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どうなるスズキ。会長を信じるも、もし新たな不正が発覚したら・・

「軽」の規格や税制まで議論が飛び火したら三菱自の比ではない
どうなるスズキ。会長を信じるも、もし新たな不正が発覚したら・・

謝罪するスズキの鈴木修会長(左)、鈴木俊宏社長(18日)

**あんな風に頭を下げる姿を見た記憶はない
 「会長があんな風に頭を下げる姿を見た記憶はない」。スズキの鈴木修会長と親しい部品メーカー首脳は、ショックを隠せない様子だ。三菱自動車の燃費不正問題は、軽自動車の雄、スズキにも飛び火した。

 「燃費表示とカタログ表示はほとんど異なっておらず、お客さまに迷惑をかけることはない」(鈴木会長)と、スズキは”三菱自との違い“を強調する。燃費を改ざんした三菱自に対し、スズキは測定方法、いわばプロセスの問題。この違いが消費者の理解を得られるか。静岡県内の販売店は「今のところ関連の問い合わせはない。燃費改ざんがないことを丁寧に説明していくしかない」と話す。

 協力部品メーカーも「生産は続けるという鈴木会長の言葉を信じる」と決意の表情をみせる。スズキが国交省に測定方法の不正を報告した18日。浜松市内のホテルでは、スズキと関係の深い部品メーカーで構成される「スズキ協力協同組合」の総会が開かれていた。

 今年は組合設立60周年の節目の年。しかし、東京で記者会見に出席していた鈴木会長は閉会時間を過ぎても現れず、会場には重苦しい空気が漂った。それでも「会長の顔を一目見てから帰ろう」と多くのサプライヤーが会場に残った。21時前に到着した鈴木会長は「生産は続ける。大事にはいたらない」と話し、会員企業は安堵(あんど)したという。

節約が裏目に。新事実なければ影響は限定的


 そもそもなぜ今回の事態が起きたのか。スズキとの取引が長い関係者は「スズキは良くも悪くも田舎の会社。燃費を改ざんするような体質ではないが、コストをかけず同じ効果が出るならその方がいいとする企業文化はある」と分析する。鈴木会長は「善意と無知でやったのなら(処罰は)人情的に考えないといけない」と担当者を擁護した。小さい車づくりで染みついた企業風土。スズキの強みである、爪に火をともすような節約の知恵が今回は裏目に出た。

 とはいえ、「ルール違反はルール違反」(鈴木会長)。今後、相良工場(静岡県牧之原市)のテストコースに約2億円をかけ、防風壁の設置など対策を施すことを決めた。さらに「恒久的にどうするかはこれから考える」(鈴木会長)とする。

 一方、スズキから軽自動車のOEM(相手先ブランド生産)供給を受けるマツダ日産自動車、三菱自は31日のスズキの再報告の内容を注視する。アナリストは「新事実が出なければ影響は限定的にとどまる」と見る。

 ただ、ダイハツ工業と並び軽2強の一角を占めるスズキの不正発覚は今後、軽自動車の規格や税制の論議に発展する可能性もある。軽自動車市場への影響は三菱自の比ではない。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
仮にこの問題が沈静化し、販売や生産への影響が限定的だったとしても、スズキを取り巻く心理的なダメージは相当に深いだろう。約40年トップに君臨してきたカリスマ経営者、鈴木修会長もすでに86歳。「謝罪の姿」は次世代へ本当に引き継がなければ、という風に多くに人が捉えただろう。三菱自は日産という支援者を得た。噂されるトヨタとの提携話がいつ進み出すか。

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