IoT、ロボティクス分野に注目、「メーカーとのCVCもしてみたい」
グローバル・ブレイン 百合本社長インタビュー(後編)
ベンチャーをめぐる投資状況は2015年秋より失速しつつある。優良案件に投資が集中する“選別傾向”が強まっている。独立系ベンチャーキャピタル(VC)「グローバル・ブレイン」は他社に先駆けて選別投資を開始し、ベンチャー企業と二人三脚で成長をサポートしてきた経験を踏まえ、この状況を「チャンス」ととらえている。今後成長が期待される分野や、東南アジア、北米、インド、イスラエルなど世海外での展開について、百合本安彦社長に聞いた。
(前編はこちら)
―注目している分野について、もう少し詳しく伺いたいのですが。先ほどIoTというキーワードも出ていましたね。
実はIoTといっても、単体のデバイス系はもう少し減速しはじめていて。どちらかというと、IoTで獲得したビッグデータをAIで分析し新しいサービスを作り出すといったようなビジネスに注目しています。そのほか、セキュリティー、ヘルスケア、ロボティクス、AIなどに力を入れています。弊社は技術系のキャピタリストが多く、事業内容をよく精査して投資しています。こういったベンチャーは経営者が技術者であることが多く、共通言語で話ができるのは強みです。
―ロボティクス分野では、昨年ライフロボティクスに出資をされました。
産業用ロボットメーカーで、人と協働できるロボットが特徴です。トヨタやオムロン、吉野家、ロイヤルホストなどに導入されています。
そのほかテクノロジー系では人工衛星のアクセルスぺース、3Dプリンターのシェアリングエコノミー「カブク」にも投資しました。アメリカの会社にも数社投資しています。
ステルスでも今年中に大きなものをいくつか検討中です。米国、日本、韓国で考えています。
―日本のベンチャーを海外で紹介する活動もされていますが、その際の課題は。
単身で米国に行って現地で人を雇う、といったベンチャーも出てきていますが、結構難しい。それをどうサポートできるかが重要かなと思います。また、米国に行っても現地のVCからの資金調達が難しいので、支援が必要。海外でいろいろなネットワークを持って、ベンチャーを押し出していく必要があります。
東南アジアにも4年前に進出し、政府、大学、財閥などとネットワークを地道に作っていきました。
―東南アジアでも世界に出るベンチャーが育ってきているのでしょうか。
東南アジア内で、国をまたいでビジネスをできている企業が少しずつ増えています。逆に日本の企業が、日本で流行ったものを東南アジアで展開するというのは大いに可能性があると思います。メタップスやテラモーターズなんかもそうですね。
―日本政府もそういった支援活動を行っていますが、効果をどう見られますか。
目に見える効果としては難しいと思いますが、ゴールは一緒なので。一方で、緊張環境は保っておく必要がありますので、甘やかしすぎは良くない。現地でのプロモーションや人脈作りに資金が使えるのはいいですよね。
<毎月、投資先のベンチャーと大企業をつなぐ「ナイトピッチ」を開催している>
―長年の経験から、成功だけではなく、失敗事例もお持ちだと思います。
難しいのは経営者のメンタル面の適切な支援。経営者との距離感も重要で、人によって最適なパーソナルスペースのようなものが違います。踏込みすぎて関係がおかしくなることもありますし。また個別の案件に入りすぎず、一歩引いて市場をマクロで見ること、大局的に見ることが必要です。ベンチャー支援ではつい熱くなりがちですし、私はもともと熱い人間なんですが(笑)
一方で、リスクを取って新規開拓をしていくことも重要です。東南アジアに進出した時、社員には反対されましたが、結果的に早期に入れたことが成功につながっています。またキャピタリストとして経験のないメーカー出身者などを採用し、教育するということは他社ではなかなかしないでしょう。
―優秀な技術者であっても、優秀なキャピタリストになれるとは限りませんよね。どのような人が向いているのでしょうか。
やはり新たな分野のことを学ぶ必要があるので、オープンマインドであることは欠かせませんよね。そして新たなことを始めたいという強い意志を持った人。
でも実は大企業には少ないんです。だから、大企業がベンチャーと組んで新たなビジネスをやるということもなかなか難しいのでは。
―起業家については、どのような点に着目していますか。
シリコンバレーではファウンダー以外に経営メンバーを入れていきますが、日本ではファウンダーが経営者になってそのまま成長していく例がほとんどです。その分経営者の裁量が大きい。企業にかける想いが非常に強い人、世の中に自分たちの作ったものを広めたい人かどうかを見ています。
―今後の展開は。
グローバルVCとして、ヨーロッパも含めたベンチャー起業の海外進出支援体制をきちっと作っていきたいです。もちろん、引き続きそれぞれの分野の優秀なベンチャー企業を発掘していきます。人材の育成、ハンズオンも徹底的にやっていきたいですね。
また、KDDIやコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)も扱っているのですが、モノづくり企業と組んでCVCをやってみたいですね。注目しているのが、要素部品メーカー。伸びる可能性のあるベンチャーの製品に早い段階からこうしたメーカーの優れた部品を入れていきたいと考えているので、つながりを深めています。
【略歴】ゆりもと やすひこ
京大法卒、富士銀行(現みずほ銀行)入行。
