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燃費不正の背景は類似。開発競争、現場に負担重く

スズキ会長、三菱自と一線を画すも、法令順守の落ち度は同じ
 三菱自動車の燃費不正問題に続き、スズキも規定と異なる方法で燃費データを測定していたことが明らかになった。スズキの鈴木修会長は「燃費に差が出ないからお客さまに迷惑にはならない」と、三菱自の燃費改ざんとは一線を画す。しかし業界の競争が激しさを増す中で、開発現場の負担が重くなっていったという背景に大差はない。

 「正しい方法で測定したら燃費の差はなかった。お客さまに対してご迷惑をおかけすることはない」(鈴木修スズキ会長)、「燃費を不正につり上げようという意図はなかった。的確なデータが取りたかった」(本田治スズキ副社長)。スズキは18日の会見で燃費の改ざんを否定した。三菱自の燃費不正との違いを強調した格好だ。

 三菱自に端を発した一連の不正問題は二つに大別される。燃費を改ざんしたことと、国の規定と異なる方法で燃費試験データを算出したこと。三菱自は両方の不正に手を染めていたことを認めており、スズキは後者のみに該当する。

 だがこの不正な測定方法を巡って、18日に両社がそれぞれ開いた会見では似たような発言が相次いだ。スズキは2010年から正規の測定方法を使わなくなった背景として、テストコースが海の近くにあって風の影響を受けてデータがばらつきやすく、「限られた時間の中でデータをそろえることが難しかった」(鈴木俊宏社長)と説明した。

 三菱自は25年前に始めた正規ではない「高速惰行法」を使い始めた経緯について、「当時は新車を出した時でたくさんの種類のデータを短期間で取るのが不可能とみて、正規の方法より時間がかからない高速惰行法を使ったのでは」(中尾龍吾三菱自副社長)としている。

 いずれも開発現場に負担がかかっていたとの認識だ。そしてその行為が常態化していた。

開発に制約も再発防止の徹底不可欠


 今の両社に共通するのは競合先との開発競争が激しさを増す中で、業界の中堅クラスに位置することだ。トヨタ自動車など大手と異なり開発資源が限られる中で、経営層から高い目標や効率性を求められる。

 負担が大きくなったからといって不正に手を染めるのはモラル低下のそしりを免れないが、一連の問題からは開発現場が困窮を極めていった様子が垣間見える。

 鈴木会長は不正行為は知らなかったとした上で、「関係者が善意か無知でやったのかもしれない。燃費を良くしようとしてやったら問題だが処分は人情的に考えないといけない」と話し、三菱自の不正とは一線を画した。だが、法令順守に落ち度があったことに変わりはない。スズキも三菱自と同様に徹底した再発防止が求められる。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
自動車産業の歴史は燃費競争の歴史である。時代、時代で開発競争はあって「今だから」というのは必ずしも主要因とは思わない。一つ、ここ10年くらいの傾向といえば国内販売の長期低迷がある。国内販売の主力になっていた「軽」が不正の中心にいるのもそのためだろう。19日には日本自動車工業会の定例総会があり、各メーカーの首脳も顔を出した。トヨタの豊田章男社長は「業界全体の信頼回復が大きなミッション。こういう時にこそ自工会が中心となり一日も早い信頼回復をやっていきたい」と話していたが、業界団体が果たせる役割も多いはずだ。

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