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JFEエンジ、機械式立体駐輪場のシェア拡大の理由。面白い動きに注目!

放置自転車の特効薬に
JFEエンジ、機械式立体駐輪場のシェア拡大の理由。面白い動きに注目!

機械式立体駐輪場「サイクルツリー」

 JFEエンジニアリング(東京都千代田区)が、機械式立体駐輪場で攻勢に出ている。1999年に開発したもので、受注実績はこのほど20カ所を突破。総収容台数は約2万台分になる。限りあるスペースを有効活用した立体駐輪場は、社会問題化する放置自転車の特効薬になりうる。物流や産業機械といった自社の経営資源を結集させ、ゼロから開発した同製品。国内トップシェアに甘んじることなく、一層のシェア拡大を目指す。

 機械式立体駐輪場「サイクルツリー」は、自転車を上下に移動させて出入庫する円筒型(地上・地下に対応)と、平行移動する水平型(同)をそろえる。直近では大森水神公園(東京都品川区)で、地下円筒型を受注した。受注額は数億円で、17年に完工するとみられる。

 駐輪システムは、入出庫ゲート前にある溝に自転車を置きボタンを押すと、自転車につけられたICタグに反応した装置が自転車の前輪を挟む。サーボモーターで高い位置決め精度を持つ装置が、任意の駐輪場所まで自転車を搬送する。

 時を戻し1988年―。JFEエンジでクレーンやトンネル用シールド掘進機、物流機器などを担う部門では「自社技術を社会に生かせないか」(金内常和産業機械本部コミュニティビークル事業部技術部長)と、新規事業の創出が盛んに議論されていた。

方程式の解を求めるような作業


 そこで目を付けたのが放置自転車の問題。当時、駅前は自転車にあふれ、各自治体が頭を悩ませていた。シーズとニーズは、がっちりと組み合い、JFEエンジは自転車を立体的に保管する設備の開発に着手した。

 ゼロベースの開発は困難を極めた。自転車を駐輪場所に搬送するには、パレットに載せるのが一番安定する。ただ、パレットで自転車を固定すると搬送に時間がかかる。自転車の出庫を待つ時間を短縮するため、パレットレスを選択した。

 自転車を鉄製の溝(バー)にセットし、自転車を直接つかんで固定する方法を模索。ただ、「自転車のどこをつかめば搬送中に倒れないか」(金内部長)など、課題は山積していた。「機械の信頼性や収容力など、多様な要素を満たすのは、方程式の解を求めるような作業だった」と当時を振り返る。

 出した答えは、タイヤを固定する車軸を挟み込む方法。試行錯誤の末、つかむ力の最適値を割り出した。自転車を載せるバーも雨どいのようなU字型から、V字型にすることで倒れにくくした。「約2万回のテストを繰り返し」(金内部長)開発を完了。初号機は00年にJR巣鴨駅(東京都豊島区)前に納入した。

 健康志向や環境意識の高まりなどで、自転車の保有台数は今後も伸びるとみられる。観光立国を掲げる日本にとって、駅前の景観保護は頭の痛い問題。立体駐輪場の潜在需要は、まだまだありそうだ。
日刊工業新聞2016年5月30日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
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