シティバンク・エヌ・エイ企画担当バイスプレジデント、アイ・ピー・ビー設立を経て、98年グローバル・ブレイン設立、現同社代表取締役社長。
経産省新事業創出支援関係者会議委員。愛媛出身。
http://globalbrains.com/>
(前編はこちら)
ロボティクス、セキュリティーなど注目
―注目している分野について、もう少し詳しく伺いたいのですが。先ほどIoTというキーワードも出ていましたね。
実はIoTといっても、単体のデバイス系はもう少し減速しはじめていて。どちらかというと、IoTで獲得したビッグデータをAIで分析し新しいサービスを作り出すといったようなビジネスに注目しています。そのほか、セキュリティー、ヘルスケア、ロボティクス、AIなどに力を入れています。弊社は技術系のキャピタリストが多く、事業内容をよく精査して投資しています。こういったベンチャーは経営者が技術者であることが多く、共通言語で話ができるのは強みです。
―ロボティクス分野では、昨年ライフロボティクスに出資をされました。
産業用ロボットメーカーで、人と協働できるロボットが特徴です。トヨタやオムロン、吉野家、ロイヤルホストなどに導入されています。
そのほかテクノロジー系では人工衛星のアクセルスぺース、3Dプリンターのシェアリングエコノミー「カブク」にも投資しました。アメリカの会社にも数社投資しています。
ステルスでも今年中に大きなものをいくつか検討中です。米国、日本、韓国で考えています。
―日本のベンチャーを海外で紹介する活動もされていますが、その際の課題は。
単身で米国に行って現地で人を雇う、といったベンチャーも出てきていますが、結構難しい。それをどうサポートできるかが重要かなと思います。また、米国に行っても現地のVCからの資金調達が難しいので、支援が必要。海外でいろいろなネットワークを持って、ベンチャーを押し出していく必要があります。
東南アジアにも4年前に進出し、政府、大学、財閥などとネットワークを地道に作っていきました。
―東南アジアでも世界に出るベンチャーが育ってきているのでしょうか。
東南アジア内で、国をまたいでビジネスをできている企業が少しずつ増えています。逆に日本の企業が、日本で流行ったものを東南アジアで展開するというのは大いに可能性があると思います。メタップスやテラモーターズなんかもそうですね。
―日本政府もそういった支援活動を行っていますが、効果をどう見られますか。
目に見える効果としては難しいと思いますが、ゴールは一緒なので。一方で、緊張環境は保っておく必要がありますので、甘やかしすぎは良くない。現地でのプロモーションや人脈作りに資金が使えるのはいいですよね。
<毎月、投資先のベンチャーと大企業をつなぐ「ナイトピッチ」を開催している>
メーカーとのCVCも
―長年の経験から、成功だけではなく、失敗事例もお持ちだと思います。
難しいのは経営者のメンタル面の適切な支援。経営者との距離感も重要で、人によって最適なパーソナルスペースのようなものが違います。踏込みすぎて関係がおかしくなることもありますし。また個別の案件に入りすぎず、一歩引いて市場をマクロで見ること、大局的に見ることが必要です。ベンチャー支援ではつい熱くなりがちですし、私はもともと熱い人間なんですが(笑)
一方で、リスクを取って新規開拓をしていくことも重要です。東南アジアに進出した時、社員には反対されましたが、結果的に早期に入れたことが成功につながっています。またキャピタリストとして経験のないメーカー出身者などを採用し、教育するということは他社ではなかなかしないでしょう。
―優秀な技術者であっても、優秀なキャピタリストになれるとは限りませんよね。どのような人が向いているのでしょうか。
やはり新たな分野のことを学ぶ必要があるので、オープンマインドであることは欠かせませんよね。そして新たなことを始めたいという強い意志を持った人。
でも実は大企業には少ないんです。だから、大企業がベンチャーと組んで新たなビジネスをやるということもなかなか難しいのでは。
―起業家については、どのような点に着目していますか。
シリコンバレーではファウンダー以外に経営メンバーを入れていきますが、日本ではファウンダーが経営者になってそのまま成長していく例がほとんどです。その分経営者の裁量が大きい。企業にかける想いが非常に強い人、世の中に自分たちの作ったものを広めたい人かどうかを見ています。
―今後の展開は。
グローバルVCとして、ヨーロッパも含めたベンチャー起業の海外進出支援体制をきちっと作っていきたいです。もちろん、引き続きそれぞれの分野の優秀なベンチャー企業を発掘していきます。人材の育成、ハンズオンも徹底的にやっていきたいですね。
また、KDDIやコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)も扱っているのですが、モノづくり企業と組んでCVCをやってみたいですね。注目しているのが、要素部品メーカー。伸びる可能性のあるベンチャーの製品に早い段階からこうしたメーカーの優れた部品を入れていきたいと考えているので、つながりを深めています。
京大法卒、富士銀行(現みずほ銀行)入行。
シティバンク・エヌ・エイ企画担当バイスプレジデント、アイ・ピー・ビー設立を経て、98年グローバル・ブレイン設立、現同社代表取締役社長。
経産省新事業創出支援関係者会議委員。愛媛出身。
http://globalbrains.com/>
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