード(UV―LED)ベンチャーの米クリスタルIS(ニューヨーク州)のみという。

 成長領域と位置づけるヘルスケア分野のベンチャー投資を強化するため、専用の投資枠を新設した。「あくまでアーリーステージ(起業直後の企業)が対象。唾を付けて、良ければもっと投資して、最終的に買収する」(旭化成幹部)のが基本的な流れだ。

 18年度のヘルスケア部門は売上高が15年度比29・6%増の3700億円、営業利益が同38・1%増の500億円と大幅に拡大させる計画。25年度の長期目標では売上高6000億円、営業利益800億円を目指す。

 旭化成は00年以降、新規事業がなかなか育っておらず、新事業の創出が重要な経営課題。社外から先端技術やビジネスモデルを獲得して、新たな成長を実現したい考えだ。
日刊工業新聞2016年6月3日 素材・ヘルスケア・環境面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
旭化成をはじめ日本企業がシリコンバレーに人を置くのは大いに結構だが、とにかく投資権限のある人を派遣することと、積極的に現地のインナーサークルに入ること。日本企業はそれがほとんどできてない。 ヘルスケア分野の投資でいえば、先日ニュースイッチで公開した米フェノックスのアニス・ウッザマンCEOのインタビューも参考になる。 「大きくなっているのが、ヘルスIT。スキャナドゥ(Scanadu)は自分で病気を診断できるサービスを提供し、米食品医薬品局(FDA)の承認を取得している。また、センスリーという会社が開発したスマートフォンアプリには『モリー』というバーチャル看護師が入っていて、血圧測定装置と連動して自動的に血圧を測り、病院の医師にデータを送信してくれる。日本の会社と提携しようとしていて、近い将来、日本でも使えるようになるだろう」        

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