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ルノー・日産+三菱自、どうなる生産「重複地帯」

タイ、インドネシア、そして日本が焦点
ルノー・日産+三菱自、どうなる生産「重複地帯」

ゴーン社長と益子会長

 日産自動車幹部によれば「わかりやすいシナジーは生産」。三菱自動車の不正問題は日産が三菱自を傘下に収める再編劇に発展。25日両社は正式に資本業務提携を結び具体的なシナジーを探る協議に入った。その柱の一つが工場の相互利用だ。

ロシアを除く欧米は補完関係が築きやすい!?


 生産拠点の地理的な補完としてまず挙げられるのが欧州と北米だ。三菱自が選択と集中の一環で欧州と米国の生産から撤退した一方、日産はメキシコを含め欧米で生産能力を拡大。足元では販売の好調で日産の欧米の工場は高稼働だが、余力が生まれれば三菱自がOEM(相手先ブランド)供給を受けるなどして日産の工場活用が考えられる。

 逆に足元で余力があるのはルノー・日産が共同運営するインド、ブラジル、ロシアだ。インド工場はルノーの小型スポーツ多目的車(SUV)がヒットしているが、日産が新興国ブランドとして展開し始めた「ダットサン」が不発。

 インド工場が担ってきた欧州向け小型車の生産が、16年からルノーの仏工場に移管されることもあり、長期的な低稼働に陥る恐れがある。ブラジル、ロシアは政情不安で市場が急速に縮小し、ルノー・日産の工場も余力を輸出に振り向けざるを得ない。

 いずれも三菱自は自前の工場を持たずシナジーの余地がある。ただ三菱自も現地で提携先と生産をしている。特にロシアでは仏PSAと合弁生産をしており、日産と三菱自の提携が三菱自とPSAの関係にどう影響するかが焦点となりそうだ。

国内市場が縮小の中、生産能力200万台


 一方両社が一大拠点と位置づけるタイ、インドネシア、日本は重複地帯。インドネシアは日産が14年に新工場を建設し、三菱自は不正問題発覚以降も17年の操業に向けて新工場の建設を進めている。三菱自の海外最大拠点タイでは、日産が新型ピックアップトラックの生産拠点として新工場を建てたばかり。そのピックアップトラックも苦戦しており新工場は余力を抱える。

 両社がモノづくりの基点と位置づける日本では年200万台弱もの能力を持つことになる。国内市場が先細りする中、国内シェア中下位組がこれほどの能力を維持するには輸出に頼る必要があり為替リスクの耐性強化が一層求められるだろう。それができなければ統廃合を迫られる。

 かつて経営危機下の日産に送り込まれたカルロス・ゴーン社長は村山工場(東京都武蔵村山市)の閉鎖など大なたを振るった。「当時日産が巨額の負債を抱えていたのと違って三菱自は今多くの現金を持っている。比較はできない。具体的な計画はこれから」とまだ明言を避けている。
日刊工業新聞2016年5月30日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
意外と重複が少ないといわれている。ただ重複以前に「シナジー」はどんな経営統合や企業連携でも出にくいもの。どちらかと言えば、「マイナスを減らす」ことの方が重要だろう。例えば日産・ルノーはプラットフォームの共通化により、確かにコストは削減はできたかもしれないが、同じように三菱自が強いアジア向け車種も強引に標準化を進めると、その良さがなくなるリスクも多いにある。

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